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第二百十話 まにあっくなふんどしぱんつ③

控え室は汗と女の匂いがぷんぷんしていた。

おまけにお尻を出しているからすごくエロい。

もし、ここに男子がいたら狼に変身していただろう。

それぐらい汗まみれのふんどし姿は強烈だった。


「いや~ん、超エロい」


同性の私も興奮するぐらいエッチだ。

プリプリと揺れるお尻が艶めかしくて今すぐにでも食べてしまいたい。

きっとモチモチしていて食べごたえがあるお尻だろう。


「何だかエッチな気分になって来ちゃったわ。お茶でも飲んで冷静になろう」


私は手前にあった控え室へ入って行く。

すると、控え室で休んでいたルイミン達と目が合った。


「あっ、ルイミン」

「ゲッ」


ルイミン達は私と目が合うとすぐに視線を逸らす。

そして気まずいような顔をして黙り込んでしまった。


「久しぶりの再会なのに歓迎してくれないの」

「……」

「わかった。久しぶり過ぎるからなんて言えばいいのかわからないのね」

「そうだよ」

「もう、ルイミンったら。私とルイミンの仲じゃない。遠慮は無用よ」

「……」


私がご機嫌でテレキネシスでルイミンの肩を叩こうとすると逸らされた。


「なに?これも受け付けないの」

「別に」

「しばらく見ていない間に変わったのね」

「そうだよ」


ルイミンは私の言葉にぶっらぼうにボソリと呟く。


明らかにいつものルイミンとは反応が違う。

いつもだったらノリノリでハイタッチとかしてくれる。

きっと私が長い間いなかったから寂しくて拗ねているのだろう。


「まあ、いいわ。せっかくの再会だから乾杯しよう」

「やめとく」

「つれないな~。はい、コップを持って」

「……」


私は強引にルイミン達にお茶の入ったコップを持たせる。

そして自ら乾杯の音頭をとってコップを合わせた。


「ぷはーっ、久しぶりの再会のお茶は美味しいな」

「別に」

「もう、せっかくお祭りに来たんでしょ。もっと盛り上がってよ」

「そんな気分じゃない」


ルイミン達も法被にさらしを巻いてふんどし姿でいるがテンションが低い。

まるで精気が抜けた人間のようで半分死んだような顔をしていた。


「ちょっと立ってみてよ」

「やだ」

「私にお祭りの衣裳を見せてちょうだい」

「やだよ」

「何を恥ずかしがっているのよ。同じ女子同士でしょ」

「それでも嫌だ」


ルイミンは椅子に腰かけたまま頑どして動こうとしない。


「まあ、はじめてふんどしを締めたようだから恥ずかしいのもわかるけどね」


きっと立ち上がるとお尻が丸見えになるから恥ずかしいのだろう。


「それより、ルイミン達はどこで踊っていたの。踊りの行列にはいなかったようだけど」

「答えたくない」

「わかった。おみこしを担いでいたんでしょ。法被の肩のところにしわができているし」

「だったら」

「おみこしってお祭りの主役なのよね。それを担げるだなんてラッキーよ」

「そう」


私がノリノリで話しかけてもルイミン達は気のない返事ばかりする。

恐らくおみこしを担いで疲れているからだろう。


「この後はもちろん盆踊りでしょ。いっしょに踊らない?」

「踊りたくない」

「あっ、もしかして。私が盆踊りを踊れないと思っているでしょ」

「……」

「チッチッチ。こう見えても盆踊りは得意なのよ。今はお尻を振ることしかできないけど」

「そう」


地域のお祭りには毎回参加していたから盆踊りは得意だ。

あっちの世界にいた頃は推し活部のみんなと独自の踊りを編み出していた。

ライブでも使えるように盆踊りをアレンジして楽しんでいたぐらいだ。

友達からは”盆踊りのマコちゃん”と呼ばれるほど盆踊りに長けていたのだ。


「なによ、そのリアクション。よっぽど疲れているのね」

「そうだよ」

「いいわ、私、その辺を散策してくるから」

「……」


そう言ってルイミン達を残して控え室から出て行く。

そして廊下で休んでいたふんどし女子達のお尻を見つめた。


「ふんどしってよく見るとぱんつみたいだよね。もしかしてふんどしもぱんつにカウントされるのかしら」


だとしたら大量のふんどしぱんつをゲットできる。

ここにいる女子達はざっと見て100人はいるからだ。

残りのぱんつは33枚だからここでぱんつを狩れれば100枚になる。

ただ、ちょめジイのチェックが厳しいから大量にぱんつを狩った方がいいだろう。


「この機会を逃すことはないわよね。せっかくだからふんどし狩りをしよう」


私は久しぶりにちょめリコ棒を出してふんどしに狙いをつける。

そして呼吸を整えてから”お尻の呼吸”で一気にふんどしを狩った。


「奪取!」


私が駆け抜けたところにいた女子のふんどしがなくなる。

それは風が駆け抜けるような鮮やかさでふんどしだけ盗ってみせた。


「私にかかればこんなもんよね。一気に7枚も手に入れちゃったわ」


ちょめリコしたふんどしぱんつはちょめリコ棒の中に吸い込まれて行った。


ただ、ふんどしがなくなった女子達は恥ずかしそうにその場にしゃがみ込む。

立っていると恥ずかしいところが丸見えになってしまうからだ。

そして辺りをキョロキョロ見回しながらなくなったふんどしを探していた。


「騒ぎが大きくなる前に一気にふんどしを狩った方がいいわね」


私は再びちょめリコ棒を構えて呼吸を整える。

そして”お尻の呼吸”で女子達のふんどしを片っ端から狩っていった。


ちょめリコ。


ちょめリコ。


ちょめリコ。


「決まった……な~んちゃって」


ひとりカッコつけて決めポーズをとってからおどける。

廊下にいた女子達のふんどしは全て狩ることができた。

おかげで30枚の”ふんどしぱんつ”を手に入れられた。


ただ、廊下にいた全ての女子を対象にしたのでちょっとした騒ぎになる。

急にふんどしがなくなったから女子達は驚きと恥ずかしさを共存させていた。


「ちょっと何なのよ」

「バスタオルをちょうだい」

「いや~ん、見えちゃう」


すると、控え室で休んでいた女子達が廊下に出て来た。

そして恥ずかしそうな顔をしてしゃがんでいる女子達の姿を見て慌ててバスタオルを持って来る。

ふんどしを盗られた女子達は下半身にバスタオルを巻いて恥ずかしいところを隠した。


「ふんどしの締め方が緩かったんじゃない」

「だったらふんどしが落ちているはずでしょ」

「誰かが持って行ったとか」

「誰も見ていないけど」


女子達は何でふんどしがなくなったのか議論をはじめる。

その様子を遠くから見ていたルイミン達は私に視線を向けた。


「これは仕事なのよ。そんな目で見ないで」


蔑むような冷たい視線がいやがおうなく私の心に突き刺さる。

楽しいお祭りなのに水を差しているのは私の方だと言いたいようだ。


「私は悪くない。そこにふんどしがあるのがいけないのよ」


私だって目の前にふんどしがなかったらふんどしを盗ることはしない。

ただ、目の前にあったふんどしは私に奪われたいと欲していた。

だから、私は仕方なく”ふんどしぱんつ”を狩ったのだ。

今頃、ちょめジイのところに大量の”ふんどしぱんつ”が届いていることだろう。


すると、誰かの叫び声が聞こえたかと思ったら私の頭が頭一つ分沈んだ。


「いた~ぃ。ちょっと何なのよ」

「”ちょっと何なのよ”じゃないわよ。楽しいお祭りなのよ、邪魔をしないで」

「ゲッ、アーヤ」

「今頃、気づいたの」

「よりによって嫌なやつと出会っちゃったわ」

「それはこっちのセリフよ。何で戻って来たのよ」

「別にいいじゃん。アーヤの家に遊びに来たんじゃないんだから」

「ここはマコが来ていいところじゃないの。帰りなさい」


何を根拠にそんな乱暴なことを言うのかわからないが従うつもりはない。

王都だってお祭りだってアーヤのものじゃないのだから。


「それならアーヤが帰ればいいでしょ」

「それはできないわ」

「アーヤにお祭りなんて似合わないわよ」

「それを言うならマコもでしょ」

「私は昔から地域のお祭りには参加して来たの。だから、このお祭りにも参加するの」

「ふ~ん、マコ、このお祭りが好きなんだ」

「大好きよ。お祭りは楽しいしね」

「なら、ルールは守りなさい。面倒事は起こさないでよね」


何でアーヤが仕切っているのかわからないが迷惑をかけるつもりはない。

私はただ純粋にお祭りを楽しみたいだけだ。

”ふんどしぱんつ”を狩ったのはあくまでついでだ。


「プロデューサー、ぱんつを履いていいですか」

「ダメよ。これから盆踊りがはじまるのよ。ふんどしでないとダメ」

「なら、代わりのふんどしを持って来てください」

「わかったわ、待っていなさい」


そう言うとアーヤは来た道を戻って行った。


「あなた達、ふんどしを締めているのはアーヤに言われたからなの」

「そうです。プロデューサーの意向ですから」

「まったく。これじゃあ、ただのセクハラね」

「けど、ふんどしはお祭りの正装らしいですから」

「まあね。ふんどしがなければお祭りの雰囲気が出ないわ」


ただ、ふんどしを締めているのはもっぱら男子だけだ。

女子が締めるとセクハラになるから女子はふんどしを締めない。

それがあっちの世界のルールだからこっちの世界もそうあるべきだ。

現に街を練り歩いていたときはスケベなおじさんのエッチな目にさらされていたのだから。


「アーヤもけっこうキツイことをするのね」

「プロデューサーの言うことは絶対だから従わないといけないんです」

「それはパワハラを越えて独裁政権ね。嫌ならアーヤから離れたら」

「それはできません。プロデューサーがいないと何もできませんから」


もう、これはアーヤ教の教祖と信者の関係だ。

絶対的な力を見せつけて信者を従わせるなんて悪者がすることだ。

もともとべんじょ虫の親玉だから悪者が似合っている。


「この子達はもう手遅れなのね。すっかりアーヤ教に染まっているわ」


そのうち勧誘をはじめるかもしれない。

そうなったら王都中がアーヤ教の信者になってしまう。

とりわけべんじょ虫の拡散力はゴキブリ並みだから。


私が憐れな目で女子達を見つめているとルイミン達の視線が刺さる。


「何よ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃん」

「別に」

「だったら、そんな目で私を見ないで」

「リリナちゃん、行こう」

「素直にそうしてればいいのよ」


まったくアーヤのせいでルイミン達との関係もギクシャクしてしまった。

本当なら久しぶりに再会したのだから喜びを分かち合っていた。

それが氷に閉ざされた城のように冷たい沈黙だけの再会になってしまった。


そこへ大量のふんどしを持って来たアーヤが到着した。


「さあ、ふんどしを締め直すわよ。並んで」

「はい」

「アーヤ自らふんどしを締めているなんてね。驚きだわ」

「これもプロデューサーの仕事なのよ」

「AVのプロデューサーのくせに」

「言っていなさい」


私がバカにしてもアーヤはふんどしを締めることに夢中だ。

まあ、30人のふんどしを締め直さないといけないから大変なことはわかるが。


「それにしてもアーヤもあくどいわよね」

「何がよ」

「嫌がっている女子達にふんどしを締めさせるんだから」

「仕方ないでしょ。お祭りにはふんどしがつきものなのよ」

「だからと言って女子達にふんどしを締めなくてもいいじゃない」

「あいにくうちの事務所は女子しかいないからね」


それが理由だったとしてもアーヤのやっていることはセクハラだ。

嫌がっている女子達に強引にふんどしを締めているのだから。

恥かしい思いをするのは女子達なのだ。

だから、アーヤを訴えた方がいいと思う。

自分達の名誉を回復するために今こそ立ち上がるべきだ。


「それじゃあ、カワイイ女子達が恥ずかしい思いをするだけね」

「これも通過儀礼よ。私の事務所に所属しているならこれくらい乗り越えてもらわないと」

「何でそんなにお祭りに力を入れているのよ」

「だって私が主催しているお祭りだからよ」

「えーっ!アーヤのお祭りなの!」

「驚いた?私ぐらいのレベルになるとお祭りもできるのよ」


開いた口が塞がらないとはこう言うことなのだろう。

私は口をあんぐり開けたまま驚きを隠せずにいた。

まさか、アーヤがお祭りを主催できるほど大きくなっていたとは予想もしていなかったからだ。


「マコには一生無理だけどね」

「バカにしないでよ。私だってお祭りぐらい主催できるわ」

「どうせ学際レベルでしょ」

「そんなことない。王都を巻き込むぐらい大きなお祭りを開催できるわ」

「口では何とでも言えるわ。悔しかったらお祭りを開催してみなさい」

「くぅ……」


ぐうの音も出ない。

アーヤの言う言葉通りだからだ。

今の私のレベルだったら学際止まりだ。

アーヤのように王都を巻き込んでなんてできない。

それが自分でもわかっているからムカつくのだ。


「さあ、終わったわ。あと10分で盆踊りだから準備しておいてね」

「「はい、プロデューサー」」

「じゃあ、私は一足先にスポンサーに挨拶をしてくるわ」

「くぅ、アーヤのくせに」


一丁前にスポンサーに挨拶するなんて見せびらかしでしかない。

そう言えば私が悔しがるからあえて言っているのだ。

そこらへんはアーヤの悪い癖が大いに出ている。


「ルイミン、リリナ、エミリ。帰るわよ」

「……」

「こんなところにいたら”べんじょ虫”になっちゃうわ」

「私達はいいよ」

「えっ?今、なんて言ったの?」

「だから、私達はいいよ。お祭りに参加するから」

「いつからルイミン達はアーヤ教に入団したの」

「1ヶ月前からだよ」


予想もしていなかったルイミンの言葉に一瞬耳を疑う。

聞き間違いでなかったとしたら”1ヶ月前からアーヤ教に入団した”ことになる。

それは何を意味しているのか私は理解できなかった。


「ルイミンちゃん、伝えた方がいいんじゃないんですか」

「いずれ話さなければなりませんし、早い方がいいですよ」

「リリナちゃん、エミリ」


ルイミン達はそんなことを話しながら考え込んでいる。

そして意見がまとまると徐に口を開いた。


「ちょめ助に聞いてほしいことがある」

「何よ、改まって」

「私達、”ファニ☆プラ”を解散したんだ」

「えっ?今なんて?」

「だから、”ファニ☆プラ”を解散したんだよ」

「何で?」


ルイミンの言っている意味がわからない。

”ファニ☆プラ”として活動して来たのに解散するなんて。

ようやくエミリを加えてパワーアップしたのに理解できない。


「私達、ちょめ助のやり方についていけなくなったんだ」

「私が原因?」

「ちょめ助、お金儲けのことばかり考えて”にらせんべい”の売り子しかやらしてくれないから嫌気がさしたんだ」

「それは仕方ないでしょ。お金がないと路上ライブのできないのよ」

「だからって、毎日毎日”にらせんべい”の売り子だけだったじゃん」

「それは」


それは否定しない。

このところ”にらせんべい”のことばかり考えていたのは事実だ。

でもそれは”ファニ☆プラ”の活動費を稼ぐための手段なのだ。


「私達はライブをやりたいんだ」

「なら、別に”ファニ☆プラ”を解散することないでしょ。私とは離れて活動も続けられるじゃない」

「”ファニ☆プラ”でいる限り、私達はちょめ助チルドレンでしかないのよ」

「そんなに私が嫌いなの」

「好き嫌いの問題じゃないよ。ついていけなくなっただけ」


一番キツイ言葉だ。

好き嫌いだけなら軽く受け止められる。

だけど、私のやり方について行けないのすごくショックだ。

私の何が悪かったのか今の私には理解できない。


「で、”ファニ☆プラ”を解散して何になるわけ」

「”ラズベリー”だよ」

「”ラズベリー”?」

「アーヤがプロデュースしているアイドルグループになったんだよ」

「今、何て……アーヤがプロデュースしているって聞こえたけど」

「私達はアーヤのプロデュースのもと”ラズベリー”としてデビューしたんだ」


その告白に私は言葉を失う。

あまりにショック過ぎてため息すら出て来ない。

ルイミン達が私を捨ててアーヤを取ったなんて信じたくない。

これまで積み重ねて来た日々を簡単に捨てられるだなんて。


「私達は”ラズベリー”として活動して行くからちょめ助とはお別れだよ」

「そんな……」

「今までありがとうね」

「ちょめ助くんがいたから、ここまで来れたんです。とても感謝しています」

「これから”ラズベリー”として活動して行くから影から見守っていてください」


最後にルイミン達は感謝の言葉を伝えて来るが私の耳には届かない。

ショックの方が大き過ぎて感謝されていることなど微塵も感じなかった。


「じゃあ、私達、行くから」

「……って」

「?」

「……ま……って」

「行くよ」

「待ちなさい!こんなの裏切り行為じゃない!」


私は心の底から沸々と沸いて来た怒りを言葉に変えた。


「何が感謝しているよ。そんなの裏切ったらチャラになるのよ」

「ちょめ助……」

「アーヤのもとでデビューをした。ちゃんちゃらおかしいわ。アーヤに何ができるっていうのよ」

「……」

「私は許さない!絶対に許さないから!」


私は怒りに任せて言葉を吐きつけて控え室を出て行った。

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