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絵描きのエレジー
宇宙のような願望を
誰かに伝えようと
誰かと共有しようと
描き表すことにした。
真っ黒い宇宙と正反対な
真っ白いキャンバスを広げて
少しずつ塗っていく。
これが僕の世界だ
これが僕の願望だ
これが僕の感情だ
これが僕の解釈だ
「見て!」
描いた世界に浸ってみたけど
描いた世界を紹介したけど
キャンバスを片づけられてしまったら
僕は目を逸らさざるを得なくて。
「説明してよ」
無理だよ。
だって言葉は強い。
痛くて怖くて苦しいんだもの。
ならいっそこんな白いキャンバスなんて
切り裂いて捨ててしまえばいいのに、
求められるたびに僕は描く。
伝えたくなるたびに描く。
描いては絶望し、
この徒労が宝物だと知る。
(言語学を専攻して気付いたことは、世界は言語では表せないということでした)




