【第一章:知の侵略】
時は天正九年。
ナガの、オラオラ絶頂期。
天正九年三月、安土城。
ナガの前に、巨大な黒檀の如き男・弥助が控えている。
その傍らには、巡察師ヴァリニャーノ、長い親交のあるルイス・フロイス。
「弥助よ、申せ。其方の故郷から日出ずるこの地まで、海はどこまで続いておる。この地球儀の如く、真に丸きであるか!」
「……ナガ、海ハ果テナシ。多クノ国、多クノ王。日ノ本、ソノナカノ一ツ。小サキ島ナリ」
ナガは不敵に笑い、十兵衛を顧みた。
(バテレンの連中が連れてきたこの黒き男は、なぜか十数年前、あのサカイ社を暴いた夜から、ずっと余の影に張り付いている。この男の存在すらも、奴らの差配か――)
ナガは思考を切り替え、再び眼前の者たちを睨み据えた。
「聞いたか、十兵衛。南蛮のデウスのみならず、天の下には無数の王がおるのだ。して……其の方らバテレンの国では、王の墓はどうなっておったか?」
確認するように尋ねる…
フロイスが恭しく応じる。
「天主の国では、王は石の棺に眠り、その功績を永久に刻みます。エジプトという国には、山のような石の墓があるとか」
ナガの眼光が鋭くなった。
「山のような墓、であったな。堺の南にあったあの巨大な森……あれも、ただの盛り土ではなかったな。」
「もうじきだな…」
ナガはしばらく沈黙し、意を決したかのように 目を見開いた!!
「十兵衛! 余はあれを晩廷どもに突きつけてやるぞ。日の本の『神の種』が、どこから流れてきたものか、この耳で奴等に真意を確かめねば収まりがつかぬわ!」
「もうよかろうぞ!」
光秀は青ざめ、畳に額を擦りつけた。
「ナガ様、なりませぬ! あそこは王城鎮護の禁地とご承知のはず。
怒りにまかせた責め立ては控えるべきがよろしいかと…」
「神罰のみならず、晩廷との絆が断たれまする!」
「神罰だと? 糞を喰らえ!!」
「真実を知るを恐れるは、己が嘘の中に生きておる証拠よ」
ナガは、吐き捨てる。
「余の世の中は証明済みであろう。
先の馬祭り、晩廷どもも騒ぎだったであろう。」
「クク…次は武田じゃ。」
もはや敵なし…
晩廷をも手中に収める…はずだった。
いったい…十数年前に何を探し当てたのか。
これから、晩廷に何を突きつけるのであろうか…?
ナガの運命を大きく変える出来事がじわじわと襲っていったのである…。
それは、日の本の1000年も続く血族の歴史を根幹から覆すような衝撃の発見だった……。
果たして…それは…
そして十数年ほど遡る……。
堺の南、森の奥…
ナガは震えた。それは武者の震えだ!
それは妖しくうっすらと霧に覆われ…
何かを隠すように土が盛られていた……。
ナガ一行は、闇に突入?!
そこには…
長く続いた日の本の黒い歴史が明かされる!?
※次章は、全7章の中でも圧巻のボリュームになってます。
よろしくお願いしますm(_ _)m




