お仕事見学 「スペースコロニーができるまで」その後
ぼく達は今回のお仕事見学でスペースコロニーの建造はとてつもない時間と資源と労力を費やして作られることだけでなく、人々が安心して暮らせる様にと普段気がつかない様な様々な工夫が施され、また大勢の人たちが昼夜を問わずその環境維持のために働いていることなどを学んだ。
それと同時にスペースコロニー社会の成立はその黎明期に地球の各国政府が宇宙開発に夢中になったあげく、人々との軋轢を生みだしてクーデーターなど世界各地が大混乱に陥ったことや、それを今だにひきずってスペースコロニー社会に害をなそうとする人々がいることも。
スペースコロニー社会はそれ自体が一つの国家と呼んでよく、それらをまとめ管理しているスペースコロニー管理委員会(SCMC:Space Colony Management Committee)が政府、またその直下で治安維持のために活動している警備局が軍や警察を兼ねている。
広大な空間を持つ地球と異なり狭い空間での生活となるスペースコロニーにおいて、悪意ある行為は下手をすると幾万、幾十万という人々の生命財産を容易に脅かすことになる。
そんなスペースコロニー社会に悪意を持って害をなそうとする人々は全てテロリストとして扱われ、警備局含めスペースコロニー社会の全てをもって駆逐すべき対象とされている。
その為、スペースコロニー管理委員会で働く者は事務職も含めて最低限の自衛手段を叩き込まれている他
、警備局に勤める者に至っては全員が日頃から戦闘技術を訓練しており銃器の扱いにも精通していることから、事務職であっても有事には即座に戦士として戦いに加わることが可能である。
「いてて、まいった、まいった、まいったからぁ、手ぇ離して、ね、ま、槙野園さん、ね?」
涙目になりながら情けない声を出しているのは警備局支部長のチェ・パラスティヤだ。
いくつもの武勇伝を持ち、スペースコロニー社会では知らないものがいないほどの実力で英雄視されている男だ。
30歳にもならないうちに警備局の警備支部長を務めており、警備局の特殊強襲部隊の部隊長だった頃の実力を買われて警備局長直々に口説かれて今の地位についたという。
現在はテロリストが頻出している宙域にある複数のスペースコロニーの警備を担う支部の統括を任されている。
槙野園女史がそのチェを冷たい目で睨みながら腕を捻り上げているのをみると、警備局の女性も全員それなりに強いんだろうなぁと思わざるを得なかった。
「ったく、いい加減懲りてくれませんか、チェ支部長?女史局員のお尻触るのは立派な犯罪なんですから!そんなに逮捕されたいんですか!?」
「え〜、まきちゃんにだったら逮捕されてもいいかもぉ」
だらしない顔で答えるチェの姿はとても噂の英雄とはとても思えなかった。
「英雄色を好むってやつなのかな?』
ボソっとつぶやくカズヤ。
「そ、そうそう、君、それだよそれ
!ほら、ボクって一応英雄って言われてたりするじゃない?だからちょっとくらい好色なくらいは英雄につきものってことで見逃し・・・いてぇ!
や、あやめてぇ、あ、や、もっとぉ〜」
「さ、皆さんあんなバカはほっといていいんで次行きますよ」
あまりに調子に乗りすぎたせいか、他の女史職員も混ざってボロクソにされているチェを尻目に槙野園女史はぼく達を外へ促して建物の外へ出ていく。
見学会の締めはスペースコロニー社会歴史博物館の見学だ。
少し歩いたところにあるシャトルバス乗り場へ歩き始める一行。
そんな時だった。
突然、手にコンバットナイフらしきものを持った数人の覆面が現れた
「くたばれぇ、SCMAのクズどもがぁ!」
「貴様らのせいで地球は汚染されたんだ、責任をとれぇ!」
「死にくされ、このクソアマアァ!」
口々に罵声を浴びせながら槙野園女史と近くにいた職員に襲いかかっていく。
「!!」
槙野園女史が動いた。
闇雲にナイフを振り回す男の腕を鞄で叩き落とすと、そのまま懐へ飛び込んで強烈な肘を打ち込む。
カズヤによると中国拳法の八極拳にある肘の使い方の一つらしく、肘打ちというよりも肘を使った体当たりみたいなものでか弱い女性でもその体重がそのまま肘先に乗っかるのでかなり強力らしい。
「グボォ!?」
槙野園女史の技で吹っ飛び、痛みで地面でのち打ち回る覆面には目もくれず、槙野園女史は他の職員にぼく達を管理委員会本部の建物に避難させる様指示をだしている。
その一方でもう一人の女性職員が華麗な動きで他の覆面のナイフを持つ腕をとって関節を挫き、そのまま重心を崩して頭から地面に叩きつけていた。
「こ、こええ・・・」
「ま、槙野園さんかっこいい!」
びっくりしているカズヤに対し、憧憬の目で槙野園女史をみながら走るリズ。
「ふ、二人ともそんなこと言ってる場合じゃないから!早く!こっち、こっち!」
ぼくは職員の人の後を走りながらリズとカズヤを急かす。
そんなぼく達の前に、キキキーっと音を立ててエレカーが飛び込んできた。
スペースコロニーのエレカーは全て全自動なので本来こんな危険な走りかたはしないはずなんだけど、どうやら違法にプログラムを書き換えてあるらしい。
エレカーから新たにまた複数人の覆面が降りてきた。
こちらもまたコンバットナイフなどの刃物を持っている。
スペースコロニー社会では一般人が銃器などの武器を持つことを禁じている。
宇宙港をはじめとして様々なチェックが幾重にも行われているので、銃器を持ち込むことはかなり困難といえる。
なので、それなりの機材があれば自作しやすい刃物で武装しているのだろう。
「や、やべぇ・・・」
覆面達に行手を阻まれたカズヤが額に冷や汗をかきながら後ずさる。
ぼくはリズを後ろに守る様にしながら一緒に後ずさった。
「ま、槙野園さん!」
槙野園女史に助けを求めようとして後ろを振り返ると、槙野園女史達は別の覆面たちの相手でそれどころではないらしい。
一緒にいた職員が覆面に挑んだが、あっとうまに倒されてしまった。
どうやら前にいる覆面達は先ほどの連中とは格が違うらしい。
前の覆面達と比べてもかなり体格が良く動きも統率されている。
覆面の奥の冷ややかで射る様な眼光で睨みつけられると、心臓を鷲掴みにされたかの様に身体がうごかなくなってしまう。
慌てて駆けつけた警備局員が取り押さえようと挑みかかったが、あっさりと倒され、地面に赤い染みが広がっていった。
周りで悲鳴があがり、気がつくとぼくらは周りを囲まれていた。
「絶体絶命、かな、こりゃ・・・」
カズヤが唇を噛みしめながら呟くのを聞きながら、ぼくはリズを抱き寄せてなんとか逃げる方法はないかと必死に考えを巡らせていた。
「はーい、そこまで!」
声に反応して覆面達が振り向くと、黒い影が飛び込んできてあっという間に覆面達をなぎ倒し、僕たちと覆面達の間に割って入った。
「チェ支部長!」
槙野園女史の声に、よぉと能天気な返事を返しているのは間違いなくチェ・パラスティヤ支部長その人だった。
そしてその傍に立つ部下らしき人たち。
チェ支部長は部下に命じて怪我をした職員に運ばせると、覆面を睨みつける。
「なんかうちの連中をずいぶんと痛めつけてくれたみたいだな。
こんなことをした以上覚悟はできているよなぁ、え?
テロリストにかける情けは無ぇぞ?」
チェ支部長の言葉にハっとして周りを見渡すと、いつのまにか十数人いた覆面達のなかで残っているのは前に居る5人だけであった。
「一度だけ警告してやる。
大人しく武器を捨てて降参しろ。」
チェ支部長に対する覆面の返事は言葉ではなく、飛んできたナイフであった。
それを躱すと、即座に懐へ飛び込もうとするチェ支部長。
それを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべる覆面。
それに何かを感じたのか、チェ支部長がいきなり地面へ転がった。
それまでチェ支部長の頭のあった位置を飛び去ったはずのナイフが戻ってきて横薙にかすめていく。
細いワイヤーでナイフを引き戻して操作し、死角から襲おうとしたらしい。
「チッ、カンのいい野郎だ」
舌打ちした覆面はナイフを手に戻しながら間合いをとる。
「ったく面倒だな・・・。ま、いいや、お前らこいつは俺がやるから手を出すなよ、」
チェ支部長はと部下達に声を掛けながらやれやれという感じで立ち上がる。
それを聞いて呆れた様に後ろに下がる部下達。
この覆面には警備局員を含む5名の職員があっさり倒されていることからも、この覆面がかなり強いことは間違い無い。
いつの間にかぼく達の傍にいた槙野園女史までもが呆れた様な目でチェ支部長を見つめていた。
「あのバカ、よほど事務仕事ばかりで退屈してたのね、まったく・・・」
「た、退屈?」
「そ、楽しんでるのよあのバカ。この状況をね。」
「え、た、楽しむってヤバいでしょこの状況?そんな状況じゃな・・・」
「大丈夫よ。アイツならあの程度の相手、問題じゃないから。」
その視線の先では、覆面の男とチェ支部長が無言で睨み合っていた。
いや、少しずつお互いに間合いを図る様にじりじりと動きながら様子をみている様だ。
覆面が動いた。
チェ支部長の顔を目掛けて足元の小石を蹴り上げると、ナイフを チェ支部長の腹目掛けて投げつけてくる。
その小石を避けようともせずに前へ出て額で受け止めるチェ支部長。
そして飛んできたナイフの柄のあたりを小さなモーションで下から斜め上に蹴り飛ばす。
その結果チェ支部長の身体は片足立ちで体を捻ったまま横向きになってしまっている。
足を戻して体勢を立て直す余裕はない。
そこをすかさず覆面が飛び込んできて胸に下向きにつけた鞘からナイフを引き抜き、突き刺しに来た。
無防備な腹にナイフを深々と突き立ててそのまま抉り、
そして切り裂く。
覆面はこれまでに幾人もの相手をそうやって殺してきた。
そして今回もその光景、
チェ支部長が血と内臓を撒き散らして苦しみ悶えながら死ぬ様子を想像し、勝利を確信してほくそ笑んだ。
それを最後に覆面の意識は途絶えた。
「スゴかったんだって、チェ支部長!ほんと、めちゃくちゃ強かったんだって!」
興奮して周りにチェ支部長の活躍を語って聞かせているカズヤ。
覆面が懐から出したナイフでチェ支部長の腹を抉りに行こうとした時、チェ支部長は無理に姿勢を戻そうとはせずにそのまま体を一回転させてコンパクトな飛び後ろ回し蹴りの様な感じで覆面のナイフごと腕を蹴り飛ばし、そのまま蹴りの勢いを活かして更に膝を覆面の顔面に叩き込んだらしい。
突っ込んできた勢いもあって完全にカウンターとなったその膝蹴りは覆面の左半面の骨を砕くほどの威力だったらしく、当分の間は警備局の犯罪者収容所にある病院で入院することになったそうだ。
この事件でお仕事見学会の最終日に予定されていたスペースコロニー社会歴史博物館の見学は中止となってしまった。
そしてぼく達はスペースコロニー 管理委員会本部へ呼び戻されて事情聴取を受け、それでほとんど時間を費やすことになった。
「支部長も丸くなりましたね」
笑いながらチェ支部長の部下達と槙野園女史が歓談している。
槙野園女史は今でこそスペースコロニー委員会で働いているが、かつてはチェ支部長の部隊で部下として戦っていたこともあったらしい。
槙野園女史によれば、昔現役で部隊長をしていた時は相手のナイフを蹴り飛ばすなんてハデな技なんか使わずに自分もナイフで弾き返し、そのまま懐に飛び込んで相手の首を掻き切るか腹を抉ったり裂いたりして一瞬で仕留めていたらしい。
なんせ休暇中に出くわしたテロ事件では、果物ナイフ片手に22名もいたテロリストを殲滅し、返り血のついたままりんごの皮を剥いて食べながら応援の到着を待っていたこともあるとかでその事件はもはや伝説となっているそうだ。
「え、あの人そんなに強かったの?」
リズがとても信じられないという表情でぼくを見上げている
正直、ぼくもリズと同じ気持ちだった
あの時あまりの怖さにぼくはリズを抱きしめたままその場でしゃがみ込んで、ずっと目を瞑っていたんだ。
だからぼくもリズもチェ支部長の活躍を見ていなかったんだ。
そんなに凄かったら勇気を出して見ておけばよかったなぁ。
そう思いながらチェ支部長の方を振り返るとまた誰かのお尻を触ったのか、今度は槙野園女史にチョークスリーパーをかけられていた。
「く、苦し、ま、まきちゃん、や、あやめてぇえ、
あ、いや、やっぱりやめないでぇえ、まきちゃんの胸の感触があ、頭にぃい、でへへへ」
「ね、あれ本当に強かったの・・・?」
「え、う、うん・・・」
ぼくとリズは呆れた様にカズヤに問いかけながらチェ支部長と槙野園女史のジャレ合う様子を眺めていた。
こうしてぼくらのお仕事見学会は終わった。
しまらない終わり方だったけど、一生忘れられない思い出になったことは間違い無いと思う。
今回で、小説家になろうでの更新は最後となります。
以後は別の小説投稿サイトで公開していきます。
今後の展開に興味のある方は同名タイトルをググってみるとすぐ見つかると思います
ご愛読、ありがとうございました。
--以下定型文--
妄想ベースなので物理原則やその道の詳しい人たちから見ると、んなわけねーじゃん!ってツッコみたくなる部分がメチャクチャ多いと思います。
楽しけりゃいいってノリなのであまり考証せず書いてますけど、そーじゃなくてこーだ!って指摘は歓迎です。
ストーリーや世界観さえ破綻しなければ、さりげなく取り入れてしれっと書き直してるかもしれません。
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