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第2話 サンタの進む道

 サンタは命拾いした。

 天界でサンタを騙した魔人を捕らえたことで、非望因子の存在とナイトメアメーカーの陰謀を知った天使長ミカエルが間一髪のところで駆けつけてくれたからであった。


 ジョン・ウーンの歪な夢の中にダイブしていたドリーム・クラッシャーによって、ジョンの非望は夢の藻屑となって消失し、ジョンを操っていた幻魔人ナイトメアメーカーも、このドリーム・クラッシャーによって撃破された。


 完全消滅一歩手前のサンタを救ったこのドリーム・クラッシャーこそが最高位SS(ダブルエス)ランクの夢幻戦士であった。

 その銀色の髪に鋭い眼光を持つ夢幻戦士は、討伐を終えると眉一つ動かすことなく無言のまま天界へと立ち去って行った。



▽ ▼ ▽ ▼ ▽


「眩しいマッチョのおじさん、助けてくれてサンキューだぜ!」


 サンタは、光輝く天使長ミカエルに礼を言う。


「おじ・・さん・・・、まあ善い! しかし、それがだな……完全に助けてやれた訳ではないのだ」

礼を言われたミカエルが少し気まずそうに答えた。


「はあ? 完全にってどういう意味っすか??」


「それは、だな……この世界でのお前の存在がだな……なんと言うか、半分消えてしまったということなのだ! あの非望因子の攻撃でお前の存在の半分が消失してしまったのだよ」


「えええぇぇー! 何じゃ、そりゃああ」


「-------すまんな」


「いやいや、すまんとかじゃなくて、1mmも意味がわかんないっすよ!? 俺はここにこうして生きているし、今もつまんない会話とかしちゃってるし……どういうことなんすか? もしかして、俺を馬鹿にしちゃってますぅ? 身体がピカピカ光ってるからって、人を馬鹿にしても言い訳じゃあないっすよ、如何なものかと思いますぜー、旦那!」


 何を言っているのかちょっとわからない混乱気味のサンタが毒づく。それを冷静に受け止めたミカエルは答える。


「少し聞きなさい。今のお前は半神としての特異体質ではなくなってしまったのだ。天界人にはその存在が見えているのだが、下界(人間界)ではお前の存在そのものが無となってしまった。つまり、お前の人間の部分の存在が消失してしまったのだ」


「な〜んだ、半分か〜、そういうことかー、まあ半分くらいだったら………って、ダメじゃあないっすか! 俺の稼業は“運び屋”ですよ。仕事にならないじゃあないっすか! 」


 サンタは、自分が半分消えてしまったという事実に仰天するが、同時に天界の天使長に向かってノリツッコミを入れるという暴挙に出た。

 しかしミカエルは、怒ることもなくサンタに謝罪する。


「すまんな! お前を完全に救うことが出来ず、悪いことをしたな」


「眩しいおっさん、同情なんかいらないし金もいらないからさぁ、あっ、金は欲しいけど、なんとかしてくれよぉ! このままじゃあ仕事が出来ないよ。おまんまの食い上げじゃあないかー。お願いしますよ、お代官さま―! どうか、ご慈悲を~」

サンタは水飲み百姓が憑依したかのように取り乱してしまう。


 真面目とマッチョを足して、さらに倍にしたような堅物のミカエルは、その堅物さとは裏腹に慈悲深い天使長でもあった。だからサンタの取り乱す様を見て憐れみモードがMAXになってゆく。


「わかったわかった! それでは私の権限でお前を天界の神殿へ昇天させよう。本来ならば、お前のような半神(神と人間のハーフ)は天界の神殿に入ることは出来ないのだが、私の不手際でこうなったのだから今回は特別だ」


「なんと、天界門(ヘブンズゲート)の中へ入れるのか! 今までは門の中には絶対に入れてくれなかったもんなー。それはありがたい。さすが、オッサンは眩しいだけあって優しいんだなー。俺、泣きそうだよ」


「泣かなくとも善い。あと、オッサンではない!  それでは天界へ上ろうぞ。私の右手を握るのだ」


 ミカエルはそう言って、右手をサンタの前に差し出した。


「.........ええっ! オッサンの手を握るって……心の準備が......」


「他意はない!早くせんか! 私に触れておらんと天界へ入ることは出来んのだぞ!」


 サンタは仕方なく、というか嫌々ミカエルの右手を握った。


 すると、一瞬のうちに二人は天へと昇って行った。


 この夜――

 サンタは確かに“夢を壊す者”の姿を見た。


「……カッケぇよな……俺も、あんな風に……」


 満天の星の下、半分だけ残った彼の存在が静かに光る。

 それは、“運び屋”が“壊し屋”へと変わるための、最初の夜だった。


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