またね
会議室は大勢の人が居るにも関わらず鎮まりかえっている。
会議室で白川はロストナンバーズ全員を集め、国分医師のgiftに対する何らかの因果関係と自殺について詳らかにした。
国分医師は命を落とし、部隊の者達はみな複雑な思いを抱いていた。
なぜあの優しくベテランである国分医師がおかしな真似をした上に死ななければならなかったのか・・・。
大村も白川も川内も思いは同じだった。
この事件は国分医師が亡くなった場所の管轄と公安とサイバー犯罪課が調べている。ロストナンバーズができることは何もなかった。
ただ皆何も言わず、鎮痛な面持ちだった。
白川は説明を終え、会を解散させた。
隊員たちは各々会議室を去っていく。白川と川内は話し込んでいる。そこへ、大村がやってきた。
「どうした、大村?」
白川は大村の切羽詰まった表情に思わず目を丸くする。大村は一度唇を噛み締め、決心を固めた。
「あの、わがままを言っているのは十分承知です。お願いですから家宅側索に参加させてください!」
大村は深くおじぎをする。川内はため息をつき、白川は天井を見上げて思案する。
やがて白川が大村に頭をあげるよう言った。
「今回、後手後手にまわった上に死人まで出してしまったのは、ひとえにお前を信じてすぐに行動に移さなかった上司としての俺の責任だ。それにお前は警察官だし、やり方も良くわかってるはずだ。」
「それって大村に家宅捜索に参加しろってこと?」
川内は怪訝そうに言う。しかし白川は川内の言葉に答えようとしなかった。
「上司の責任として、どうにかして入れるよう頼み込んでみる。」
そう言って白川はどこかに電話をかけていた。
その間川内は呆れた様子で白川と大村を見ていたが、ふと何かを思い出したように言った。
「大村、あんたがメモしたロシア語、たしか『またね』って意味だったと思う。」
「『またね』ですか?」
川内は口元に手を当ててしばし考えていた。
やがて白川の電話も終わったとき、川内は白川と大村に言った。
「国分先生が犯人って訳じゃなく、どこかの愉快犯が確実に糸を引いてそうなそうな気がするわ・・・。」
「それは『私の中の野生がそうささy」
そう言おうとした白川の口を川内が閉じた。
「わざわざ女の子らしい絵を使ってロシア語で『またね』なんて言ってる時点で愉快犯に決まってるでしょ。そんなもの誰だって分かることよ。」
大村は川内の意見に気の抜けた返事をした。白川は乾いた笑いをしながら電話での結果を大村に伝えた。
「さて、いろんなことろにお願いしてきたから、この住所のところに行ってこい。」
「わ、わかりました。」
大村は思わず敬礼をした。
「それにしても、どうして川内隊長はロシア語が分かるんですか?」
その大村の問に、川内は黒く艶めく前髪を掻き上げて静かに答える。
「昔居た傭兵部隊にロシア出身の知り合いがいた。それだけよ。」
白川が「それは『私の中の野生がそうささy」と言おうとしたのは某甲殻な機動隊の名台詞を文字って言いたかったのでしょう。
ちなみに白川が目標としてるのも某甲殻なあの機動隊みたいな超法規超攻撃的な部隊が作りたいという半分アニメオタなところがあるからです。
あと、なぜ川内が野生なのかはその後の番外編で書こうと思っています。