贖罪40
よく考えもせずに話していたらいつの間にか彼女への愛を公言してしまった。
その時にどれだけ大きな音が立ったとしても、彼女はその言葉だけは聞き漏らすことはなかっただろう。
「今、私を愛してる、って言った?」
「え?いや?その…うん。」
もう言ってしまったことを撤回することもできないし、彼女を愛していることは揺るぎない事実だった。
「嬉しい!私もあなたを愛してるわ!」
彼女は腕を彼の体に回して抱きついた。
「君が…僕を…愛してる?」
彼はまるで彼女の言っている意味が分からないようだった。
「そうよ!あなたを愛してるわ!」
彼女の言っていることが信じられず、これは現実なのだろうかと彼は疑った。
彼は恐る恐る彼女の体に腕を回してみた。
彼女の体に触れることができ、彼女に抱きしめられている感覚もあったが、彼を包み込む甘い香りは幻の中にいるようだった。
しかしもし幻だとしても、確かなものが一つだけあった。それは彼女への愛だった。
「僕は、僕も君を愛してる!」
彼女を強く抱きしめた。
「もう一度言って。」
彼の胸に顔をうずめたまま言った。
「君を愛してる。誰よりも。」
彼女は何も言わなかった。おもむろに顔を上げた彼女の瞳からは涙がこぼれていた。
彼女は目を閉じた。それは言葉での会話の終了を告げ、愛の会話の開始を告げるものだった。
口を使うという点では共通しているが、前者は口と口を離した状態で行うのに対し、後者はそれらをつけて行われた。
彼は彼女の唇に自分のそれを重ねた。口づけを交わすことで彼らは愛を確かめ合い、魂で愛を伝えあった。
『愛してる。』
『愛してるわ。』




