瞳忘れないで ~うれし涙は成分的にも『あまい』~
瓦礫の中、私は呆然と燃えるそれを眺めていました。
鼻がつんとして、喉が痛くて。ひざは身体を支えられなくて。
「紺野さん」「なんだい。美夏」
「私、やっぱり嫌な子ですよね。最後はこんな」傷だらけの手を見ます。
痛みのあまり木刀に張り付いた手は血豆がつぶれたのか動きません。
「そうは思わないけど? どこが?」え。
「ぼくは美夏を嫌いとは言わないけど」ぼけっとしたいつもの笑顔が。
瓦礫の中、機械だか生物だかわからない燃え盛るモノの中央で。
「ごめん。美香。君の言葉。届いた」あ。その。
彼は力なく笑います。
「ちょっと、立てなくて。いいかな」ふ。ふふふ。
私は上半身裸の彼に血豆のつぶれた手を差し伸べて。
目が暖かいです。いけませんね。この顔はたぶんブスの顔です。大魔神の顔より見せたくないと思います。
私は、子供のように彼の胸もとでわんわんと泣いていました。
すっと掌が私を抱きます。甘い声が私の耳に届きます。
「美夏ちゃん。痛いの? 悲しいの? 涙が出ているよ」
そのとき、私の理性は吹っ飛んで、さらに大声で泣いて。
「涙って言うのは、うれしいときにも出るんです!」
私の名前は夢野美夏。
「本当に、本当に」
私はピチピチの新人類。
私の好きになった人は。
「あなたは何も知らないんだから?!」
「不思議だね。君の今の涙は暖かくて甘い」
何も知らない変わり者。宇宙人なんです。
だから、だから私は。
「もう、何処にもいかないって約束して!」
この人を守ってあげたいと思うのです。
私の名前は夢野美夏。
今時のピチピチの新人類。
昔ながらの守られる女の子なんて。いやだもの。
私は全ての事からあなたを守ってあげたい。
あなたと共に歩みたい。だから。
「一緒にいてくれるかい」「それ、私が言いたかったのに!?」
ずっと。一緒にいたいと思うのです。死が二人を分かつとも。
~ かふぇ&るんばっ♪1980~ お し ま い ♪




