贖罪69
「それでは、ご案内致します。失礼いたします。」
マリスが再びストローフィーの肩に手を乗せると、違う場所に移動したがそこは真っ暗で彼には何も見えなかった。
暗闇のどこからか声が微かに聞こえてきたが、荒れのいる場所からは遠いようでよく聞こえなかった。
「ここは、どこなんだ?」
「来客用のスペースです。」
暗闇の中でマリスが言った。
「マリス。彼女は一体どこにいる?それになんで暗いんだ?何も見えない。」
「いらっしゃいますよ。そのまま真っ直ぐお進みになってください。」
言われた通りストローフィーが進むと、砂を踏んだような感覚があった。
そのまま進んでいくと砂のようなものはずっと続いていた。
声が段々と近くなってきたのだが、それは泣き声であることに気が付いた。
「フォス。君なの?」
ストローフィーの声を聞くと泣き声は止まった。
「ストローフィー?そこにいるのは、あなたなの?」
「ああ、そうだよ。フォス。やっと会えた。どれほど君に会いたかったことか。でも、なんで泣いてるの?」
「これが泣かずにいられる?」
「嬉しくて…泣いてるの?」
「あなたにまた会えたことは言葉にならないほど嬉しいけど、この涙は違うの。」
「じゃあ、なんで泣いてるの?君が死んで僕たちは離れ離れになったけど、それももう終わりだ。これからは一緒じゃないか。」
「ああ、ストローフィー。悲しくて恐ろしくて涙が止まらないの。」
フォスは再び泣き出した。
「悲しい?恐ろしい?」
ストローフィーは困惑した。
とにかく、真っ暗では何も分からなかった。
「マリス。明かりを点けてくれないか。」
「宜しいので?」
マリスが言う。
「ダメよ!」
フォスが割って入った。
「でもこれじゃ、何も見えないじゃないか。」
「私を見たら…あなたはもう私を愛してくれなくなるわ。それが恐ろしいの。」
「君を愛さないなんて、そんなことあるわけないじゃないか。」
「愛してくれると…約束できる?」
「約束するよ!」
彼女が一体どんなことになっているのか恐ろしかったが、彼女への彼の愛が揺らぐはずはなかった。
「…分かったわ。」
「さあ、電気を点けてくれ。」
「お望みのままに。」
マリスが指を鳴らすとやっと明るくなったが、暗闇に長いこといたために、光が眩しくてストローフィーはとても目が開けていられなかった。
時間が経つにつれて段々と見えてくるようになり、目の前にはボンヤリとしか分からないが誰かがいた。
フォスに違いないと思うと喜びに震えた。
だが目が慣れていくにつれて、おかしいと思い始めた。
白いフォルムが目の前に見えた。
洋服が白いのかと最初は思ったが、そうではなく顔も手も白いようだった。
彼女であって彼女でない何かが目の前にいる、そう思うと見えるようになるのが彼は怖くなってきた。
ぼやけていた視界が更にはっきりしてくると、その姿に驚愕した。




