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贖罪  作者: 北村 達也
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贖罪97





贖罪97


 天国でも涙が流れていた。


 その元を辿るとフォスに行きついた。


 マリスの魔法によって眠らされていた彼女は無事に天国に戻ることができたが、目が覚めると何があったかを思い出して泣いていた。


 こうなってしまうから、天国に来るときに踏ん切りの坂で魂の尻尾を切り落とすのだが、それが彼女に戻っている今、彼女の頭にあるのはストローフィーのことだけであった。

 

 気が付くと彼女の目の前にはストローフィーの部屋に来ていた大天使がいた。


「あなたは?」


「僕は大天使。神様のお言葉を伝える者。」


 大天使を目の前にしていることに気が付くと彼女は泣くのを止めた。


「大天使様。私は罪を犯しました。」


「そうだね。僕は君の夫であるストローフィーに君の死後に会いに行った。亡くなった人に会おうなどと考えることを止めるように言ったけど、彼は悪魔の囁きに負けてしまった。神様も、僕も、とても残念だった。」


「彼も、私も、お互いを強く愛するあまり罪を犯してしまいました。」


「君は天国を離れて地獄へ行く選択をした。それが君の罪だ。」


「はい…。」

また泣きたい気持ちになったが、泣いて大天使を困らせるわけにはいかなかった。


「本来なら君を天国で受け入れない。しかし神様はストローフィーの自己犠牲の精神を評価して君をまた天国で受け入れることにした。それに君のお父さん…。」


「パパ…いえ、父が、どうしたんですか?」


 父の話がこんなところで出ると思ってもいなかった彼女は思わず大天使の話を遮ってしまったが、大天使は気にする素振りを微塵も見せなかった。


 大天使は話を続けた。


「君を天国でまた受け入れて欲しいとお父さんがお願いしていたんだ。お父さんは自分の魂を消滅させて構わないから君を戻して欲しいと涙ながらに言った。お母さんもそう言った。お父さんは生前はお金に執着する人間だったけど、君への愛がお父さんを愛の人間に変えたんだったね。お父さんをそんな風に変える愛の力はやはり偉大だと改めて思わせてくれたよ。」


「そうですか…。父がそんなことを…。」

父がそんなことを言うなんて彼女は思ってもみなかった。抑えようとしたが、どうしても涙が零れてきた。


「両親の魂は…魂は消滅してしまったんでしょうか?私のせいで。」


「安心して。無事に天国で暮らしているよ。」


 彼女は胸を撫でおろした。


 ストローフィーが地獄にいて、その上に両親の魂までもが消滅してしまったら、彼女は決して自分を許すことができなかっただろう。

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