第24話 悪の先兵
"採光都市 現実とリアルと真実のストラクチャー"
それは地元ローカルでの人気アニメだ。
当初は単純な熱血バトル系で地元では知名度があるぐらいだったが
地元にフォーカスを当て実際の風景や店、商店街等とコラボで演出を行い。
熱血だけでは無くほのぼのとしたエピソードを混ぜ込むなど
絶妙な匙加減で彩光市のみならず今では全国区でもそこそこ有名なアニメとなっている。
もちろん彩光市周辺では大人気で関連商品も良く売れている。
アニメで出た場所や店を巡るのも流行っており
市の経済にも好影響を与えているぐらいだ。
今は三期目を迎える長寿アニメでもあり彩光市にとっては必要なアニメだ。
ちなみに大まかな構成は以下のようになっている。
一期目は普通のバトルを主としたアニメだった。
地元は彩光市という設定なのでちょいちょい地元スポットを
描くことでジワジワと人気を伸ばしてきた。
二期目はストーリー内容に緩急をつけ質を上げると共に
地元とのコラボを前面に押し出しつつも
あくまでもストーリー主体を貫き抜群のバランスを描き出した。
ここで一気に人気は爆発する。
そして今の三期目は
一期、二期で足りなかった要素を追加し
他メディアとのコラボも進め全国的に知名度を伸ばしている。
なぜここまで詳しいかと言うと・・・・俺も好きなんだ。
最初は彩光市に配属になる際に調べてたら見つけて
レンタルしてきて一気に観てからファンになった。
いやぁ、面白いんだよ。
◇◇◇
その後もブリーフィングを続け
情報整理と対策を練りに練った。
会社としての所在地はわかっているのでそこにアポイントメントを
取った上で訪問を行う。
悪の拠点と言えどもいきなり襲撃をしようものなら
社会的に問題だからな。
相手は正式に会社として運営しているんだし。
そして問題点を書面で正式に抗議をしアニメ内容の変更を要請する。
もちろん書面は正式の物だし、アニメ放送を中止するには
彩光市えの影響が大きい為、不可能に近い。
そこでこんな落とし所にしたってことだ。
「これってヒーローっていうか役所系の仕事なんじゃ・・・」
そんな呟きが漏れるが仕方がない。
悪の組織が関わってる時点でヒーローが対応するしかないしな。
一通りの事を話し終わり新見さんがまとめる。
「では交渉担当は五色さん、補佐は私が勤めます
関係書類の手続きや各所への手配は御影さんにお願いします」
その後、各所に手配し書類を発行してもらいアポもとった。
後は当日にヒーローとして乗込むだけだ。
いよいよ悪と初めての遭遇だ。
緊張するもワクワクし拳を握りしめる。
◇◇◇
当日は快晴で気持ちの良い日だった。
前日はたっぷりと寝て体調も万全だ。
着替えを済ませ戦闘車に乗込む。
運転手はあいかわらず大吾さんだ。
丁寧な運転が気持ち良いぜ。
向かう場所は郊外の広い国道沿いにある二階建ての会社。
敷地は結構広く駐車場も広い。
ちょいと大き目の会社だ。
名前は"アバンクール"とデカデカと書いてある。
「もう、まんまじゃんかよ!」
そんな突っ込みをしつつ大吾さんを先頭に新見さん俺と続いて会社に入る。
これがスーツとかであれば普通の会社訪問だろうが
生憎と戦闘服姿の為、かなりシュールだ。
受付を済ませると係りの人が案内してくれた。
「こちらの応接室でお待ちください」
そう言って通された部屋は広めで解放感がある。
白を基調とした落ち着いた内装で窓も大きくて明るい。
机は三人で使用するにはちょっと狭くて二人なら丁度いい。
使用しない場合は折り畳みも可能だ。
椅子も同じように折り畳み可能な利便性を追求したタイプが用意されている。
・・・・どう見ても普通の会議室です。
こう絶対に応接室じゃないよね?!
何かこう納得できないけど悪の組織の関連会社に
乗込んでるんだから当たり前か。
出されたお茶を飲みながら(戦闘服は飲食をする際に自動的に口元が開く素敵仕様だ)待つ。
しばらく待つと担当と思わしき男が女性を連れて入ってくる。
「どうも~、お待たせしました
担当の横谷史郎と言います
こちらは大志雅です」
「宜しくお願いします」
そういって挨拶してきた二人はどうみても会社員。
パッと観は悪の組織とは無関係と思えてしまう。
横谷氏は40代ぐらいで愛想のある顔で
年相応に恰幅の良い体と相まって憎めない雰囲気がある。
大志嬢は20代前半で意志の強さを感じる目をしている。
見た目にも綺麗で交渉担当における綺麗所なんだろうな~と思わせる。
挨拶を受け大吾さんが一歩前に出て交渉をスタートさせる。
「はじめまして今日はお忙しい所申し訳ありませんん
私、カラー戦隊彩光市支部所属のスレートグレイと申します
こちらに控えているのがホリゾンタルブルーと煉瓦色です」
「プッ」
今、絶対に笑ったよな・・・・煉瓦色のとこで笑ったよな!
こんちきしょう!
戦闘服は表情が外に出ないからよかったぜ。
間違いなく俺の顔は怒り(恥ずかしさ)で真っ赤だぜ。
ふふ、命拾いしたな。
そんな一人妄想をしているうちにも大吾さんの話は進んで行く。
「では当社で作成しているアニメの内容が
規則に違反しているという事ですね?」
「ええ、事前にお渡ししている資料と
今回お渡しした資料を見て頂きたいのですが・・・・」
大吾さんが爽やかにそして分かり易く説明を続ける。
「なるほど確かに照らし合わせると規則に反している部分がありますね
それで当社には放送の中止を求めているのですか?」
「いえ、御社のアニメは彩光市にとって影響が大きいので
中止ではなく内容の変更をお願いしたいと思っています」
「ですがそれですと現在楽しんで頂いているファンの皆様に申し訳が
立たないわけでして・・・」
「それはこちらも理解しています、ですが規則に反しているのを
見過ごすわけにもいかない事を理解していただければと・・・」
長引きそうな会話を聞きながら目だけで担当の二人を観察する。
戦闘服のバイザーには各種センサーが内蔵されていて
二人の各種情報を取得する。
横谷氏は体温も発汗量もあまり変化はなく平常心と言っていいだろう。
横谷氏はこちらが放送中止を望んでいない事を
理解しているから結構な強気でいられるんだろうな。
大志嬢は少し体温が上がっているか。
手にも少し汗をかいているようだな。
「ですので、再三お願いしていますが内容を変更して頂きたいだけなのです
こちらとしても中止は望んでいまんせん」
「いや、ですから今の人気ある状態で変更なんてしたら
ファンの皆様が悲しんで離れていってしまうかもしれません」
「それはわかっています
内容の変更については最小限にしておけば問題ないとの分析も
専門家からも伺ってますし
もちろんこちらとしても全面的に協力もするつもりです」
いやいや、ヒーローが悪の組織の活動の一環に協力しちゃっていいのかよ。
無線で新見さんに意見を求めるも「社会は色々とあるのですよ」で纏められる。
色々と話をしつつも観察を続けると大志嬢の体温がかなり上がっている。
見た目にも顔色が少々興奮気味だ。
そう思っていた矢先。
「いい加減にしてください!
先程から規則!規則!とおっしゃいますが
言論の自由を奪う気ですか!」
いきなり大志嬢が切れる。
しかし大吾さんは何事も無かったように対応を続ける。
「確かにそれはとても大事な事ですが
この規則は日本の法として正しく制定されているものでして
あくまでも反しない程度にして頂ければ
今のまま続けて頂いて構わないとお伝えしているんです」
「だからそれが駄目だと言っているんです
規則だかなんだか知りませんが守らなきゃいけない根拠はなんなんですか!」
うわー、結構ヒステリックな方なんだなぁ~と思っていると新見さんから通信がはいる。
「う~ん、ちょっと不味いですね
御影さん、五色さんの動きに注意してください」
「えっ?それってどういう事ですか?」
咄嗟の忠告に意識が動かず出遅れる。
「そもそもがですね・・・・」
大志嬢がスイッチ入ってしまったらしくギャーギャー騒ぎ出す。
社会人として大丈夫なのか?とか考えていたら。
「お前、うるせぇな」
何処かで聞いた声なんだけど
今まで聞いたことがない声が聞こえた。
「不味い!御影さん、五色さんに注意して」
よくわからない状態になりながらも動き出そうとした瞬間。
建物自体が振動する位の衝撃と爆発音が響く。
「なっ、なんだ?」
会社内に警報が鳴り響く。
『ヒーローの襲撃が発生しました、ヒーローの襲撃が発生しました
従業員の皆様は所定のマニュアルに沿って退避行動を行ってください』
「え?なに襲撃って?!」
「これは最悪ですね・・・・」
新見さんがヤレヤレと言った感じで呟く。
ヒーローが居るのにヒーローが襲撃ってなに?




