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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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体験会と芸は身を助けるの意味

食事の後に向かったのはサウラの伯母の城。試食会の前に提示していた要望の場所はここが最適だった様だ。

「いい広さですね。ここで2人は戦ったの?」

「ええ。メッキーと200人程相手に。」

「あの壁の凹みとかすごいな。」

「アタイがあっちの隊長をすっ飛ばした時のだよ主。」

戦いの爪痕が所々に残る。これらが俺へ危害を加えた者に対する報復措置と思うと恐ろしい限りだ。


「今回の大臣の件はすまなんだ。あの者はあの者で妾の事を大切に思い行動して来た末の弱音である事を踏まえ、許して欲しい。」

サウラは自分の部下の失態を頭を下げて謝罪する。

「まあ国の事で弱音を吐きたい気持ちは分かります。それは自分の耐久値を超えてしまった責任感の表れでもありますから。大臣には『自分に負けてたら仲間守れねぇぞ。これを機に根性見せてみろ。』と伝えておいてください。」

「承知したのじゃ。」

「年長者に厳しいっすねぇご主人。」

「まあね。俺より何か出来る時間長かったくせに、あれ出来ん、どうにかしてくれとか甘ったれを受け入れて貰えて当然と思っている態度をしてくるのが腹立つ。老人は労われとか何様だと思う。お前らのしでかした放置やら悪化やらの後始末しながら次世代の事もしなきゃならん俺らを労われやって話。」

若いもんにやってもらわな。何度この無責任発言を浴びせられた事か。

「やっぱり今日は大分キテるんすねご主人。それでも美味しい料理作れるのは流石っすけど‥その状態でここで何するんすか?」

「とりあえず身体を動かしたいんだ。徹底的に。」

「先程の調理でも結構動いていたというのに更に動くのか‥恐ろしい持久力じゃの‥。」

驚くサウラをよそに、イデアである物を生み出す。


「前にメキが見たいって言ってたからまずはコレね。」


生み出したのはヨーヨー。広いスペースを指定したのはこの為でもあったりする。

「えっ?!もしかしてそれがヨーヨー?!見せて貰えるのかやったー!主大好きー!」

「どさくさに紛れて告白してんじゃないですわメッキー!」

「従者が主を好きで何が悪いんだよー。」

ブーブーとメキはブーイング。

「と言っても今日は見せるというよりも練習に近い状態でやらせてもらうよ。」

そう言って当時のレベルを1つ1つ順に只々やるだけの試技が始まった。


ストレス発散には神経の出来上がる時期に楽しんだ物を行うのが効果的という研究がある。18歳辺りで脳が情報を項目毎に脳内で整理して受け取る場所を決めてしまって落ち着く事になるのだが、それまでに覚えた事、特に小学生の時にやったものは強く残る。俺の場合はヨーヨーがその1つ。1つ1つの技に、出来るまで、認定で受かるまで、ライバルと競い合った思い出がある。それらを思い出し、噛み締め、心を落ち着かせる為のプレイは人から見たらつまらない物だろう。


「主ー。なんだか坦々としてて何が楽しいのか分かんないぞ?」

ピンホイールをやり始めた辺りでメキは言ってくる。

「人の練習って見ててもつまんないよな。じゃあやってみるかい?」

「おー!やるー!」

「私も是非やりたいです!」


こうして突発的にヨーヨー講習会が始まった。ヨーヨーは初心者用にオートリターンシステムの物、ストリングスの長さの合わせ方、指に着ける輪っかの作り方、基本的な持ち方を全員に教えていざプレイ。


ガンッ!!

「ヤバッ!床に当てちゃった!」

早速メキが初心者あるあるをやってのけてくれたので、投げてから腕を止めるまでを他のメンバーは意識して投げる。そうすると‥

「痛ッ!!うー‥‥手に返って来てしまいましたわ。」

勢いが足らずに戻って来てしまい手の甲にぶつける人が出ちゃうのよね。

「一朝一夕には出来ない事が理解出来たのう。難しいものじゃ。」

ハルエさんとサウラはヨーヨーの姿勢が安定せず横回転して止まってしまう。

「こうっすかね?」

唯一上手く出来ていたのはチャル。姿勢、回転力共にベストだ。勢いが弱まった所で手のひらを下に向けてオートリターンしてきたヨーヨーをキャッチする。

「おおすごいな。初めてとは思えない。」

「にゃー♪」



(そりゃあ練習してるのずっと見てたっすから‥‥。)



苦戦する中で技を覚えて行く面々。その一つ一つを出来るようになってから技の繋ぎを考え、相手に見られるフリースタイルにまで昇華させて行くのがヨーヨー。こうして身につくのは構成能力、美意識、いざ見せる時に必要な度胸、それを支える為の練習をする事で根性と勤勉性が身につく。これら一般社会で身につけておきたい能力を身につけられ、コミュニティが広がり、笑顔も産む。一石二鳥にも三鳥にもなるのが『芸は身を助ける』の本当の意味なんだと講座や認定の時には教えていた。


「何だか随分と教え慣れていらっしゃるようですね。」

ハルエさんが俺の指導を見て言ってきた。

「まあこういう講座を開いて芸は身を助けるの意味や『出来る』とはなんぞや、『鍛える』とはなんぞやの教育をしていたもんで多少は心得があるという程度ですよ。ヨーヨーに関しては認定の資格まである人だったのでね。」

「やはりカナリは何にでも結びつけて他の者の役に立たせようとする『公人』の鑑なんじゃな。」

サウラも関心している様子だ。メキが翼に引っ掛けてこんがらがってセクシーポーズになる(いやそうはならんやろ)等ハプニングもあったが一通り体験してもらった所で音楽無しだが2Aフリースタイルを披露。改めて初見のメキとサウラはそのフリースタイルの動きに感動して最後のマリオネットという技で笑ってヨーヨーはおしまいになった。


動き足りない。


「という事で今度は戦闘訓練をさせて貰おうかと思う。いつもはチャルに相手をしてもらう所だけどメキも頼んで良いかな?」

「合点承知だぞ主。って‥‥『も』? アタイ1人じゃないのか?」

「チャルと2:1で掛かって来て欲しいんだ。コレを使い慣れて置きたくてね。」

アイテムBOXから取り出したのは例の魔道具が追加された槍。イセ達の先輩に当たる魔道具作りの第一人者であるリューコさんが魔力を込めると増強魔法を付加された腕輪を装着する事が出来るという業物だ。

「出発前に餞別だって渡されたって奴だな。了解だ!」


「他の皆様は見学を。危なそうなら止めてください。」


さ、武器に振り回されるか、上手く振り回せるか‥‥。ヨーヨーの様に振り回せるかな?

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