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古城へと帰ると、待っていた子供達から質問責めにあった。

 「倒れていた子供がクレイとメーラの友達って本当?」

 「どうしたの?怪我してたの?」

 「魔界の子?吸血鬼?」

 クレイがアカーリアのことを説明し、数日村に留まることを話した。

 「女の子?」

 「やった!お友達になれる!」

 マーテルとジェナは嬉しそうだ。ミック達は「なんだよ、女かよ」と言いつつ、興味津々のようだった。

 メイヤーさんもどこかウキウキしながら、アカーリアのための部屋の掃除を手伝ってくれた。

 「部屋のカーテンはもう少し明るい色がいいわねえ。壁紙も変えちゃいたいけど、それは時間がかかるし・・・あ、そうだわ、私、可愛い鏡持ってるのよ。アカーリアちゃんに使ってもらおっと」

 すごくウキウキしながら、部屋の模様替えを率先的にやってくれた。

 「母さん、女の子が欲しいって言ってるんだよね。俺がもう少し大きくなったら、もう一人作るつもりだってさ」

 メーラが言った。

 吸血鬼は何歳まで子供を作れるのだろうかという疑問が湧いたが、ちょっと大人の話しになりそうなので、口にだすのは止めた。

 部屋が綺麗に整った頃、アカーリアがステアに連れられ、古城へとやってきた。

 「村の人達に騒がせたことを謝ってきた。アカーリアがきちんと謝ってくれたから、皆の安心してくれたようだ」

 ステアがそう言うと、アカーリアが申し訳なさそうに目を伏せる。

 「まさか、誘拐されたと思われていたなんて、驚いたわ。皆、私のことすごく心配してくれてたみたいで・・・申し訳なかったわ。すごく良い村なのね、ここ」

 アカーリアの言葉に、子供たちが得意気な顔になる。クレイも嬉しくなる。ここはとても良い村なのだ。本当に。

 そのあと、アカーリアに部屋を見せ、クレイは友人達を紹介した。女の子達はすぐに仲良くなり、男の子達もアカーリアを気に入ったようだ。

 「それじゃあ、アカーリア、今日は村の中を見てきなさい。他の子供達と遊んでくると良い。クレイ、メーラ、一緒に行ってあげなさい。他の子供達も、アカーリアをよろしく」

 ステアに送り出され、クレイ達は村へと向かった。ステアに少しだけおこづかいを貰ったおかげで、子供達は一目散にお菓子の売られているお店へと走る。

 そのせいで、古城の周りに飛び交っている蝙蝠がいつもよりも数が多いことに気づかなかった。



 その日はアカーリアも交えて、村の子供達と一緒にたっぷりと遊んだ。

 倒れたケビンのことを皆心配していたが、ひとまず心配要らないと、吸血鬼のステアの言葉を伝えると、皆笑顔になった。

 ステアはいつも自信たっぷりに話をするので、信頼があるのだ。

 メーラ待望の野球をやった。

 アカーリアもフットベースボールをやったおかげで、大体のルールはわかっていたので、すぐにゲームに参加できた。ただ、バットを振ってボールに当てるのが難しいようだった。

 野球をやっているうちに村の人達が立ち代わり見学に来て、アカーリアと話していた。アカーリアはとても丁寧に大人びた話し方をするので、大人達は舌を巻いていた。

 「まあまあ、しっかりした子だこと」

 「親御さんの躾が良いのね」

 「うちの子にも見習ってほしいわ」

 アカーリアがしばらく村に滞在することはすんなりと受け入れられたようだった。

 日が暮れ、解散の時間になり、クレイとメーラ、そしてアカーリアはそろって古城へと向かう。古城は村の外れにあるので、少し歩かなければならない。

 いつものように歩きだすと、アカーリアがクレイとメーラを見て、驚きのため息を漏らした。

 「なに?」

 「本当に魔法を使わないんだなあって、思って・・・」

 「・・・ああ、空を飛んで行かないから?まあ、誰も見てないし、やっても良いんだけど・・・」

 メーラは古城への道を眺める。

 木立の間に作られた道が続いている。今の季節は木々の葉が全部落ちてしまっているのが、少し寂しい。しかし、その先に建つ我が家がよく見える。

 夕日に照らされた古城が、柔らかく輝いている。一階のキッチンと二階のケビンの部屋が明るい。ろうそくを灯しているのだろう。

 「いいの、飛びたいわけじゃないの。ただ、とても不思議な感じ。ケビン先生の授業と同じだわ」

 アカーリアは楽しげな表情でそう言った。

 そういえば、アカーリアはケビンの授業をとても楽しんでいたように見えた。

 「面白いよな、魔法を使わないっていうのも」

 メーラも楽しそうだ。アカーリアは頷く。

 クレイはちょっと驚いた。

 メーラがそんな風に思っていただなんて、はじめて聞いた。パッパース村の中で魔法の禁止を言い渡されたとき、たしかにメーラは文句を言って戸惑っていた。しかし、すぐに慣れたようにみえた。

 クレイにとってはそれが当たり前だから、なにも疑問に思わなかったが、メーラは実はすごく楽しんでいたのかもしれない。

 


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