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贖罪  作者: 北村 達也
78/320

贖罪78

「彼女を天国へ連れてってくれ!」


 フォスを自分から離して強引にマリスの方にストローフィーは連れて行った。


 マリスは彼女の右手をしっかりと掴んだ。


 彼女は必死に抵抗をしたが、マリスの力が強くて逃れられなかった。


「その前にこれにサインだ。」


 フォスを掴んでいた右手とは反対の左手に、いつの間にか持っていた契約書をストローフィーに渡した。


 彼女が暴れて手こずらせるので、マリスは魔法で彼女を眠らせた。


「またこんなギリギリでサインか!」


「お前らがダラダラとくっちゃべっていたからだろう。オレはちゃんと説明する時間を確保していたんだ。

今からその時間をとってもいいが、女を天国に戻るのは時間が経てば経つほど難しくなるぞ?

時間が経てば向こうもいなくなったことに気づくからな。今ならまだ気づかれないで返せるはずだ。

さあ、どうする?説明するか?すぐに戻すか?彼女を起こして、またくっちゃべるか?」


 決断に迫られたストローフィーは苛立ちから手で髪をクシャクシャにして、急いでサインをしてマリスに契約書を押し付けた。


 突然体に何か異変を感じてクラっとしたが、すぐに収まった。


「急いでくれ!」


 マリスはサインを確認したあと、指を鳴らして使い魔を呼び寄せ、彼女の身を預けた。


 彼女と使い魔はその場から消えて、ストローフィーとマリスだけが残った。


「これであの女は向こうに着けば元の肉体に戻っている。いや、向こうじゃ肉体なんてものは存在せず、

想像次第で何でも作れるから向こうに戻れさえすれば問題はない。ところで、お前に4つのことを伝えよう。

まず1つ、お前は死んだら彼女と一緒になれるかもしれないという期待を抱いてるようだが、そうはいかない。」


「なんでそんなことが言える?神様が…許してくださるかもしれないだろう。」


 地獄の50年を受け入れることができたのも、儚い期待ではあったものの、終われば天国でまた愛する人と再会できるかもしれないという期待があったからだった。


 坂を50年登り続けなければいけないとなっても、登った先にもしかしたらフォスの待つ楽園が広がっているかもしれないと思えば頑張れるのに、登った先に何もないと登る前から分かったとしたら、一体どうやって頑張ればいいのだろう。


 その期待を早々と木端微塵にされたストローフィーの顔は悲惨であった。


「地獄で死ねば魂も地獄に残る。お前はこれからずうっと、ここにいるんだよ。それに、いい加減目を覚ませ。神はお前を助けなかっただろう。だから今、お前はここにいるんだろう。」

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