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20.『問題』

読む自己。

「ん~そうですね……電気屋さんでしょうか」


 と笑って古川先輩が答えてくれる。


「え、あ、でも、テレビとか見てると楽しいですよね!」

「はいっ、3時間くらいは見ているだけで時間をつぶせますよっ」


 て、店員さん迷惑だと思うだろうなぁ。

 それでも電気屋さんに移動して思い思いに見ていく。


「あー最新のノートパソコンかー」

「お困りですかお客様!」

「あ、し、失礼します!」


 電気屋さんの嫌いなところはこういうところとしか言いようがない。

 ああいうのがなかったらもっとお客さんが来ると思うんだけどね。

 先輩たちはどうやらタブレット端末を見ているようだった。


「藤原さん、これって最新ですか?」

「いえ、1世代前の端末ね」

「でも操作した限りでは動作もサクサクしていますし……買っていこうか迷っています」

「か、買うってそれでも8万円よ?」

「クレジットカード持っていますから」

「それなら最新のを買っておきなさい」

「……やっぱりやめておきます、衝動買いすると後悔するので」


 く、クレジットカードって高校生は持てないんじゃ……お金持ちさんだろうか。

 下手をすれば8万円の物を即決しようとしていた先輩が私に気づいて話しかけてくれた。


「大西さん、楽しめていますか?」

「はい、見ているだけで楽しいですからね」

「そうですか、それは本当に良かったです」

「あ……はい……」


 駄目だよ、先輩の笑顔にドキッとしてどうすんのさ。


「杏、なにドキドキしているのよ」

「うっ、違うよ……それよりここからどうするの?」

「そうね、アイスでも食べましょうか」

「あ、フードコートがここにあったんだよね」


 アイス屋さんだったりラーメン屋さん、牛丼屋さん、うどん屋さんとかもあったの忘れてた。

 私はなんとか空席を見つけてそこに座り込む。

 どうやら菫が行ってきてくれるみたいなので、無難にバニラアイスを頼んでおいた。

 先輩とふたりきり、最近は多いので気にならないけど……。


「古川先輩、今日はどうして私も誘ってくれたんですか? 菫ちゃんと行きたかったんですよね?」

「ふ、ふたりではまだ緊張してしまいますから」

「あーまあ仕方ないですよね、全然関わっていなかったわけですし」


 私だって最初は敬語でしか接することができなかったわけだし気持ちがよく分かる。


「あの教えてもらいたいんですけど、古川先輩は菫ちゃんのことどう思っているんですか?」

「えっ!? そ、そそその……綺麗な子だな、と」

「ですよね! ふーむ、好きになってしまうのは当たり前のことですよ! 協力しますよ?」

「い、いいんですかっ?」

「はい!」


 菫と先輩が付き合いだしたらお似合いのふたりになれると思う。

 彼女が戻ってきていることに気づいたので、「ふたりの内緒ですっ」と笑って言った。


「はい杏、古川先輩も」

「ありがとっ」

「ありがとうございますっ」

「んーあむっ……ん~冷たくて美味しいっ」

「そうですね~とても美味しいですっ」

「あれ? 菫ちゃんは買ってないの? あ」


 私はいい方法を思いついて古川先輩に小声で話す。


(古川先輩、ここではいあーんをしてあげたらいいと思います)

(えっ!? で、でも……)

(積極的ですよ、積極的っ)

(それなら……)


 先輩は折れんばかりにプラスチックのスプーンを握りしめて「はいあーんです!!」と言った。


「あむ……ん…………美味しいわ、ありがとう先輩」

「ど、どういたしまして!」


 断らないということは悪く思っていないと捉えてもおかしくはないだろう。

 だからアイスを食べた後もいろいろフォローして回ることにした。

 楽しかった、誰かのために動けるということが。

 嬉しかった、菫が楽しそうにしていることが。

 なので私は「お母さんに呼ばれたから帰るね!」と言って適度なところで離脱する。

 いたくなかったわけではない、先輩の邪魔をしたくなかったのだ。

 商業施設を出て道を歩いていく。

 すると偶然にも瀧澤さんを発見して近づいた。


「瀧澤さんっ」

「お、すぐに泣く大西じゃん」

「そ、そう言わないでよ……なにしてたの?」

「ただの散歩だよ、帰るところだし一緒に帰ろ」

「うん、帰ろ!」


 学校近くまで無言で歩いて学校を超えた後、彼女が言った。


「いーの? 藤原取られちゃうよ?」

「あ、見てたの? 大丈夫だよ、菫が楽しければそれが1番いいから」

「んなこと言ってるとひとりになっちゃうよ」

「それでも穂ちゃんが――」

「分からないでしょ、彼女だって人気者なんだから」

「あはは、それでも応援するだけだよ。協力だってしちゃうよ?」


 大切なお友達に大好きな人ができたなら、できるならなんでもするつもりだ。

 そりゃそちらの人たちばかりを優先されたら寂しいけど、なによりもの願いはふたりが幸せになること。

 となれば、ある程度のところで妥協をしておけばいいだろう。


「分からないね、キス求められてさせちゃうくらいなのに」

「あはは、それとこれとはべつだよ」


 靴紐が解けたのでしゃがんで結ぶと、私の前に彼女が立った。

「どうしたの?」

「……あんた本当にひとりになっても大丈夫なの?」

「ひとりって言っても仲良くしてくれるよ」


 そこまで情が薄い女の子たちじゃない。

 ありがとうと言って立ち上がった。


「……あたしはてっきり、藤原が好きだと思っていたけどね」

「どうしてそう思うの?」

「どうして? そうだね……信頼しているように見えたから、かな。あんたはあいつの幸せを願っていて、藤原もまたあんたの幸せを願っている、これって両思いだと思うけどね」

「うーん、どうなんだろうね、分からないんだよね」


 あれからキスもしてないしお友達の域を超えることも全然ないわけだから分からない。


「私が好きなのは晴君かな」

「は……は?」

「冗談だけど、飯島詩羽さんの弟なんだよ。可愛くて仕方なくてさー!」

「そんなショタの話はいーの、あんた強がってるの? 大切な女に新しい女が近づいたんだよ?」

「いやー先輩も可愛らしいし好きみたいだから応援するつもりだけど」

「はぁ、後悔してもしらないからね、じゃーね」

「あ、ばいばい!」


 後悔なんかしないよ。

 家に帰って数時間したら穂ちゃんが帰宅した。

 菫が帰ってくる気配が感じられないので今日はきちんと夜ご飯を作ることにする。


「杏ー今日ご飯なに?」

「カレーを作ります!」

「おお! さきにお風呂に入ってくるねー」

「はーい!」


 人参の皮を剥いて切って、じゃがいもも同じく剥いて切って、玉ねぎも――切って、お肉と一緒に炒めていく。

 ある程度焼けたらお水を入れて沸騰するまで待つ。

 ちょうどいいのでテスト勉強をしていたらあっという間に沸騰したので、今度は蓋を開けて20分くらいグツグツ煮込む、と。

 煮込んだら一旦火を止めてルーを投入、きちんと溶かしてまた更に弱火でやれば――


「完成だあ!」


 市販のルーさえ買っておけば誰でもミスらない神料理!

 余ってしまったとしても翌日にも美味しく食べられるというスペックの高さがそこにある。


「いただきます!」

「いただきまーす!」


 うん、美味しいっ。

 だけど……19時超えているのに菫が帰ってこない。

 ソワソワして落ち着かなくて、それでも美味しくてカレーを全部食べて。

 こびりつかないようすぐにお皿を洗った。

 私もお風呂に入って20時30分を超えた頃、やって帰ってきたみたいで穂ちゃんが声が聞こえてくる。


「杏っ」

「え……、ど、どうして怒っていらっしゃるんですか?」


 来てくれたかと思ったら厳しい表情及び雰囲気。


「勝手に途中で帰るんじゃないわよ!」

「ご、ごめん! で、でも、菫も許可してくれたじゃん」

「それは……入るわ」

「うん」


 すぐに入ってきて洗ってから湯船に浸かってきた。


「楽しかった?」

「ええ、古川先輩本当に可愛らしく笑うものだから」

「なら良かったじゃん! 私も先輩の笑顔好きだし、菫が笑っているの見ると嬉しいよ」

「……まあ、先輩は悪くないし……意外と好きかもしれないわね」

「うん、でもなーあんまり遅くなられたら寂しいから、せめて遅くなるなら連絡してね。お風呂出るよ、テスト勉強しなくちゃいけないし」


 前と違って引き止めることもしない。

 それでいい、彼女がしたいことをしてほしいと思う。

 服を着てリビングに戻ると穂ちゃんがお腹をだしてぐーぐーと寝ていた。

 一応毛布をかけてあげて、私もその横に寝転ぶ。

 元々豆電球なので眩しいということもない。

 あ……動いたから眠くなってきちゃった。

 夏だしここで寝ても問題ないよね。

いいのかねえ、先輩と菫が仲良くなってさ。

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