すっんごいありがとう
次の日は、土曜日で学校はお休みだった。
今日は、アルバイトの日だ。
僕は、近所のちょっとだけお洒落なカフェでアルバイトをしている。
1番最初のお話にも出てきたけれども、アルバイト先にはめぐみさんという美人な先輩がいる。今日もそのめぐみさんに会うのがとても楽しみだ。
ちなみにかおるちゃんを連れて行くのは、今回で2回目だ。かおるちゃんもめぐみさんのことを知っている。
僕は、アルバイト先の制服を着て、エプロンのポケットにかおるちゃんをひそませて張り切って挨拶をした。
「おはようございます。よろしくお願いします! 」
キッチンの方から美人なめぐみさんがひょこっと顔を出した。
「おはよう。今日もよろしくね。」
そう言って優しく微笑むめぐみさん。僕は一瞬で癒された。
すると、デレデレした顔をしていたのがバレたのか、ポケットの中でかおるちゃんがツンツンと肘つきをしてきた。
いけないいけないシャキッとして仕事をしなければ……と、僕はパンパンと顔を叩いた。
土曜日のランチタイムは激混みだ。次から次へとお客さんがやってくる。僕はまだオーダーを取ったり、飲み物や食事を運ぶことくらいしか任されていない。
めぐみさんはレジもできるし、飲み物も作れるし、たまに調理場に入っていたりもする。何でもできるお姉さんだ。なので、仕事を沢山頼まれて、たまに一人で抱え込んでいないかと心配になる。
「それやっておくよ。そこ置いておいて。あそこのオーダーお願いしていい?」
「あっ、はい。」
今日もめぐみさんの指示に従い、働く。僕なんて、まだまだ周りも見えていないし、何をしたらいいかわからなくなるし、ダメダメなアルバイトだ。いつもめぐみさんに頼りっぱなしだ。
「たけしさん。あそこも!あそこもオーダーとってきましょう! 」
指示されっぱなしで落ち込んでいると、ポケットの中からかおるちゃんが話しかけてきた。なんだか張り切った口調だ。
「あっ、はい。」
僕は、めぐみさんとフェアリーかおるちゃんのダブルパンチの指示に従った。忙しかったけれども、頑張って動いた。
「次、あっち! あっちも! あっ、めぐみさんの方、代わってあげてください! 」
かおるちゃんの指示は的確だった。僕はロボットのように働いた。
「めぐみさん。代わります。あっちお願いします。」
僕は疲れてきたので、少々息切れしながらもめぐみさんに声をかけた。
すると、めぐみさんの瞳がいつも以上に大きくなり、キラキラとさせながら、神様に救いの眼差しを向けるような目で僕をみた。
僕、神様じゃないよ。どうしたんだろう。と、少し驚いた。
「ありがとう! すっんごい助かる! 今、これやりたかったの! すっんごいありがとう! 」
めぐみさんは、すっんごいを連呼しながら感謝してくれた。まるでロボットのように動いていた僕は、なぜそんなに感謝されたのがわからなかったが、後からジワジワとその時のことを思い出して興奮してしまった。めぐみさんがこの僕に、すっんごいありがとうと言ってくれたことがすごく嬉しかった。夢のようだった。
帰り道、かおるちゃんが話しかけてきた。
「たけしさん、今日も頑張りましたね! いい動きをしていましたよ! めぐみさんも喜んでたし! 良かったですね〜! 」
かおるちゃんはご機嫌だった。
僕も嬉しくなった。あっという間に終わった1日だった。充実した良い1日だった。
「あっ、帰ったらノート書かないと。」
会話中、僕はポロっと呟いた。
「えらい。たけしさん!えらい! 」
今日もかおるちゃんに沢山褒められて、心が満たされた。帰ったらノートにたくさん書こう。アルバイトのこと、かおるちゃんに褒められたことを全部。




