1.端から階段落ち
初投稿です。よろしくお願いします。
この春、高校に入学したばかりの公一は自分が何故この場にいなければならないのか理解できなかった。
高校に入って最初の日曜日だというのに同中の赤野に朝から呼び出されたのだ。
赤野とは中学時代、仲が良かった訳でもなく、寧ろ、嫌な印象しかない。その赤野に日曜日の朝から光山神社に呼び出されたのだから、憂鬱になるのも当然だ。
光山神社は公一が住む光山市の北側に位置する小高い丘に建つ神社で、丘には頂上の光山神社境内以外には高木が育たず、光山七不思議の一つとされている。そんな訳で光山神社に続く石段は見晴らしも良くデートスポットにもなっているくらいだ。
その光山神社に呼び出したのが赤野なのだから、まさかデートって訳でもないよな…と、低く重たい灰色の曇天を見上げながら、石段を登り、境内に入るとそこで待ってたのは4人の中学時代の同級生だった。
一人はここに呼び出した赤野大介本人。そのとなりに山本武志…赤野と山本は同じ私立高校に進学している…が立ち、盛んに女子二人に話し掛けている。女子二人は北田由佳さんと皆川綾子さんだ。北田さんと皆川さんは光山北高校に進学している。因みに光山北は女子高だ。
「遅くなってごめん」と遅れたことを詫びなから、赤野達に近づくと赤野はチッと舌打ちしつつ、チラッと視線を少し寄越したのち、皆川さんに向き直り、
「でさ~、やっぱ高校に入ったら、勉強も大切だけど、部活に打ち込みたい訳よ。剣の道。剣道ね。剣道はいいよ。まさに真剣勝負!!竹刀だけどさ。綾子ちゃん、剣道の試合見たことある?細心の駆け引きと一瞬で決まる勝負。見てても楽しいと思うよ。5月になったら、練習試合があるから、応援に来てよ。綾子ちゃんなら大歓迎だなぁ。綾子ちゃんが来てくれたら、超頑張れちゃうからさぁ…」
で、冒頭に戻る訳だが、赤野が皆川さんを口説こうとしているのは分かる。分かるが何故、その現場に立ち会わされているのかが分からない。
話の内容から、そう言えば、赤野は剣道のスポーツ推薦で武州館高校に入ったことに思いあたると、赤野の話の切れ目を待っていたように皆川さんが、
「武藤くん、久し振りだね、テカ高はどう?」と話し掛けてきた。テカ高とは公一が通っている光山高校の通称だ。因みに光山高校は県下有数の進学校として認知されている。
「久し振りだね。来週には実力テストがあって色々と大変そうだよ。…ところで赤野君、今日はどうしたの?」
皆川さんに応じつつ、話の腰を折られたとあからさまに不満顔の赤野に今日、呼び出された理由を尋ねた。
「おう。実は5月の連休明けの日曜日にこの5人でランドに遊びに行くことになったんだけど、行けるか?」
赤野くん、君のセリフはおかしいよ。何が"実は"なの?行くことになったんだけど、行けるかって何語なの?と心の中で毒づきつつ、
「ちょっと無理そうかなぁ。遊園地とかだったら、5人で行くより4人でいった方がいいんじゃない?乗り物とかにも乗りやすそう…」
「武藤もそう思うか!?」
こんな面子で遊園地なんて冗談じゃないと思い、速攻、断りを入れようとしたら、被せられたよ…。
「いや、俺も武藤は無理なんじゃないかなぁと思ったんだよ。やっぱ、この4人で行こうぜ!!」
「ちょっと待ってよ。赤野君。ちゃんとお話ししてから決めるって約束じゃない?」ちょっと不服顔で頬を膨らませつつ皆川さんが言う。
「あぁ、そうだったな。ファミレスにでも入ってゆっくり話そう。」
…、今、長い石段を登ってたどり着いたばかりなんですけど。まだついて5分も経ってないんですけど。何で最初からファミレス集合にしないんですか?
酷い仕打ちを嘆いても始まらない。仕方なく赤野、山本に続いて石段を下り始める。自分の後ろに北田さんと皆川さんが手を繋ぎながら続く。ホントにこの二人は仲がいいよなぁ。中学の時からべったりだし。高校に入って、北田さんも皆川さんも雰囲気があか抜けたよな。やっぱ女の子は高校に入ると変わるんだなぁ…などと考えていると、灰色の空からポツポツと雨が落ちだしてきた。
降りだした雨はあっという間に石段を黒く染めると激しさを増してきた。
「うひゃ~」と先頭を行く赤野が奇声を上げて早足になる。
雨足が強くなるにつれて、石段を下りる足も速くなり、駆け足に近づいた時、後ろから
「きゃっ」という可愛い悲鳴が聞こえた。
足を止めて、体を捻って振り向くと、北田さんと皆川さんが抱き合うようにして石段を滑り落ちてきた。
この急な長い石段をこれ以上滑り落ちたら、危ない、止めなくちゃと思う間もなく見事にスライディングタックルのように足元掬われ、前を行く赤野と山本に3人一塊になって突っ込んで行く。
あぁ、これヤバいなぁと思いながら、続く痛みを恐れていたけど、痛みを感じる前に意識を手放した。
お読み下さいまして、ありがとうございました。登場人物の説明回で終わってしまいました(^^;
すみません。




