第24話 新たな脅威
地獄 魔宮ダークパレス
凍てつく闇と燃え盛る業火が交差する地獄の最下層に聳える地獄の王ルシファーの巨大要塞。
魔人であるナイトメアメーカーたちの巣窟である。
その要塞の中央の間、地獄の王ルシファーの玉座の前にナイトメアメーカー卿ルイデスが平伏している。
ルシファーの拠点であるこの要塞の周囲には、無数の稲妻をともなった暴風、通称『嘆きの嵐』が吹き荒れている。
地獄に堕ちた者たちのもがき苦しむ叫び声にも似た暴風の吹き荒ぶ音が、この王の間にも響き渡っている。
「我が王よ、召集の命により馳せ参じました」
「ルイデスよ、面を上げよ。貴様であれば、此度の召集の意味は理解しておろうな」
ゆっくりと頭を上げたルイデスが口を開く。
「はっ! 恐れながら・・・アレス殿とノウエーの件でございますな」
「如何にも。アレスとノウエーが天界の軍勢と交戦したという報は届いておったが、ノウエーはともかく幻魔衆を束ねる天上天下最強の魔神アレスの存在が消えたとは、どうにも信じ難いのだ」
「我が王よ、ノウエーが伴っていた三体のナイトメアメーカーの内、唯一の生き残りであるターサンの報告通り、ノウエーとアレス殿は同士討ちとなって消滅したのは間違いのない事実かと。不肖、私の夢魔衆が真偽のほどを確かめるべく調査致しましたが、確かに両名の存在は消え失せています」
「・・・そうか、ご苦労であったな。しかし、どうしても解せぬのだ・・・そもそもアレスは何故、余の命に背き、ノウエーを追ったのか? 何故、副官のノウエーを討つようなことをしたのか?」
ルイデスの瞳が怪しく鈍い光を放つ。
「それについては、良からぬ噂を耳にしておりますが・・・」
「申してみよ」
「恐れながら・・・ノウエーはどうやらアレス殿の日頃の振る舞いを良くは思っておらなかった様子。そのことが軋轢を生み、アレス殿を裏切るような行動に出ていたと・・・」
「ほう・・・つまりは、ノウエーのそのような態度に腹を立てたアレスが制裁を下したと」
「流石は我が王。ご明察、感服致しました。」
「アレスの奴は粗暴で短気、あの性格であればこうなることは想像に容易い。しかし、そうであったとしても、やはりノウエーごときに不覚をとるような奴とは思えぬ・・・」
「であれば・・・むしろ、交戦したドリームクラッシャーどもがアレス殿とノウエーの同士討ちを誘う仕掛けを施したという線が考えられますが・・・」
「うむ。どうやら、そうかもしれぬな・・・だが、そのような奴等が存在するとなれば余にとっても脅威となろう。よって、ナイトメアメーカーの軍勢を再編成する必要があろう」
「仰せの通りかと・・・」
ルイデスにとって、ルシファーがアレス消滅の件に疑念を抱いていることは由々しきことであった。
ルイデスがアレスと不仲であったことをルシファーも認知していた。それだけ周知の事実であったから、あらぬ疑いが自身に及ばないための手は打った。
だが、念には念を入れて自身に疑いが及ぶような情報源は全て絶たなければならない。
幸いアレスを裏切ったノウエー自身に半分罪を着せることに加え、宿敵である天界の軍勢によって始末されたことにしてしまえば、極めて自然な流れに見えると考えた。
そして、この時点でルイデスは、地獄王ルシファーの腹心としての地位を絶対的なものにしたことを確信した。
内心ほくそ笑むルイデスに、ルシファーが下知する。
「そこでだ・・・我がナイトメアメーカーの戦力強化を実行した。既に余の直属であった三魔将軍に加え、新たに三体の魔将軍を創造した。よって、新たに最強精鋭の六つの師団を編成することとした。ルイデスよ、貴様には参謀としての役割を与える」
「仰せのままに」
ルイデスの返答直後、ルシファーが指を鳴らした。
それを合図に跪いくルイデスの左右に、五体の魔将軍が出現した。
最後に、ルイデスの背後に六体目の魔将軍が現れた。
「この者たちが、王の新たな戦力ですかな?」
「その通りだ。よくよく見定めるが善いぞ」
ルイデスは、自身の周囲に現れた六体の魔将軍の邪気を静かに推し量る。
ルイデスの右手に現れたのは、
魔拳のガラム
灼熱のサラマンド
幻惑のミラージュ
左手には、
死霊マスター モルテ
魔導賢者デスソロモン
が並び立つ。
そしてもう一人、ルイデスの真後ろに音も無く佇むのは、“魔王の影”と呼ばれる旧三魔将筆頭の最高幹部。大将軍、沈黙の魔神ゼノ。
ゼノはアレスの存在が消えたことに対し、ルシファー以上に強い疑念を抱いていた。
その原因がルイデスの裏工作に起因しているのではないかと推察していた。
沈黙の魔神は、ルイデスを冷たく暗い瞳で見据えている。
どの魔将軍も、魔神アレス並みの邪気を纏っているのがわかる。
それを感知したルイデスが告げる。
「我が王よ、素晴らしい魔将軍が揃いましたな。この戦力があれば、ドリームクラッシャーなど驚異にもなりません。非望の採集もさらに円滑になりましょう」
「ではルイデスよ、六魔将とともにドリームクラッシャーどもを討ち果たせ。そして、非望の採集を急ぐのだ」
「御意!」
ルイデスが立ち上がって王の間を退去した。
それを待っていた六魔将はルシファーの前に整列すると声を揃えて誓いを立てる。
「我ら六魔将、王に改めて忠誠を誓います」
「うむ。期待しておるぞ」




