1話
7月10日より毎日6話ずつ投稿させていただいています。7月16日に完結します。
貧乏男爵家の四女に生まれた私、アンジュは家族からもほとんど忘れられた存在でした。
そんな私に突然舞い込んだ結婚のお話。普通なら婚約してからの結婚となる筈なのに、いきなり結婚ですか? その上、式も挙げずに書類上の手続きだけなのですか? 私は別に構いませんが。
だって、私に拒否権はないのでしょ? 承知しております。
だからといって、家族に虐げられているわけでは無いんです。
貧乏男爵家の四女なんてこんなものです。
使用人だって三人だけしか居ません。
執事のジョセフ、料理人のブルボン、メイドのマリアだけです。
なので四女の私は家事全般こなせます。
特にお料理の腕前は、自分で言うのも憚られますが、かなり自信があります。
それには理由があって、小さな頃から料理づくりに興味があった私は、いつも料理人のブルボンの後をついて回っては、一緒にお手伝いをさせてもらっていました。
ブルボンは元々有名なお店のパティシエをしていましたが、お菓子だけではなく料理全般に精通していました。そんなブルボンのことを私のお父様が気に入り、お店のオーナーが知り合いだったこともあって、我が家に招き入れたのでした。
因みに、その頃の我が家はそこそこ裕福だったそうです。
今の様に貧乏になってしまったのは、お父様が知人に騙されたのがきっかけでした。領地の特産品を開発するという名目で建てた工場が、途中で頓挫してしまったらしいです。
その後、起死回生を図るも上手くは行かず、今日に至った訳なのです。今は地道に領地経営だけをしている様です。
私達姉妹の長女は子爵家の三男様に婿養子に入って貰いました。
次女は商家に嫁ぎました。
三女は極上の美貌を持って生まれたので、伯爵様に見初められて嫁ぎました。
皆、それなりに幸せに暮らしています。
貧乏男爵家ですが、四人とも学園には通わせてもらえました。
皆さんは馬車で送り迎えでしたが、私達は徒歩で通いました。
私は先月で十八歳になり、学園を卒業したばかりです。
これで大好きな読書ともお別れね。
学園の図書室には本当に沢山の本があったのに、残念です。特にお料理の歴史や、レシピに関わる専門書も多数ありましたのに、それらをまだ全て読破してないことだけが心残りです。
「え? 私のお相手は辺境伯様ですか? マイセン辺境伯領のエリック様?」
もちろん一度もお会いした事はありません。
「お年は私より八つも年上なのですか? そのお年までお一人なのですね」
ますます嫌な予感しかいたしません。




