第0話 夢の理 〜I've Got a Dream〜
※本作は過去に掲載した「夢の運び屋は、夢を打ち砕く者になちゃいました」の改稿版です。
初見の方も楽しめるように新たに書き直しています。
「おめでとう。お前の夢は、俺が綺麗に壊してあげたぜ!」
眩い光を背負った男――「天使」と呼ばれる存在は、冷徹な声でそう告げた。
彼の足元には、ひとりの女が抱いていた「アーティストになりたい」という輝かしい夢の残骸が、ガラス細工のように砕け散っている。
天使は言う。
その夢は毒だ。肥大化した欲望であり、いつかお前とお前の周りの人間を狂わせる。だから、芽吹く前に摘み取ることこそが「救済」なのだと。
一方、路地裏の暗闇で、悍ましい角を持つ「悪魔」は優しく笑った。
「悲しまなくていいよ。ほら、君の代わりに私が『最高の夢』を育ててあげよう」
悪魔が差し出したのは、どす黒く、しかし陶酔するほど甘い、身勝手で残酷な欲望の塊。
奪うことが正義? ーーーそれは、天使の愛なのか?
与えることが罪悪? ーーーそれは、悪魔の慈悲なのか?
砕かれ、紡がれ、二つの意思は激突する。
「夢」とはいったい何だ・・・?
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
〜 歪な夢は非望となる 〜
人は夢をみる。
夢を抱いて、夢を追う。そしてまた、更なる大きな夢を描く。
人それぞれに様々な夢がある。
純粋に幸せを望む温かな夢もあれば、大志を超越するような果てしなき野望を持つ者もいる。
夢の値が大きくなればなるほど、その形は歪に変形する。
己の欲望のために身勝手で私利私欲に塗れた歪な夢が成就すれば、それは他者からすれば“悪夢”に等しい。
人の持つ夢が歪になると、人間を含む全ての生物、そしてこの世界そのものに負の影響を与えてしまう。
歪な夢は暴力を生みだし、狡猾さを増し、多くの生きる者に苦しみと災い、そして悲劇を与える邪悪なパワーとなるからだ。
他人を蹴落とし、身勝手な欲望を抱き、世界の支配を目論むような神をも恐れぬ危険な夢。
それは身のほどを超越した、つまり神の領域を侵すほどの禁忌、決して望んではならない不届きな夢。
その不届きな夢の最終形態を『非望』という。
そして、この歪な夢を創り出す身勝手な奴等を“非望因子”と呼ぶ。
〜 歪な夢を育てる者 〜
『非望』とは究極のダークマターである。
混沌を生み出すために必要な、負のエネルギー源。
非望因子と呼ばれる人間の夢の中に潜り込み、歪な夢を操り、増長させ最終形態である『非望』へと成長させる魔の物がいる。
その魔の者を「ナイトメア・メーカー」という。
ナイトメア・メーカーとは、魔界の王ルシフェルが生み出した魔物。
非望を増幅させ、人間界を混乱の世へと陥れた後に混沌(天地創造以前の状態)へと変貌させるために生み出された“幻魔”という魔人なのである。
ナイトメア・メーカーに操られ、不届きな夢を非望へと成就させてしまった残念な人間達がいる。
人道を無視して私利私欲のために人の命をオモチャのように扱う闇社会に生きる者。
手前勝手な理屈で平和社会を壊し、狡猾な手段で侵略戦争を引き起こし、他国の人民を蹂躙する独裁者。
神の名を語りカルト思想を弱き人間に植え付け洗脳し、弱き者たちから全ての財を貢がせ骨の髄までしゃぶり尽くす醜いカルト教祖。
このような下劣な者たちは、もはや“人”ではない。
混乱と混沌を生み出すためのエネルギー源であるダークマター『非望』を生み出すナイトメア・メーカーに飼われた哀れな家畜である。
奴等は叫ぶ。
『夢の世界から、こんらんは(混乱は)!』
〜 壊し屋 〜
不届きな悪しき夢=非望、それを抱いた人間(非望因子)が現れた時、その非望と非望因子を打ち砕く者達が降臨する。
それは神が遣わした“壊し屋”。その名は『ドリーム・クラッシャー』。
ドリーム・クラッシャーは、神に創造された戦士。またの名を夢幻戦士という。
身勝手な人間たちの歪な夢の中へダイブ(人の夢の中に入り込むこと)して、歪な夢の中に棲みつくナイトメア・メーカーをその歪な夢もろとも打ち砕く存在。
ドリーム・クラッシャーは、人々の夢の中を駆け巡り、夢から夢へと渡り、魔界の王の企みを阻む夢幻戦士である。
神が創造した天地の秩序を守るため、ナイトメア・メーカーと呼ばれる幻魔衆、夢魔獣の討伐、歪みまくった非望を木っ端微塵に打ち砕くことを使命とする。
ドリーム・クラッシャーは人の夢の中にのみ現れる。
フィジカル世界(下界)の人間には現実視できない存在である。
〜 運び屋 〜
下界人(人間)と天界人(神)のハーフであるサンタ・クルーズは、天界と下界の間を行き来することが出来る特殊な存在。
そんな彼のスペシャルスキルは、“スピード(素早さ)”。天界と下界の間を音速で駆け抜けるほどのスピードを誇った。
そのスピードスキルを活かして夢と希望を届けるメッセンジャー(運び屋)を生業としている。
天界から依頼されたお告げや贈り物を下界の人間たちの下へ運び届ける。
音速移動が出来るサンタにとっては、まさに天職であった。
天界人の中には、サンタを“半神”と嘲笑い蔑む者もいたが、そのような差別や陰口などは全く気にも留めない気質。その天真爛漫な人柄は、神にも人にも受け入れられていた。
……そう、“あの夜”までは。




