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贖罪  作者: 北村 達也
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贖罪43

 フォスはラルフと一緒に父の生まれ育った所であり、現在の父の住まいである家へ行った。


 彼女の住んでいた町とは違い、そこには活気がなく、大人たちは昼間から酒を飲んで騒いでいた。


 彼女が歩いていると足元をネズミが通って彼女を驚かせ、それを見た子供たちはケラケラと笑っていた。


 こういうところは縄張り意識が強く、よそ者が紛れ込むことに抵抗を感じる。


 見慣れない顔の二人が歩いていると、それを見た大人たちはお互いの耳元で何かを囁きあっているのが彼女は見えた。


『パパはこんな所で育ったのね。ここは入り組んでいて、まるで迷路のよう。

下手に迷い込んだら出られなくなってしまいそう。パパは必死にあがいてこの迷路から出たのね。

ここは建物が密集していて陽の光が届きにくくて暗い、そして雰囲気も暗い。

私の住む町は明るい町で活気にあふれている。

パパはこの暗い場所から明るい場所に行きたかったのね、ママのために。』


 そんなことを考えていると道の前方に彼らの行く手を塞ぐように数人の男たちが目の前に現れた。


 そのうちの一人は先ほど彼らが歩いている時にコソコソと耳打ちをしている男だったことにラルフは気が付いた。


 後ろを振り返るといつの間にか数人の男たちがいた。彼らは路地で囲まれた。


 前方の集団から一人前に出てきたのはあごひげの逞しい50代の男だった。


 髪は後ろで結び、顔には刃物のような傷跡が残っていた。


 明らかに周りとは違う雰囲気を放っている彼はこの町を仕切っているピーターという男で、その手にはナイフを持っていた。


「どちらへ?よそ者さん。」

明らかに威嚇する目つきで彼女たちを睨みつけた。


 彼女は恐ろしくなって何も言えなかったが、ラルフが一歩前に出た。


「ジョセフさんを訪ねてきたんです。ひと月ほど前にこちらに来ていると思うのですが。」


「ジョセフか。この場所からのし上がった英雄だったが、あいつはここに何もしなかった。

あいつを育てたこの町を忘れた恩知らずだ。だからもう英雄でも何でもない。

あいつは確かにひと月ほど前に戻って来たな。ここは行き場をなくした奴らの人生の終着点だ。

俺らネズミは終着点に来ちまった同胞たちを助けるが、あいつを気に掛ける奴はここにはいやしない。

一人でくたばるのを待ってるだけだろう。

助けてくれなかった奴を、助けようとしようとするお人よしはここには一人もいないからな。

たまに酒瓶を片手にフラフラとした足取りで食料を買いに行ってるよ。

いつも酔ってるから、しょっちゅうすっ転んでるが、今言ったように誰も奴に手を貸しはしない。

花も手に持っているときがあるな、頭がおかしくなったのかもな。」

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