ユキとゆき隠れ里へ
高校になって祖父母の家にやってきたユキ、縁側に座りながら幼い頃を思い出していました。ゆきんこのゆきに連れられ、隠れ里に行ったこと。そこでうぐいす姫や、たぬき、うさぎ、妖怪たちと仲良くなったこと。ユキはそれが本当ことだったのかどうか、迷っていました。
子どもの頃喘息の症状が出ない日、ユキは縁側で日向ぼっこをすることが多かった。
「わしもそうやって日向ぼっこしてたなあ。」
「そうそうおばあちゃんも、よくお庭から縁側に上がって遊んでたわね。」
お爺ちゃんとおばあちゃんは幼なじみでした。だからユキのお父さんたちが大人になった時二人してここに戻ってきたのです。
あれは春だったのかなあ。
幼いころ縁側で庭の梅の花を見ていました。
そろそろ桜がほころび始めた頃でしょうか、白い梅の花びらが散っています。いつもだったら喘息の発作が起きるころですが、お爺ちゃんたちが住んでいる場所は空気が良いのでしょう、だんだん咳き込むことも少なくなってきました。
雪みたい。
「ユキちゃん。」
「だれ?」
白い花吹雪の中に真っ白な着物を着た女の子が立つていました。
「あなたはだあれ?」
幼いユキは少女に聞きました。
「私はゆきんこよ。」
「ゆきんこさんって?」
「私は雪の子ども、妖精って呼ぶ人もいるし、お化けっていう人もいるよ。」
「お化け?可愛いお化けさんね?」
「ありがとう。」
その日からユキとゆきんこは遊ぶようになりました。
「ゆきんこちゃん、ゆきって呼んでいい?」
ゆき「いいよ、ユキちゃん。」
二人のユキとゆきはこうして仲良くなりました。
春が過ぎ夏になりました。
「わたし、暑いと溶けちゃうの。だから昼間は出て来れないわ。」
夕方陽が沈みかけた頃ゆきは現れるようになりました。
「こんばんはユキちゃん。」
「こんばんは、お盆だからお盆提灯おばあちゃんと飾ったのよ。」
ゆきはじっと提灯を見ていました。
「ねえ、今夜は私のすみかに案内してあげるね。」
「すみか?」
その夜家族が寝静まったころゆきはまた訪ねてきました。
「ユキ、さあ出かけるわよ。」
「出かけるってもう遅いしおじいちゃん、おばあちゃんに怒られるわよ。」
「大丈夫、風に乗るから。」
「風?」
ゆきはユキの手を取るを窓からふわーと飛んで行きました。
「風は私のお友達よ。そよ風、木枯らし、ちょっと乱暴だけど吹雪とかね。今夜はそよ風さんよ、夏の嵐は私が溶けてしまうもの。」
二人は窓の外に浮かんでいきました。
「うわー、ピーターパンみたい!」
目の下にはお爺ちゃんの家、近所の畑、いつも水遊びしている川、虫取りをしている森、夜の村はところどころに家の明かりが見えます。
「見て、今夜は満月よ。」
下から見たら月に掛かった雲も、空の上では月を見上げる雲の原。
「わー、お布団みたいだ。」
「ねっ、素敵でしょ?ほら雲の上に座ってお月見よ。」
足の下の雲の切れ間には、月に照らされた森が見えました。
「ねえ、あそこどこの村だろう?」
ユキが指差した方向にはかやぶきの家々や田んぼ、小川が見えました。
「あれはね、これからユキを連れて行くところよ。今夜は満月、里のお祭りなの。」
「お祭り、わあいいなあ。でもどこの村なのかなあ?」
「隠れ里よ。」
そういうとゆきは、ユキの手を取り里に下りて行きました。
きれいな小川、その周りに豊かな田んぼ、畑。かやぶきの家が建っていました。まるでお伽噺や昔話に出てきそうな村でした。
「今日は仲よくなったお礼にここに連れて来たのよ。お友達を紹介するわ。」
ゆきとユキは、一軒の農家に入っていきました。
「こんにちは、ゆきんこです。」
はーい、と中から声がしました。
「きゃー、たぬき!たぬきがしゃべってるじゃん!」
「おや、人間の子どもですね?ぽん。」
「これはめずらしい、怖くはないよ心配しないでね。」
「うわ―、こんどはうさぎがしゃべってる!わたし夢を見てるのかしら。」
「ゆきんこさんのお友達のうさぎです。よろしくね、ぴょん。」
中に入ると囲炉裏のそばに案内されました。
「ここは隠れ里というのですよ。昔高い年貢を払えないお百姓さんたちが逃げ隠れていた場所なのです、ぴょん。私たちも、人里で住めなくなりここで人間たちと暮らすようになったのです。でもやがて人はいなくなり、私たちだけになったのです。ぴょん」
「人々も妖怪や妖精を信じなくなりました。もののけは悪者たちじゃないのですよぽん。そこに”いるもの”なのです。昔は人間と一緒に仲良く暮らしていたのですよ、ぽん。」
「良く分かんないけど、、、お友達ってことなのね。」
「そうです、そうです。」
声のする方を見るとおおぜいの”もの”たち。きつね、もぐら、うぐいす、すずめ、犬、猫、こうもり、へび、からうす、お釜、唐傘、ちょうちん、さては入道、ろくろ首、などなど座敷から庭まであふれていました。
うぐいすは羽ばたくと可愛い少女になりました。
「私はうぐいす姫です、けきょ。さあ、今夜はお祭りです、ユキさんも一緒に踊りましょうね、けきょ。」
幼いユキはお化けの話しなど良く知らなかったこともあり、すぐにみんなと仲良くなりました。
確かにわたし行ったよね、、、。夢じゃないよね。
高校生のユキは縁側に座って目の前の山を見ていました。
主人公ユキとゆきんこのゆき、これから二人の隠れ里への冒険の序章が始まります。
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