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贖罪  作者: 北村 達也
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贖罪24

「いいえ、私の考えは変わらないわ。私はパパみたいな奴隷になりたくはない。」


「何だと?俺が奴隷だと?」


 奴隷という言葉は彼を怒らせた。


 下から這い上がって今では上から見下ろすようになった気分の彼からしたら、奴隷というものは真逆にあると思ったからだ。


 それは大いなる侮辱の言葉であった。


 フォスも冷静に考えることができたら、そんなことは決して言わなかっただろう。


 だが人は熱くなってしまうと普段は言わないこともつい言ってしまう。


 鉛筆で書いた言葉なら消しゴムで消すことができるが、口から発した言葉はもう消すことができない。


 言ったことを後悔して口から出たその言葉を捕まえてゴミ箱に葬り去ってしまおうとしても手遅れだ。


 いったんタガが外れれば樽の中に溜まっていた水は流れだし、相手を飲みつくす。


「パパはお金がないと不安でしょうがないんでしょう。増やしても増やしても満足できない。パパはお金に働かされてる、お金の奴隷よ。」


「黙れ!小娘が生意気言うな!」


「言いなりにはもうならない、これからは自由に生きていくわ!」


「頭を冷やせ!お前が路頭に迷うことになったらピオニーに申し訳が立たん。」


「ママだったら私の考えを尊重してくれるはずよ。」


「馬鹿なことを!あいつがそんなことをするはずない。」


「パパはママのことを何も分かってないわ。」


「何を分かってないと言うんだ?」


「ママだってこんな暮らしはしたくなかった。ママはパパがいないのをずっと寂しがってたわ。でもパパはそんなことに気が付かなかったでしょう。」


「あいつの考えてることくらい分かる!」


「違う。パパは何も分かってなかった。いえ、分かろうとさえしなかったわ。ママのことも私のことも。じゃあどうしてママが亡くなった日にも遅くまで仕事してたの?ママは待ってたわ。」


「俺だって直ぐにでも帰りたかったよ。だが仕事を止めるわけにはいかなかったんだ。」


「やっぱりお金が無くなるのが怖いんでしょう。大事なのは私たちよりお金。」


「生意気な口を聞くなと言っただろう!」


「ママは可哀想だった。ママはパパさえいてくれたらそれで良かったのに。貧乏のままの方がママは幸せだったはずよ!」


 貧乏の方がピオニーは幸せだったはずという発言はジョセフのやってきたことを否定するものであり、彼を激昂させた。


 妻を幸せにするために家族を顧みることなく日夜働いてきたというのに、その通りであれば自分がやってきたことは意味のないことだということになる。


 そんな考えは到底受け入れられるものではなかった。


「いい加減にしろ!分かったことを言うな!ようし、分かった。お前がそこまで言うならいいだろう。

どこへでも好きなところへ行って、バカな男でも見つけて、生きてみるがいい!

後悔して泣きついてきたって俺は許さんからな!」


「いいわ!絶対に戻ってなんて来ないわ!」

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