贖罪42
彼は既に別の家の使用人として働いていても、彼女のことが好きだったので、心配で放っておけずに後から走っていった。
やがて彼女が住んでいた家にたどり着くとその門は閉ざされていた。
芝生は伸びっぱなしで、いつも水が流れていた噴水は止まっていた。
ヨロヨロと歩き、閉ざされた門の柵にしがみついて扉を見ると木が打ち付けてあって人が入れないようになっていた。
嘘であって欲しいと走りながら思っていたが、自分の目で見て本当に父が破産したという事実を思い知らされた。
彼女はそこにへたり込んだ。彼は追いつくと彼女を不憫に思って何も声をかけられなかった。
彼女が育った家、大好きな母と過ごした家、それが無くなってしまったのは彼女にはとても辛いことだった。
それはまるで自分の一部が無くなったような気分だった。彼女ははっとして急に立ち上がった。
家がなくなったのは分かったが、父はどこに行ったのか?
置き去りしてきてしまったと思っていたラルフの所へ戻ろうとすると、すぐ後ろにいることに今初めて気が付いた。
それほど彼女は必死だった。
「父は、父はどこにいるの?」
「旦那さまは…」
「まさか、亡くなってないでしょうね?」
「いえ、正直申しまして分かりません。
この家が差し押さえられてからの旦那様がどこに住んでいるかは存じておりますが、
現在どのような状況かは分かりません。」
「どこに住んでいるの?」
彼から聞いた現在の父の住まいは、生まれ育ち、母と貧乏な暮らしをしていた頃に住んでいた所だった。
彼は下から駆け上がり、また物凄い勢いで転がり落ちて、始めた場所に戻ってしまっていた。
「私、今からそこへ行くわ。」
「あんな所…失礼。あそこはお嬢様が一人で行くような場所じゃありませんよ。
私、これからお屋敷に戻って今日はお暇をいただくことにしますので、私と一緒に行きましょう。」
「いいの?」
「勿論ですとも。」
「ありがとう。もう使用人じゃないのに迷惑をかけてごめんなさい。」
「やめてください、お嬢様!奥様とお嬢様には、あ、もちろん旦那様にも、いつも良くしていただきましたから、私たちいつも楽しくお仕えすることができました。
一緒に行って差し上げるくらい何でもありませんよ。
さあ、それでは申し訳ありませんが、一緒に今の私のお屋敷へ行っていただけますか?その後に旦那様の所へ参りましょう。」




