贖罪317
『ああ。素晴らしい空気だ。地獄にはマイナスエネルギーが流れすぎてる。
今の俺はあんな所には一秒もいたくない。
しかし、俺の身にこんなことが起きるなんて今でも信じられない……。
ああ。ストローフィー。許してくれ。
君が50年を終えるまで俺は自分の間違いに気づくことが出来なかった。
気づいたときには君はもう死んでしまった。許してくれ、フォス。
君たちだけじゃなく、これまで陥れた全ての人間たち、どうか俺を許してくれ。
こんな言葉じゃ足りないことは分かってる。言葉ではいくらでも言える。
必要なのは行動だ。これから罪を償うから、どうか愚かな俺を許して欲しい。
神がストローフィーを連れて行ってくれたことが救いだ。許してくれ、アイリス。
俺はあなたを密告者だと決めつけて殺してしまった。思えば、墓にあったチューリップは、
母さんが好きだったことを知って、あなたが植えてくれたんだろう?
母さん、悪に落ちてしまった馬鹿な俺を許してくれ。そうだ!
母さん、天使になってたんだね! ああ、さっき俺が途中で会話を終わりにしなかったら、
まだ話していられたのに。あの時は偽物だと思ったけど、あれは間違いなく母さんだよ!
どうして言うことを聞けなかったのかな? ごめん。母さん、
俺は誤解してるって言ってたね。エビールから聞いてやっと全て分かったよ。
ロータス、君を守れなくてごめん。エビールに愛を読み取られたのは俺のミスだった。
俺の不注意から君を死なせてしまった。愛を捨てて、人間を陥れて、
酒に溺れた俺を見てなかったら嬉しいんだけど、もし見てたら、君に誇ってもらえることを、
これからするから見ててほしい。俺がストローフィーを陥れた時に涙したのはどうしてか、
やっと分かった。いや、本当はずっと分かってたのかもしれない。
でもそれを認めるわけにはいかない俺がいて、ずっと分からないフリをしてた。
1度目の涙はストローフィーがフォスのために地獄に残って労働すると言った時だった。
真実の愛を目の当たりして、愛の素晴らしさに気付いた涙だった。
俺は愛のなせる業に感動した。2度目の涙はストローフィーを絶望させて
全てが終わった時だった。自己犠牲という究極の愛をぶち壊しにしてしまったことに
対する後悔の涙だった。憎しみに飲み込まれずに、愛を持ち続けろと言ってた母さんは
正しかった。俺は……自分の奥底に眠る愛に嘘をついてただけで、
本当はずっと愛に飢えてた。愛し合う男女をターゲットにしていたのは、
あいつらが愛を持ってることが羨ましかっただけじゃない。
母さんが信じた人間の愛の可能性を確かめたかったからだった。俺は真実の愛が見たかった。
そんなのは夢物語のはずだったし、そのままで終わるはずだった。
でも、きっと俺はそれを見たいがために、人間の男女からひたすら愛を奪ってたんだ。
真実の愛なんて無いことが俺の正しさを証明してくれると思った。
でもストローフィーたちが現れて全てが変わった。彼らは俺に真実の愛を見せてくれた。
そしてそれを俺は奪ってしまった。取返しのつかないことをしてしまった俺は、
美しい愛を奪いたいと、もう思わなくなった。でもそれを決して認めようとはしなかった。
愛の素晴らしさを認めるということは、俺がこれまで信じてきた、
必要なのは憎しみだということを否定することだった。俺が虚無感に苛まれたのは、
それが崩れ去ったからだった。そこから脱するには自分の間違いを認めて愛の道に
戻ることだったけど、俺にはそれができなくて……、酒に溺れて……、そして……逃げ出した!
俺はずっと……ずっと逃げてたんだ! 愛に裏切られたと思って愛を捨てたけど、
愛は俺を裏切ってなかった。裏切ったのは俺の方だった! 愛を信じてなかった俺は、
傷つくことを恐れて、憎しみと手を組んだ。でも俺は今、再び愛の手を取り、間違いを正す!』




