第65話
「いいよ。わかった」
輪廻は言った。
輪廻は今日は全部の予定を林檎に任せるつもりでいた。林檎がもう帰るね、というまで、ずっと、ずっと、林檎と一緒にいるつもりだった。
輪廻は一応、駅前のコンビニで買っておいた透明のビニール傘をさして、二人でその傘の下で相合傘をして、(たくさんの人がいる)大きな駅まで二人は歩いて戻った。
電車の移動の間、輪廻は林檎の言った私たちの間にある力のことについて、考えていた。
それは惹かれあう力。
重力? って言うか、引力?
そう。それそれ。似た者同士は引き合うってやつ。
輪廻の頭の中で、輪廻の言葉に、輪廻と同じ制服姿の林檎が答えた。
重力。
月の重力。それは地球の六分の一。
そんな話を、昨日の夜、林檎と一緒に入ったファミリーレストランでした覚えがあった。たしか、レストランの大きなテレビの中で、宇宙船が月に行った、というニュースがやっていたからだったと思う。
月。
地球の外側にある惑星。(衛星、なのかな?)
どうしてそんなところに行きたいって人類は思うのだろう? それが輪廻にはすごく不思議だった。
宇宙船は月にきちんと着陸をしていた。
打ち上げは成功して、地球の重たい重力の中を宇宙船はきちんと脱出して、月までちゃんと飛んで行った。
それは本当にすごいことだと思った。
……私の宇宙船はどうなのだろう?
と輪廻は思った。
私の宇宙船は、ちゃんと宇宙を飛んでいるのだろうか? 私はどこまで飛べるのだろうか? (そもそも、発射に失敗して、離陸することも、空を飛ぶこともできないのだろうか?)
……林檎の宇宙船はどうだろう?
高校に行っていない林檎の宇宙船は、どこかで、中学校の(つまり義務教育の)ところで、止まってしまった、ということなのだろうか?
「輪廻。ついたよ」
林檎の言葉にはっとして、輪廻は宇宙旅行から地球に無事に帰還した。
「ほら。早くいこ」
にっこりと笑って林檎は言う。
「……うん。いこう」
同じようににっこりと笑って、輪廻は言う。
二人は電車から降りる。
二人の手は、今もしっかりと結ばれている。




