私と彼の1週間ー6日目ー偉大な師へー
未来へと繋がる想い──。
夕食にほっくほくのハンバーグを、シリル君やどこからともなく駆けつけた幼馴染ーズと一緒に食べて、私たちはいつもの如く聖域に来ている。
今日が、私がシリル君の魔法剣の魔法制御に付き合ってあげられる、最後の日だ。
明日には私は、元の未来へと帰ってしまう。
多分、私が来た時と同じ時間がタイムリミットだろう。
明日は悔いのないように過ごさないと。
あ、なんか急に寂しくなってきた。
「大丈夫か? ヒメ」
眉を顰めてシリル君が私の顔を覗き込む。
この眉間のシワの少ない先生に会えるのも、もう明日までなのよねぇ……。
うぅ、センチメンタルヒメちゃん。
「はぁ……」
思わず漏れ出るため息。
だめだ。
ブルーだ。
あれだけホームシックだったのに、今度は帰るのが寂しいだなんて。
「人の顔を見てため息をつくな。失礼なやつだな」
ムスッとして言うと、シリル君は再び私の両手を取って魔力を流し始めた。
均等に流れてくるシリル君の魔力が、心地よく私の身体に巡り始める。
あぁ、気持ちいい。
穏やかな波間に揺られているみたいな心地良さ。
魔力にも相性というものがあって、私と先生──シリル君の魔力の相性は最高みたいなのよね。
注がれるたびに、気持ち良くてつい我を忘れて浸ってしまいそうになる。
はっ!!
いけないいけない!!
集中しないと!!
「シリル君、魔力が均等に安定しましたね」
「あぁ。コツが掴めてきたな。君のおかげだ、ヒメ。礼を言う」
あうっ!!
そんな綺麗に頭を下げないでっ!!
私だってシリル君の手を合法的に握ることができて、毎日幸せハッピーデイズ過ごさせてもらってるからっ!!
そんな邪念をひとまず押し込めて、
「あ、頭を上げてくださいシリル君」
と頭を下げ続ける目の前の生真面目男に言葉をかける。
「シリル君の飲み込みが良いのと、真面目に頑張ってきたからこその上達ですよ」
数日でこんなにコントールできるようになるなんて思わなかった。
たった数日でなんて、私には無理だった。
本当に難しいのよね、このコントロール。
「私と訓練して強くなったシリル君が、今度は弟子にその力を教えていくんですよね。なんだか感慨深いです」
巡り巡って継がれていく技。
たとえ忘れてしまったとしても、その技が私とシリル君を繋いでくれる。
そんな気がする。
「私は弟子を取る気はないがな」
興味なさげに返すシリル君に、私はふふっと笑ってから、
「いいえ。取りますよ。そしてあなたはきっと、偉大な師になります」
と、少しだけ予言めいてそれを伝えた。
「……君の師のように──か?」
「──えぇ私の師と同じくらいに」
あなたの未来は私の光だから。
私を支えてくれるかけがえのない存在。
ゲームをしていた時からそうだった。
どんな時も、あなたの存在が私を導いてくれた。
私の愛する人で、最推しで、そして偉大な師だ。
「そうか……。なら、それまでにもっと強くならなければいけないな」
そう言って柔らかく微笑んだシリル君に、私は目が釘付けになった。
シリル君の笑顔!!
尊い!!
ぁ、そうか。
この純粋なる笑顔も、もう見られないのか。
先生ひねくれてるからなぁ……。
闇が深いし。
ピュアで天然で可愛くて素直なシリル君を、今のうちに堪能しておこう。
そう思い至った私は、シリル君の胸にぎゅっと抱きついた。
えぇそれはもう、ギュ〜〜っと。
「なっ!! 何してる!! 離せ馬鹿!! 淑女がそんな──」
「明日でお別れだから、補給中です」
暴れるシリル君に私がそう言えば、彼はすぐに大人しく、されるがままになった。
「……明日、いつ帰るんだ?」
「…………多分、出会った時と同じ時間」
「そうか」
それからシリル君は口を閉ざし、私に黙って抱きつかれ続けていた。
日中の暑さも夜になれば少し涼しい空気が流れ始めてきたこの時期。
それでもこのぬくもりが、そんな空気も無いものにしてしまう。
ちょうどいい温度に溶け合って、いつまでもこうしていたいくらい。
しばらく抱きついて、私は彼からゆっくりと身体を離した。
「もういいのか?」
「はい。ありがとうでした」
名残惜しいけれど、いつまでもこうしているわけにはいかない。
行きましょう、と歩き出したすぐ後で、
「そういえば、君は空から降って来たが、いったいどこへ帰るんだ?」
ふと落とされた疑問に動きを止める。
「──いつか、辿り着くところ──……」
そう言って私は、輝く白い月を見上げるのだった。
いかがでしたでしょうかっ(*^^*)?
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次回、ヒメちゃん、体育館裏に呼び出される!?
お楽しみに(笑)




