贖罪93
「さて、次は話し方だ。君はなんで人間に偉そうな態度を取るんだい?」
「あいつらが偉そうにしてくるからですよ。人間の分際で悪魔を蔑んだ態度を取るんです。
本当は怖くて仕方ないくせに。悪魔に頼らないと駄目な自分を知ってるくせに、偉そうなんです。
それが苛立って仕方ありません。」
「確かにそうだ。悪魔や天使でもない、何にもできない下等種族のくせにね。
でも、偉そうな態度を取るのは本当にそれだけかい?」
「どういう意味ですか……?」
含みのあるエビールの言い方がマリスは気に入らなかった。
「たとえば、恋人やお母さんのことも関係しているんじゃないかな……?
直接、間接の違いはあるけど、どちらも人間に殺されてる。」
「どっちも関係ありません。」
「そうかな? 人間を助けていたお母さんは人間たちから好かれていたけど……。」
「関係ありませんって。」
違うと言ってるのにも関わらずエビールしつこく聞いてくるので、イライラする気持ちをマリスは何とか抑えようとした。
「やがて悪魔狩りが始まった。君のお母さんは人間の友人の家に匿ってもらっていたけど……。」
「関係ないって言ってるでしょ!」
これ以上我慢ならず、椅子からいきり立って大声を出した。
エビールは動じることなく、冷静にマリスを見つめていた。
「しつこく聞いて、怒らせてしまったね。謝るよ。」
エビールが言った。
やがて興奮が収まるとマリスは椅子に座りなおした。
場には気まずい雰囲気が流れた。
暫くはどちらも喋らず、エビールが紅茶を飲みながら何を言おうか考えていると、思いがけずマリスから切り出した。
「すいません、取り乱して。確かに、エビールさんの言う通りです。僕は母や恋人を殺した人間が憎いです。
恋人は金欲しさに、かつて付き合ってた男に殺されました。悪魔狩りから逃れるために母を匿っていた、
友人であったはずのアイリスは母を密告しました。捕まった母は火あぶりになりました。
報告書に書いてありますよね?」
「ああ、書いてある。」
エビールはマリスを刺激しないように静かに言った。
「母はいつも僕に人間の話をしてくれました。
いい人たちばかりだから僕が大きくなったら地上に行って仲良くしなさいとよく言われてました。」
「今はどう思う?」
「悪しき考えです。今なら分かります。」
「全くだね。人間と仲良くする。人間を愛する。こんなことはあってはならない。そうだね?」
「そうです。愛はおぞましく、あってはならないものです。」
「君はお母さんのようにならなくて良かった。君は立派に成長した。人間を憎み、不幸を願う悪魔だ。」
マリスは頷いてから話を続けた。




