空想・綾城伝説
この作品は仲間内で遊んでいたゲームのキャラクターをモチーフに勝手な想像で作り出した過去のお遊び作品です。単純にノリでお楽しみください(笑)
形代市立形代高校。この春より不可解な殺人事件が数回、謎の生徒失神事件が一回、理由不明の学校暴動事件一回と様々な事件の起こるこの高校に彼はいた。男子生徒に恐れられ、女子生徒に軽蔑され、先生達にもあきれられている彼の名を菱形うつひと言う・・・・・。
放課後。クラブに入っている生徒達は部活動に、それ以外の生徒達はおよそ下校する時間であり、うつひは後者だった。
身長は170センチを少し越す程度で、肩まで伸びている髪を持に手入れもせずに無造作に後ろで束ねている。顔立ちはやや美形だが、いつも眠たそうな目が彼を凡人に見せてしまう。体つきは制服の上からでもがっしりしてると分かるか否か、である。
・・・季節は晩夏の九月。
長い夏休みを、うつひは何だか訳もわからないまま過ごした気がした。
家に帰ればアメリカから遊びに来ている15才の少女が、テレビゲームでもしてうつひの帰りを持っていることだろう。
「はぁ・・・」
うつひは何となく留め息をついた。
この二才年下の少女はうつひの知る限り、およそ元気のかたまりで、彼が相手をしていても、いつのまにか彼女が彼の相手をする形になっている。
「このまま帰ってもディアナが待ってるしなぁ・・・。ミーティングルームにでも顔出そうかな。どうしよう・・・・・」
彼はペンフレンドの愛らしい顔立ちを思い出し、彼の友人たる綾城の家こいるだろう面々の顔を思い出すと迷わず家路を歩きはじめた。
俺も変わったよなぁ、とうつひは思う。
昔の、そう特に中一の時の俺はいつも彼女の事ばかり考えていたもんなぁ。
それがいつしかお軽いナンパ野郎になり、そして今の俺になったのだから。
「きゃあ、何すんのよ!」
うつひがそう考えていると、突然叫び声がした。
彼の目前で一人の少女が三人の男達に囲まれている、というお決まりのパターンにうつひは呆れ返っていた。
しかし、お決まりのパターンは彼が助けに入ろうとしたその時に変化を見せた。
後ろから肩をつかみ顔を近づけて来た一人に彼女が裏拳をかましたのだ。
亞然とするうつひの前で彼女は左の男の方に踏み込み、ひじ打ちをくらわした。しかも右足を踏みつけててある。
見ていてエグい。
「てめぇ!」
正面で口説いていた男が動く。右の拳を放つ。が、そこに彼女の顔はない。しゃがみ込んだ彼女はその反動を利用し、勢いに乗って右ひざを相手のボディに入れた。
結局。三人の男達はそれぞれに負け惜しみを言って去って行った。
お見事。
思わずうつひがそう口にする。
彼女がこちらを見た。
うつひより拳ひとつ位低く、セミロングの髪に勝ち気そうな眼が印象の深い少女である。
制服姿でカバンを持ち、それにより、彼女が帰宅途中で、彼もよく知る女子校の生徒であり、学年は一年、スリーサイズはも・ミ・ツであることがわかった。
「あなたは?さっきの奴らの仲間?」
彼女が疑わしげにたずねる。どうも気を緩めてはくれないようだ。
「八十二点」
態度も変えず、いかにも感心した様に彼が答える。
「はぁ?」
答えになっていない。
「何が八十二点なの?」
訳が分からずに彼女がそうたずねると、
「君の評価。うん、いい線いってるよほおう・・・!」
彼の評価に彼女は拳で答えた。どうやらお気に召さなかったようだ。
「最低、このスケベ、変態。あなたみたいな人のことを形代高の菱形って言うのよ!」
彼女が激しい口調で言い切った。その最後の一言にうつひがピタっと反応する。
「・・・それどういう意味?」
すると彼女は気を落ち着かせて言った。
「所かまわず女と見れば反応し、毒牙にかける有名な女たらしのような変態ってこと」
「ちょっと待てぇぇい!」
うつひは思わず立ち上がる。
「な、何よ」
驚いて、思わずたじろぐ彼女。
「どこでそんなに歪んだのか知らないけど、俺だって相手は選ぶし、毒牙にかけたことなんざ一度もない。ナンパだって成功してないのにそんな事できるかぁ!」
「えっ・・・?」
彼女は目を見張ってうつひの方を向く。
「じゃ、じゃああなたがあの、形代市在住の女性すべての恐怖、全女性の天敵、あの氷川さんに手をだして、そのうえ暴動を引き起こした張本人の菱形うつひ?」
「そう。その通り・・・」うつひはうつむきながら認めた。
どうして、どうしてこんなに悲しいの?ひどい、ひどすぎる・・・。
「お日様のバカー!」
太陽に向かって叫ぶうつひであった。
「今のうち・・・」
彼女は鞄を両手で持ち、一気にそれを振り上げるとうつひの頭にたたきつける。
どぐゅう!
鈍い音がする。今日は英語があり辞書も入っていた。
「あっ、いっけなぁい!」彼女はうっかりその事を忘れていた。
「ゴ、ゴメンね・・・!」と言って、走り出す彼女。
前のめりに倒れるうつひ。そして意識はカーテンコール待ちへ・・・。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
彼女は我が家の前まで来ると足を止めた。肩で息をしながら今来たほうを見る。一抹の不安と共に・・・。
誰もいない。
「よかったぁ、何とか逃げられたみたい」
そう言うと玄関先の扉を開いて中庭に入っていく。
「うっ、つぅ。あぁ、頭イテぇ」うつひは顔を上げる。
頭をふってまわりを見る。彼女の姿は既になく、彼のまわりでは通行人が遠巻きに彼を見ているだけである。
「ん?」足元の方を見る。
生徒手帳が落ちていた。赤いカバーで、裏には彼女の顔写真がついている。
「水沢・・・かなえちゃんか」
うつひは名前を確認し、住所を確かめた後、それを右のズボンのポケットにつっこむ。
そしてうつひは少しのあいだ考えこんだ。
「落とし物って持ち主に直接届けた場合、一割もらえるのかなぁ?」
そうつぶやくと、彼は進行方向を変えて彼女の家に歩いていった。
それからうつひは三十分程歩いた。時計を見ると、どうやら彼は一時間ほど気絶していたらしい。もう四時をだいぶ過ぎていた。
彼は「水沢」の表札のある家の前まで来ると扉を開けて中に入っていく。
プザーを押して少しすると、髪を後ろでまとめ、見た感じ優しそうな女性が玄関のドアを開けた。
「はい、どなたですか?」
「あ、ぼっ、僕、形代高校二年菱形うつひと言います。あ、あの水沢さんのお姉さんですか?」
いかにも内気そうな少年の姿を演じるうつひ。
そう聞くと彼女は嬉しそうに「いいえ、かなえの母です」と答える。
「えっ、あっ、ごっ、ごめんなさい。あんまりいきいきとして若く見えたのでてっきりぼ、僕お姉さんだと思って・・・」
必死にあやまるうつひ。
「あら、いやだ、ごめんなさい」
何がごめんなさいなのかはわからないが、どうやらまんざらでもなさそうだ。
こうしてうつひの心理攻撃(良くある手だが、それだけに効果は大きい) はまずうまくいった。
「いえ。ところで水沢さんに渡して欲しいものが・・・」
ポケットから手帳を出す。
「あら、それ、かなえの手帳・・・。わざわざそれを届けに来てくれたの?」
するとうつひは急に肩を小刻みにふるわした。
「どうしたの、えっと・・・変形だったわよね?」
頷いて答える。拳は強く握られている。
「ほ、ぼく、ほく本当に自分が情けなくて・・・」
声はいつの間にか涙まじりになっていた。
水沢(母)さんが心配そうにうつひを見る。
「実は、今日帰りに水沢さんがたちの悪い男たち三人に絡まれているのを見て、僕の方は水沢さんの事を、名前は知らなかったけど顔は知っていて、それで助けなきゃと思ったんですけど・・・」
しゃくり上げてから続ける。
「相手は三人もいて、僕怖くなって物陰に思わず隠れたんです。僕、誤解から生まれた噂ほど不良じゃなくて、強くもなくて、ずっと・・・隠れていたんです」
「・・・・・」
涙を流し訴える演技派うつひ。
「そんな時、僕の、今では数少ない友達の一人の綾城君が来て、彼が持ち前の正義感で男達から水沢さんを助けて・・・」
「綾城君で、あの剣道で有名な?」
少し驚いているようだ。
「はい。彼は僕にとって、他の五人の幼なじみと同じく友達で、あいつ普段は温厚で、ケンカなんか自分で禁じていたのに・・・。僕がもっとしっかりしてれば、もっと強ければ水沢さんにも、綾城にも迷惑かけなかったのに・・・。それがとても情けなくて、悔しくて・・・・・」
「そう自分を責めたらいけないわ。それにあなたはこうやって手帳を届けてくれたじゃない。あなたがいなければ私は何も知らなかったんだし。あの子、一言もそんなこと言わないから」
と、うつひを優しく慰める。
「きっと心配させたくなかったんですよ。それに綾城が、理由があってとは言え、ケンカしたなんて言っちゃいけないと思ったんですよ。あいつ、そういうコトに無関心で、良い事をしても自分から誇る奴じゃないし」
「立派だわ。さすがはあの綾城君ね。まだ若いのに人間が出来てるわ」
と、やたらに感心している水沢(母)さんを見て、内心で「よかったな、公」と思ううつひ。
「それにこの件で水沢さんが傷ついたり、心苦しく思わないようにと考えてわざと何もなかったように振る舞ったと思うんです。だからお母さんも水沢さんに、この件について聞いたりしないで下さい。手帳は通り掛かった人が届けてくれたことにして」
わかったわ、と答えが来る。とにこやかに笑う水沢(母)さん。
「それじゃあ、僕はこれで。水沢さんのお母さんがこんなに若くて優しくて良かったです」
笑話でとどめの一撃。そしてドアを開ける。
「もう、おだてても何もでないわよ。」とすっかりうつひに好印象をもつ水沢(母)さん。
バタン、とドアが閉まる。
その時、二階の部屋からかなえの声が聞こえてくる。
「誰だったの、母さん。随分話し込んでたみたいだけど・・・」
その声に応えて、階段を上がり始める。
「かなえ、あなた手帳を落としたでしょ?」
その声は少し楽しげだった。
そしてうつひは水沢家を出ると、再びケンカの場所に行きその周りで、 綾城には知られぬよう巧妙に、通りすがりの人達にウワサを流していった。
「明日が楽しみだな」
心底楽しそうなうつひであった。
次の日、うつひの流したウワサは美化120%で広く知られていた。
いわく、綾城が自らの危険を顧みず、哀れな少女を救うため、太刀一本を片手に最強最悪の暴走族に一人で立ち向かい、一夜で全滅させただの、
いわく、その少女はその後、綾城に告白したが、綾城は黙って立ち去っただの、いや実は綾城も恋に落ちて二人はラブラブになっただの、いや本当は綾城は謎の組織「ブラック×」から逃げて来た金髪美少女を担織の連中から守ったのだとか。その美少女なら見たことがある、かなりの美少女だとか様々である。
ちなみに金髪美少女については隣に男がいたという事から、より憶測が憶測を呼んだ。
「なんだ、このウワサは」教室で綾城はそうつぶやいた。
「このバトルマニアがぁ!」彼の隣で端葉忍がそう言った。
「本当のところどうなんだよ、綾城?」綾城の左前の机に座りながら鷹岡彰がたずねてくる。
「知らないよ。本当も何も朝起きたらこうだったんだよ!」と必死な綾城。
「またまたぁ、かっこつけておいて知らぬふりはいけないなぁ」とまぁ、とぼけてうつひ。
「綾城も大変だなぁ・・・」とわりと心配する史塚たける。
教室のみならず、学校中に広まっているウワサは、主人公が綾城なだけに余計に盛り上がっていた。(うつひならともかく、わりと人気のある、真面目な性格の綾城だったから)
今日、彼は一日中質問責めにあい、廊下で出会ったセカンドパーティの面々、特に氷川さんまでもが「ほんとうなの?」と聞いてきた。
しかも黒岩先生さえもが陵城を生徒指導室に呼び出して、「フォローできんぞ、綾城」と言った。
綾城泣きそう・・・
結局水沢さんの名前は出ず、うつひの名前も現れず、事はすべて綾城の胸の中に・・・・・。
と、みんなは思い、真相はうつひの心の中であった・・・。
なお、これはフィクションであり、実際のシナリオにはおよそ関係は無く、よって当方に責任を追及しないように。あしからず(笑)
元原稿が感熱紙だったのでサルベージが大変でした(笑)
ちなみに私の学生時代はうつひ程はっちゃけてませんよ?本当だよ?(笑)




