第17話 決着
足元に拡がるのは石畳。
巨大な蜘蛛が滑るようにリシュ達に接近してきた。
「シールド構え!」
リシュの声に反応し、木製の盾を構えた4体のゴブリンが一歩前進する。
ゴブリン達が構えた己の身長ほどもある盾。
正面からの衝突なら問題なく防げただろう。
だが、グランドスパイダーは盾を構えたゴブリン部隊の直前で大きく上空へと跳び上がり──ダンジョンの天井に届くかという所で、牙の生えた口から液体を吐き出し雨のように降らせた。
「下がれ!」
リシュとサクヤは、同時に下がり液体を避けることに成功する。
だが雨のように降り注いだ液体を、ゴブリンやスライムは避けることができず──。
「「GUgooo」」
ゴブリンは皮膚が爛れたことで悲鳴を上げ、スライムは溶けるように消えていった。
「エリアヒール」
リシュが範囲を対象とした治癒魔法を唱える。
するとゴブリン達の足元が青白い光を放つ。
ゴブリン達のただれた皮膚に、放たれた光が集まりダメージを回復した。
「ゴブリン2体、スライム3体を作成」
リシュはグランドスパイダーの攻撃によって失われた戦力を補給する。
光の柱が生じてゴブリンが出現するも、再びグランドスパイダーが先程の液体──毒液を周囲に降らせる。
「散れ!」
リシュの掛け声と、グランドスパイダーが毒液を降らせるのは、ほぼ同時だった。
重力に引かれながら落ちるグランドスパイダーが降らせる毒液。
スライムは再び全滅し、新しく作成したゴブリン1匹は避けられずに頭から浴びる。
だが、6匹のゴブリンは僅かに毒液を浴びただけだった。
「足に抱きつけ!」
リシュは重力に引かれて落ちるグランドスパイダーに、抱き付くように指示をする。
指示通り6匹のゴブリンは足を強く抱きしめる。
針金のような蟲毛がゴブリン達の体に、深々と突き刺さっており緑色の血液が床へと流れる。
その様子を平然と見つめるリシュと、顔をしかめながらも見続けるサクヤ。
ダンジョン・マスターの能力で作られるモンスターは精巧なプログラムで動くロボットのような物。
だからリシュが作ったゴブリンが上げた悲鳴も、プログラムをなぞっただけの物に過ぎない。
その現実を理解しているからこそリシュは平然としていられる。
当然、サクヤにもその事は知らされてはいるが彼女は割りきれていない。
「スライムを4体作成」
リシュは再びスライムを作成する。
この時、グランドスパイダーは足にゴブリンという重荷が付いている上、足元には液体──溶けて液体なったスライムの残骸に足元が滑り身動きが取れなくなっていた。
「呼吸を止めろ」
作成したスライムに指示を出すと、スライムはグランドスパイダーの元へとゆっくりと近づいていく。
やがて大蜘蛛の頭部を4匹のスライムが包み込み、命の息吹を封じた。




