13夜会準備
そう決まったら、早速、準備しなくちゃって思ったのに、昨日はカイウスに捕まったままだった。
寮か実家に帰りたかったのに。
名目上、客間の用意は出来ているらしいが、結局泊まったのはカイウスの部屋。
ラデン家の夕食に参加した後、カイウスの部屋で長く話しをした。
こんなに話が出来るのに、女性と話すのが苦手って何よ?って思ったけれど。
要約すると、彼曰く、元々、姉妹枠だった私は話すのに抵抗感が無く。
けれども、愛だの恋だの甘い事を言うのは苦手だと。愛情表現を求めるのは勘弁してくれとの事だった。
ずるいなと思う。
言葉にしないと伝わらない事もあるのに。
でも、一言、
「お前以外に女は要らない。」
そう、言われたら、信じるしかない。
普通の令嬢ではなく、私がいいと言ってもらえたのは、私らしくあればいいと言う事。
彼は私が騎士しか出来ないと思っている。
確かに、令嬢らしく横に立つ事は出来ない。
そんなの、私じゃない。
彼の横には、守られる令嬢ではなく、騎士として並び立つのだ。
翌日、私は夜会用のドレスの注文に行った。
夜会は、女性はドレスでと暗黙の了解で決まっている。ならば。
騎士団の白い礼服にドレスを合わせればいい。
白地に金糸の刺繍紋様が入った騎士団礼服。その下にドレスを着て、ドレスは大腿部までスリットを入れた。
ハッキリ言って、ドレスはとってつけたような飾りだ。騎士服にスカートを着用しているようにしか見えないだろう。緊急時には引っ張って引きちぎってやる、ぐらいの勢いだから、生地も薄い。
ただ、色は裾に下りていくほど白から緋色に色濃くなるような布を選び、それに騎士団で使用している金の蔦紋様を入れるように注文した。
自己満足だとはわかっている。でも、決めたんだ。
私らしく。
正直、久しぶりの夜会とか、考えるだけで胃がウッとつまるような感じがする。
落ち着かない。気分が高揚して、思考はまとまらない。
ハッタリでもいい。
本当は、自分がまだまだだってよくわかってる。
自分はカイウスの隣に凛と並び立つことができるだろうか。
他人から見て、どう見えるか。
主要夜会はわずか1週間後だった。
さすがに、騎士団寮には宝石類を置いていないため、前日家に戻り、夜会の夕方にカイウスが迎えに来る。
夜会が久しぶりのため、騎士団勤務は交代してもらった。
白と緋色のドレスの上に白い騎士服を纏い、帯剣する。
夜会においても、騎士団だけは帯剣を許される。それが、防衛の一環にもなるからだ。
通常は騎士団員の令嬢でもドレスを着用し、動きやすいドレスに隠すように帯剣する。
私は、剣を見せようと思った。
あえて、見せる。騎士団の仲間でもあるから。
カイウスから、ドレスを贈ろうと言われたが、断った。
その代わりに、お願いしたのは、カイウスの髪色の赤い魔石のピアス。
朝から珍しく湯浴みをメイドに手伝ってもらって、パサついた髪が柔らかくなるよう、薬剤をつけてもらった。花の香水も苦手だから、柑橘の香りのついた湯に入ることで、勘弁してもらおう。
母や姉達がくれた化粧品のお陰で、だいぶ日焼けはよくなったし、日に焼けてできたシミも目立たなくなってきた。
メイドの手にかかれば、シミなんて全然無いように見えるから不思議だ。これって詐欺だよな。
化粧はメイドにお任せだ。やたら口紅が赤くて、自分に似合っているのか解らなくなる。
髪を結ってもらい、左だけ一房、髪を垂らして巻いてもらった。結い上げた髪には余計な飾りは付けない。頭に花を飾ったりするのは自分じゃない。
最後に騎士服の上着を着用すると、上着に凹凸が無いため、思ったより寸胴に見えた。これは無いな。急遽、メイドに腰の部分を詰めてもらって、身体のラインを出す。糸をほどけばすぐ戻せるようにしてもらった。
ドレスのスリットから見える騎士服ズボンとの色合いも特にはおかしくはなさそうだ。
帯剣する剣の鞘に、緋色の新しい飾り紐をつける。
赤を多用するあたり、私はやはり、社交に出るのは不安なんだろう。
カイウスの色。彼は一体、何て言うだろう。
「お嬢様。本当に、よろしいのですか?」
メイドが心配そうに尋ねてくる。そうだろう、姉たちは普通の令嬢スタイル。私みたいなのは例外だから、戸惑うのも無理はない。
私だって、内心、カイウスと他の貴族が、私を見て何て言うのかちょっとどころか、かなり心配だから。
ああ。気分が落ち着かない。これなら、騎士団で野盗の討伐にでも行く方が、精神的にはよっぽど楽だ。
約束の時間より少し早く、カイウスが来る。
エントランスで私を見たカイウスが、目を見張る。
見られただけで、心臓がドキドキする。
「参ったなあ。お前、それでいいのか?」
「あら、気に入りませんでした?普通のドレスは胸が出すぎとおっしゃったではありませんか。礼服ですから、全く出しておりませんよ。」
どういう意味だろう。参ったなんて。でも、カイウスは怒ってない。
「ああ、まあ。でも、お前の礼服そんなだったか?」
「腰をドレスに合わせて細く詰めてもらっただけですが。」
「それだけ?」
「ええ。」
「・・・似合ってるよ。」
「ありがとうございます。」
照れてるのか。彼の言葉が少ないのは。
「行くか。」
「はい。」
ふっと、笑みがこぼれる。
とりあえず、合格点は頂けたようだ。
カイウスのエスコートで馬車に乗り込む。
さあ。夜会の始まりだ。
誤字報告、ありがとうございました。
スマホで正しい漢字を選んだつもりが、選択ミスってるっぽいです。
スマホで書いてるので、昨日、久しぶりにPCで開いて見て、行間の空きすぎ感と、表示される文字の大きさに驚きました。
スマホで見るのとやはり、印象が違いますね。
iPhone入力の為、読もうで見ると、1マス目のスペースが無いように見えますがお許しください。




