第18話 迷宮殺しの迷宮主
ダンジョン・マスターは、リシュのような知性のある者であることは少ない。
多くが魔物であり、本能に刻み込まれた情報に従いダンジョンを管理する。
このダンジョンのダンジョン・マスターはグランドスパイダーという大蜘蛛だった。
街から外れ異端の子どもを養っていた教会。
惨劇の元凶であるグランドスパイダーは、教会にいた者を喰らい尽したあと、教会に住み着いた。
月日は経ち、魔神の力を大蜘蛛は受けてダンジョン・マスターとなった。
リシュとサクヤは、グランドスパイダーを倒しダてンジョンの最深部にまで辿り着いた。彼らが今いるのはマスタールームと呼ばれる場所だ。
周囲を囲むのは白い壁。
彼らが普段生活している、リシュのダンジョンとは全く違い生活感という物は存在しない。
もっともリシュのダンジョンが特別であり、本来は生活感のないこのダンジョンの姿こそが当たり前なのだが──。
「…………」
10歳前後の少年(見た目は美少女)のリシュは見上げるように、ダンジョンの壁を見ている。
彼が見上げる壁には緑色の宝石が埋め込まれていた。
「これで終わりなのですね」
「そうだね」
リシュの隣にはサクヤ。
初めてのダンジョン踏破に感慨深げにしてコアを見ている。
「じゃあ終わらせよう」
リシュは、自身の身長よりも長い杖をコアへと向けた。
純白の杖が淡く光り輝くと、その先の空間に青い魔方陣が浮かび上がる。
魔方陣が浮かび上がったのを確認すると、リシュはダンジョン殺しの終わりを告げる詠唱を開始した。
「我は、此の迷宮を踏破せし新たなる支配者。我が力を持ち迷宮の命を喰らわん」
リシュの詠唱が終了すると、ダンジョン・コアは一瞬だけ赤く変わり震えた。
だがすぐさま元の深い緑色へと戻り何事もなかったかのように周囲は静寂へと還る。
これでダンジョン殺しは終了した。
あまりにも呆気ない終わり方ではあるが、得てして物ごとの終わりなどそのような物なのであろう。
「ダンジョンをポイントに変換する」
「えっ」
あまりにも呆気ないと肩透かしを喰らっていたサクヤは、横でリシュが口にした言葉に驚いた。
何故なら、ダンジョン殺し完了後については何も聞いておらず、ダンジョンがリシュの物になる程度にしか思っていなかったからだ。
リシュの言葉を皮きりに、ダンジョンの壁や床が光の粒子へと変換されてゆく。
何かがマズイ。
サクヤの本能が、そう告げるもすでに手遅れなのは明白だった。
もっともサクヤの勘違いであるのだが──。
「リ、リシュちゃん!」
「えっ」
今度はリシュが驚く番だった。
サクヤは、いつも口数少なく彼を呼ぶ時もリシュと呼び捨てにしている。
それなのに今のサクヤは、別人のように人間味がある──化けの皮が剥がれただけなのだが。
リシュが、そのことに驚いていると一層ダンジョンの壁などから発せられる光が強くなり、目を開けていられない程となった。
「ちょっ」
眩い光の中、抱きついたサクヤに対するリシュの中途半端な驚きの声が最期に響いた。
──
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次に目を開いたとき、2人は朽ち果てた教会の前にいた。
ダンジョンをポイントに変換した為、強制的に外へと転移されたためだ。
リシュの行うダンジョン殺し。
完了することで支配権を奪ったダンジョンを、そのまま支配下に置くかポイントに変換するか選択できるのだが、ポイントに変換することで、DPと共に特別なアイテムが手に入れることができる。
ダンジョン内に満ち溢れた強い光に驚いたサクヤ。
彼女は、いつの間にかダンジョンの外にいた。
「お帰……リシュー!」
「……えっ」
外へと転移された2人を発見したティアは、座っていた木の枝から彼らの元へと飛んできたのだが──。
悲鳴にも近いティアの声に目を丸くしたサクヤ。悲鳴を上げたティアを一度見るも、彼女の視線が自分の胸元に向けられていることに気付き、恐る恐る胸元を見た。すると──。
「リシュちゃん!」
サクヤに抱きしめられながら、グッタリとしたリシュ。
彼の首にはサクヤの細腕が深く──キまっていた。




