贖罪56
「あなたは?」
得体の知れないこの人物が何者なのか、恐る恐る聞いた。
「大天使だよ。」
「大天使!しかし、そのお姿は…。」
「大天使というと羽をイメージするんだね?」
「はい。」
「我々に決まった形はない。このように。」
そう言うと大天使からは白く美しい羽が生えた。
そしてすぐに元の姿に戻り、話を続けた。
「人間の思い描く大天使のようになれるし、君たちのような姿にもなれる。
天国以外ではこの姿でいることが多い。それだけのことさ。」
「分かりました。しかし…やっと祈りが届いたのですね!お願いです。妻に、フォスに会わせてください!」
「いや、そうじゃない。彼女に会わせる気はない。」
「え?」
「もう諦めるんだ。彼女はもう死者で、君は生者。
死者には死者の世界があり、生者には生者の世界、この世界がある。
失ったものを数えればきりがない。今の君にあるものを大切にして生きるんだ。
大切な人を失ったのは君が初めてではない。
生きていれば別離の悲しみに会うのは避けられないことだ。
君の願いである、また彼女に会いたいというのは、自然を捻じ曲げようとするものだ。」
「仰ることは分かります。このままの生き方ができないのは分かっています。
でも、もう一度!もう一度だけ彼女に会いたいんです!ちゃんと別れを言いたいんです!」
「駄目だ。君はその願いを叶えた後も満足することなく、再び頼むだろう。人間の欲深さだよ。」
「しかし彼女なしのこの人生は、僕にとって何の意味も持たないのです。
この世で会うことが叶わないのなら、僕も死んで彼女に会いに行きます。」
「それも駄目だ。君は命を自分の物だと思っているようだけど、その命は神さまから与えられたものだ。
人はそれぞれ使命を持ち、地に遣わされる。君は君の使命を果たし、天が定める時まで1日1日を生きるんだ。」
そう言うと部屋はまた再び光に包まれて、その眩しさにストローフィーはまた目を閉じた。
そして目を開けた時には大天使はもういなかった。




