表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かおる小町*連載版  作者: 風奈多里
かおるさんと僕
9/27

ニッコリおくちにチョコレート

ケーキ屋さんは、家を出て大通りの路地に入ってすぐのところにあった。


「いらっしゃいませ〜。」


お店に入ると若い店員さんが元気に挨拶をしてくれた。


ケーキ屋さんに入るのなんて小学生以来かもしれない。小さな頃は、毎年お母さんと一緒にクリスマスケーキを買いに出かけていた。あの頃が少し懐かしい。




「どれにしましょうか? 何個買いますか? 妹さんとユカリちゃんとたけしさんとお父さんとお母さん。5つで大丈夫でしょうか? 」


僕の肩に乗ってキラキラしたオーラを放ち、フェアリー感丸出しでフワフワしながらケーキを眺めているかおるちゃん。


女の子って甘いものが好きなんだね。お母さんもいつも僕に隠れてどら焼き頬張ってるもん。かおるちゃんは何のケーキが好きなのかな?


「えっと……かおるちゃんは、どのケーキがいいですか?」


僕は勇気を出して聞いてみた。


すると、かおるちゃんがさらに目をキラキラさせてこっちを見てきた。


「たけしさん! よくぞ聞いてくださいました!! ありがとうございます。私はどのケーキも大好きでござる。」


ござる?


えっ、ござる?(笑)


僕はニヤけてしまった。店員さんがこっちを見て怪しい顔をしていた。




で、どれを買ったらいいのだろう。


すると、どこからともなく博士のようなメガネと帽子、そして、杖のような棒が飛んできて、かおるちゃんが装着した。


「説明いたしましょう。まず、種類についてです。ショートケーキにチョコレートケーキ、チーズケーキにロールケーキ、フルーツケーキ、パイ生地のケーキやミルフィーユ、ミルクレープ、シュークリーム、タルトやプリン、モンブランにマカロンなど様々なものがあります。あっ、抹茶を使ったものなどもありますね。この中で、どのケーキを買うべきなのか? わかりますか!? 」


かおるちゃんは、ケーキの種類をツラツラと語っているだけなのに熱気と圧がすごい。僕は圧倒されて、眉間にシワを寄せながら首を横に振った。




「ここで、私としたことが一つ失敗したことが。ユカリちゃんに好きなケーキの種類を聞いてくるのを忘れていました。本来ならば、好みを事前に調査するべきでありました。しかしながら、本日はそのような時間がありませんでしたので、限られた情報の中で全力を尽くすこととしましょう。」


僕は目が点になり、そして、かおるちゃんの力説に少しだけ飽きてきた。早く適当に買って帰りたい。




「では、本題に入りましょう。まず、スタンダードなものから選びましょう。定番のショートケーキ、そして、チョコレート系とチーズ系は外せないでしょう。あとは、季節限定などの特別感のあるものをセレクト致しましょう。」


ほうほうと僕は頷いた。面倒なので早く選んでくれと思っていた。なので、すぐにそのケーキを頼んだ。ショートケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ、あとは店員さんのオススメを二つ買った。オススメの季節系のタルトとロールケーキがとてもキラキラしていて可愛かった。




「ありがとうございました〜。」


帰る時も若い店員さんは元気良く挨拶をしてくれた。






家に帰り、すぐに買ってきたケーキを妹の部屋に持って行き、どのケーキが良いか聞いた。




「ありがとうございます〜。私、チーズケーキ、大好きなんです〜。あっ、でもこのフルーツがのっているのも可愛いですね〜。どれにしよう〜。迷う〜。」


そう言って妹のお友達のユカリちゃんは、嬉しそうに選んでいた。




その後僕は、お母さんに入れてもらった紅茶を妹たちのところに運んだ。


「お兄ちゃんありがとう〜。」


と言って、妹たちは楽しそうにケーキを食べていた。




一階に戻ると、お母さんが言った。


「お父さんは、きっとショートケーキでしょう〜。私は、チーズケーキ。たけしはチョコレートケーキよね? 」





そう、僕はチョコレートケーキが大好きだ。


僕が大きく頷くと、ポケットの中ではかおるちゃんも大きく頷いた。








ケーキを食べ終え、部屋に戻った。


あっ、もちろんかおるちゃんも僕のチョコレートケーキをつまみ食いしていた。




「たけしさんもチョコレートがお好きなのですね。私もです〜。」


かおるちゃんはチョコレートケーキを食べて、口の周りにチョコレートをたくさんつけてニッコリ笑った。とてもご機嫌だった。女の子は甘いものを食べると幸せになってご機嫌になるのか。かおるちゃんの笑顔を見て、僕もニッコリ笑った。


すると突然、


「あっ、ノート! 」


かおるちゃんが、あっ!忘れてた! というような顔をした。


「はいはい。書けばいいんでしょ。書けば。」


最近は、毎日ノートに日記のようにその日あったことを書くことが習慣化してきた。と言うのは、かおるちゃんが毎日毎晩うるさいからだ。忘れるととてもうるさい。なので適当にささっと書けば、1番面倒臭くないのだ。今日もささっと書いた。




ケーキの種類も覚えた。女の子にケーキの好みを事前に聞いておくことも。あと、かおるちゃんがチョコレートが好きなことも。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ