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夢狩りの天使と夢紡ぎの悪魔  作者: 火夢露
第2章 第三勢力の暗躍
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第23話 夢を喰らう者 〜第三勢力の影〜

よせばいいのに、第2章スタートです!

下界(人間界)


「ようやく叶ったのに・・・俺の夢がーっ! くっそぉぉぉー!!」

利き腕の右腕を骨折した男が両膝をついて咆哮を上げた。


 硬式野球部の絶対的エースとして地方大会を制覇した男の“甲子園出場”という夢の舞台が消滅した。


「とっても美味(びみ)だったよ〜。大満足だよ。長い年月をかけて、努力して、ようやく掴んだ君の栄光ある夢は、僕が美味しくいただきましたよ」


 紫の煙を纏った何者かが満足そうな笑みを浮かべた。その姿は実体化されているのか、いないのか、半透明のように見える。


「君、もう一度諦めずに、美味しい夢を叶えておくれよ〜」


 そう告げて、音もなく消え去った。


 その声の主は、悪魔なのか、それとも天使なのか?



▽ ▼ ▽ ▼ ▽


 〜天界 夢幻廊(ムゲンロウ)


 夢幻廊(ムゲンロウ)と呼ばれる天界神殿内に、過酷な昇進試験をクリアした夢幻戦士たちが整列する。

正式にドリームクラッシャー部隊に任命された者たちが胸を張り、どの顔も自信に満ち溢れ、威風堂々たる姿を見せている。


 ドリームクラッシャー部隊を束ねる大隊長ミカエルが、整列する新人達一人ひとりの名を挙げて、それぞれ部隊への配属を告げている。

 

 全隊員の配属先を発表し終えたところで総括の言葉を述べる。


「此度の試験では、ホワイト12名、ブルー8名、イエロー8名、レッド10名、以上4クラス計38名が合格。正式にドリームクラッシャー部隊に入隊となった。貴様らはレベルの高いミッションをクリアした。誇りに思うことであろうし、浮かれる気持ちもわかる。しかし、ようやく今スタートラインに立っただけのこと。そのことをしっかりと認識し、決して気を抜かずに日々精進することを忘れるな! 貴様らの活躍に期待する」


 訓練生全クラスの中で、エリートが集まるホワイトは受験者総数20名全員が合格するものと思われたが、辛うじて半数強の合格者という結果であった。

 他のクラスも半数以下が不合格となり、この試験のレベルの高さを物語っていた。その中にあって、レッドは半数の合格者を輩出した。


 そして、レッドのファーストチームとして臨んでいたサンタ達4名が、ボロボロになりながらも最難関のミッションをクリアしたことは、大きなニュースとなって、全訓練生の注目の的になっていた。


 今回の試験において、救援なしでナイトメアメーカーを撃破したのは彼ら4名のみであり、しかもクラッシュアウトした魔人は記録上3体と報告された。これは前代未聞の事態であり、Bランク戦士と同格レベルの実績であった。


 だが、サンタが魔神アレスを取り込む形で融合したことは、このチームメンバーだけの秘密にした。最悪の場合、サンタが拘束され監禁されてしまう可能性があるとキューピッドが提言したことによって決められた。


 従って、クラッシュアウトしたナイトメアメーカー3体の中に魔神クラスのノウエーがいたことも彼らは報告していない。



「サンタよぉ、なんか俺たちを突き刺す熱い視線が痛いよなぁ、参っちまうよなあ」

レッドのリーダーと自称するダッシャーが浮かれた台詞を口にする。


「いっそ、そのまま尖った金属で刺されて消滅してしまえばいいのに」隣に並ぶ優等生のキューピッドがボソッと呟いた。


「ちょっとちょっと何を言い出すんだよ〜、今のが一番グサっと刺さったよ」


「そのままキューピッドに射抜かれて、消えてしまえば良かったじゃねえか」


「おいサンタ、お前まで言うのかよ!」


「へっ、サンタにしちゃあナイスな返しを入れるじゃあねえか」

ダンサーが笑顔で親指を立てた。


 昇進試験で大怪我を負った女剣士のダンサーも無事に帰還出来た。天界の治癒気功術によって傷は癒え、今では体調も万全のようだ。


 この4名が、レッドのファーストチームのメンバー。


「そこおぉぉーー!! 貴様ら、うるさいぞー! 青二才どもが調子に乗るんじゃあないぞ。毎回、お前らのような浮かれ飛んだ新人がいるが、そういう奴が早々にリタイアするか真っ先に存在を消滅させられてしまうということを覚えておけー!」

ミカエルの怒号が着弾した。


 ドリームクラッシャー部隊は、第1小隊(通称クラッシャー1)から第5小隊《通称クラッシャー5》までの本隊と特殊隠密隊(通称シャドウズ)浄化精霊隊(通称ホーリールミナス)、以上の7つの部隊で編成されている。


 レッド・ファーストチームの4名もそれぞれ配属先が決まった。

 ダッシャーは念願だった第1小隊に配属され、ダンサーは特別攻撃隊とも呼ばれる第5小隊、キューピッドはその類い稀な神気功術が活かせる浄化精霊隊(ホーリールミナス)、そしてサンタは特殊隠密隊(シャドウズ)に配属が決まった。


 第1から第5までの本部隊は“光”であり表の顔を持つ、対して特殊隠密隊(シャドウズ)は“陰”であり、裏の顔を持つ。


 表裏一体、光と陰、相対する二つの性格を持ってこその『ドリームクラッシャー部隊』である。


 任命式は無事に終了した。その後は自由解散。しかし、ルーキーたちはそれぞれ、配属先の話題で騒ついている。

訓練生の頃からの憧れ、部隊にまつわる噂、希望する部隊に配属された者の歓喜、希望していた部隊に配属されなかった者の嘆きがあちらこちらに霧散している。


「しっかしお前、まさかの特殊隠密隊(あそこ)に配属かよ。あそこは色々な意味で特殊らしいぜ。隊長さんがあのおっかねえ“シルバーサイレント”だからなあ・・・まあ、辛くて泣きそうになったらいつでも俺が慰めてやるぜ」

ダッシャーがサンタに声をかける。



「あら、あなただったらともかく、サンタなら問題はないわよ、あの力があるんだから。でも、あの力のことは4人だけの秘密だったわね」


 ダッシャーはキューピッドの反論に返す言葉が見つからない。


「そういえば、あたしはサンタの得た力ってやつをまだ見てなかったぞ! サンタ、ちょっとでいいから力を見せやがれ」


「無茶を言うなよ、ダンサー! アレスの奴は今ようやく、眠っているみたいに静かになったんだぞ。昨日は『俺を天界から出せーー!』とかなんとかほざきまくって、うるさくて仕方なかったんだぜ。そっとしてやってくれよ」


「そういやあ、ここに帰還するときも天界門(ヘブンズゲート)のところでお前だけ入れずに弾かれていたよな」


「あの時も、アレスが天界門(ヘブンズゲート)に入るのを嫌がって、とんでも無い邪気を放出しやがったから天界門(ヘブンズゲート)に拒否られて弾かれたんだよ。ホント参っちまうぜ、このオッサンにはよぉ」


「おいサンタ、お前の中のアレスってのはオッサンなのか? 魔神じゃねえのかよ!?」

ダンサーが意味不明な質問を投げた。

それを大振りで打ち返そうとするサンタ。

「バッカお前、知らないのかよ! オッサンってのはなー、魔神のことを言うんだぞ、覚えておけよな」


「えっ、そうなのか!! 知らなかったよ、マジかよ! 魔神ってオッサンがなるものなのかよ!」


「「いやいや、なんかそれ違うって!!」」

ダッシャーとキューピッドが目を点にしながら口を揃えた。


 ただの昇進試験だったはずが、まさかのレベルSランクを超えるナイトメアメーカー卿と魔神レベルの幻魔衆副官が出現する消滅必至のミッションをギリギリ乗り越えた4人は、単なる同期生ではない生死を分かち合える絆が生まれていた。


「それじゃあ、みんな所属先は違うけど、しっかり頑張って! 活躍を期待しているわよ」

キューピッドが仲間にエールを贈る。


「ああ、お前もなキューピッド」


 サンタの返答の間隙を縫って、ダンサーがキューピッドの両肩を掴んで揺さぶる。

「おいキューピッド、サンタの中のオッサンってどんな奴だったんだよ? 教えてくれよー!」


「ええ・・・と、その、私たちも見たには見たんだけど、真っ黒い邪気を全身に纏ったような姿を見ただけなの。あまりにも悍ましい威圧だったから立っていられるのが精一杯だったから」


「そうだぜ、お前がぶっ倒れていた時は、もう俺たち終わったと覚悟していたんだぜ。だからじっくりと観察する余裕なんてなかったんだよ」ダッシャーが補足した。


「なんだよぉ、じゃあ、そのすげえオッサンの姿はもう拝むことは出来ねえのかよ」


「いや、お前・・・オッサンって・・・」


「そうよ、ダンサー・・・そのオッサンって表現はどうかと思うわよ。サンタの中にいるのは魔神なのよ」


「だって、魔神ってのはオッサンのことを指すんだろう」


「・・・なんかもう、間違ってるけど、まあ、いいかな・・・」

キューピッドは、間違いを正すのを諦めた。


 そして、ダッシャーがここ一番爽やかな雰囲気を醸し出す。

「そういうわけだ、サンタ、ダンサー、そしてキューピッドもしっかりやれよ! 皆、別々の部隊に配属されちまうけど、俺たちはあの絶望的な状況を乗り越えた仲間だぜ、忘れんなよ!」


「いや、あんたはあんまり役に立ってなかったけどね」

キューピッドが冷たく言い放った。


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