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贖罪  作者: 北村 達也
56/320

贖罪56

「あなたは?」

得体の知れないこの人物が何者なのか、恐る恐る聞いた。


「大天使だよ。」


「大天使!しかし、そのお姿は…。」


「大天使というと羽をイメージするんだね?」


「はい。」


「我々に決まった形はない。このように。」


 そう言うと大天使からは白く美しい羽が生えた。


 そしてすぐに元の姿に戻り、話を続けた。


「人間の思い描く大天使のようになれるし、君たちのような姿にもなれる。

天国以外ではこの姿でいることが多い。それだけのことさ。」


「分かりました。しかし…やっと祈りが届いたのですね!お願いです。妻に、フォスに会わせてください!」


「いや、そうじゃない。彼女に会わせる気はない。」


「え?」


「もう諦めるんだ。彼女はもう死者で、君は生者。

死者には死者の世界があり、生者には生者の世界、この世界がある。

失ったものを数えればきりがない。今の君にあるものを大切にして生きるんだ。

大切な人を失ったのは君が初めてではない。

生きていれば別離の悲しみに会うのは避けられないことだ。

君の願いである、また彼女に会いたいというのは、自然を捻じ曲げようとするものだ。」


「仰ることは分かります。このままの生き方ができないのは分かっています。

でも、もう一度!もう一度だけ彼女に会いたいんです!ちゃんと別れを言いたいんです!」


「駄目だ。君はその願いを叶えた後も満足することなく、再び頼むだろう。人間の欲深さだよ。」


「しかし彼女なしのこの人生は、僕にとって何の意味も持たないのです。

この世で会うことが叶わないのなら、僕も死んで彼女に会いに行きます。」


「それも駄目だ。君は命を自分の物だと思っているようだけど、その命は神さまから与えられたものだ。

人はそれぞれ使命を持ち、地に遣わされる。君は君の使命を果たし、天が定める時まで1日1日を生きるんだ。」

そう言うと部屋はまた再び光に包まれて、その眩しさにストローフィーはまた目を閉じた。


 そして目を開けた時には大天使はもういなかった。

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