第1話 スライム蹴ったら国家災害扱いされた
「はじめまして、読んでいただきありがとうございます!
スライムが最強な“ちょっとおかしい異世界”で、
主人公が無自覚にやらかしていくコメディです。
気軽に楽しんでいただけたら嬉しいです!」
「……出ない」
思わず漏れた声は、やけに乾いていた。
スマホの画面には、無機質な数字が表示されている。排出率0.3%。理論上は三百回も回せば一体は出るはずの確率だが、現実はどうやらそう甘くはないらしい。
「いや出るだろ普通」
指が震える。これで最後だ。石はもうない。課金もした。理性も、もうほとんど残っていない。
「頼む……マジで頼む……来い……」
祈るようにタップする。――虹演出。
「勝ったあああああああああ!!」
思わず叫ぶ。確定だ。ここまで来て外れるはずがない。
胸の奥で何かが弾け、脳内では勝手に勝利の音楽が流れ始める。長い苦行が、ようやく終わる――はずだった。
「……またお前か!」
表示されたキャラを見た瞬間、すべてが止まった。見覚えのある顔。どころじゃない。七体目だ。とっくに完凸している。これ以上来ても意味がない。
「は?」
数秒遅れて理解が追いつく。
「いやいやいやいやいやいや……おかしいだろ……!」
声が勝手に大きくなる。
「0.3%ってなんだよ!!」
誰もいない部屋に叫びが響く。返事はない。ただ、画面の中の同じキャラが無言でこちらを見ているだけだ。
「ふざけんなよ……マジで……」
心臓がドクン、と大きく脈打つ。視界がわずかに狭くなる。
「もう一回……」
震える指でタップする。――反応しない。
「……あ」
石が、ない。完全に、終わった。
「……クソゲーがよ……」
力が抜ける。スマホが手から滑り落ちる。そのまま、意識も沈んでいった。
***
「……ん?」
次に感じたのは、草の匂いだった。
ゆっくりと目を開ける。青い空、流れる雲、そしてどこまでも続く草原。
「……は?」
体を起こす。痛みはない。だが、それ以上に状況がおかしい。
「……いや、ちょっと待て」
ガチャ爆死して気を失って――気づいたらここ。どう考えても説明がつかない。
「……転生、か?」
口に出してみると妙にしっくり来るのが嫌だ。神様も説明もない、雑すぎる展開だが――
「……まあいいか」
考えても仕方ない。異世界ならやることは決まっている。
「スライム探すか」
RPGの基本。最初は雑魚狩り、レベル上げ。それが常識だ。
その時だった。足元で、ぷるん、と音がした。
「ん?」
視線を落とす。そこにいたのは半透明のゼリー状の生物。
「……スライムじゃん」
テンプレすぎて逆に安心する。
「よし」
軽く足に力を込める。
「まずはお前からだ」
本当に軽くでいい。虫を払うくらいの感覚で足を振る。
――その瞬間。
ドゴォォォォォォォォォォン!!
世界が弾けた。地面が爆発し、衝撃波が草原を薙ぎ払う。遠くの丘が崩れ、空気が震える。
「……は?」
何が起きたのか分からない。ただ蹴っただけだ。それだけのはずなのに。
「……え?」
呆然としていると、背後から震える声がした。
「お、お前……今、何をした……?」
振り返る。そこには顔面蒼白の兵士。
「何って……スライム蹴っただけだけど」
「……は?」
兵士の表情が固まる。
「それは……“災厄級魔獣スライム・オリジン”だぞ……?」
「……え?」
「王国が三度滅びかけた存在だ……それを……蹴った……だと……?」
「いや、だって弱そうだったし」
「弱くない!!」
即ツッコミ。ごもっともだ。
「……なあ」
ふと、空を見上げる。
「この世界、確率おかしくない?」
「は?」
「スライムがSSRみたいな扱いでさ」
さっきまでのガチャ画面が頭をよぎる。あの理不尽な確率と、この状況。
「俺、引いた覚えないんだけど」
「何を言っている!?」
兵士の悲鳴が響く。
だがその中で、俺は一つの結論に辿り着いていた。
「……ああ、なるほど」
小さく呟く。
そもそも――
俺はついさっきまで、日本でガチャ爆死して死んだだけの普通の人間だ。名前は佐藤悠斗。どこにでもいる平凡な社会人だったはずなのに、気づけばこんな意味不明な世界に放り込まれている。
「この世界――」
風が吹き、草が揺れる。
「ガチャ壊れてるわ」
***
その日、王国は震えた。
突如現れた謎の男。災厄級スライムを一撃で消し飛ばした存在。名もなき青年。
後に“常識崩壊の化身”と呼ばれる男は――
「……いやマジでクソゲーだろこれ」
ただ一人、そう呟いていた。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!
この世界、かなり常識がズレているので、主人公がどんどんやらかしていきます。(笑)
少しでも面白いと思っていただけたら、ブクマやいいねで応援してもらえると嬉しいです!
次回、さらに状況が悪化(?)します。」




