第66話
駅を出ると、二人はまた相合傘をして、大きなビルの中にある水族館に向かった。
雨が降ってきたためか、水族館は人が少なくて結構空いていた。
水族館の中で海や水の中にいる生物たちを観察しながら、輪廻は、もしこのあとで、林檎はどうするか悩んだら、いろんなお店によって買い物をしようと林檎に提案するつもりだった。
それから、美味しいご飯を食べて、ゲームセンターか、(ぬいぐるみとったり二人で写真を撮ったり)カラオケ屋さんにいくものいいな、(林檎の歌う声を聞いてみたかった)と思ったりした。
雨はとても弱くなった。
水族館の屋外エリアの売店のところでソフトクリームを買って、食べながら、二人はそんな空模様の人の少ない水族館の風景を見ていた。
「人ってね、ある日、急に帰る場所がなくなってさ、暗い夜の中で迷子になってしまうことがあるんだよ」と急にそんな(哲学的? な)ことを林檎が言った。
「昨日の林檎みたいに?」
輪廻は言った。
「そう。昨日の、……本当は昨日よりももう少し前からの、私みたいに」と林檎は言った。
「三枝輪廻さん。今日は本当にありがとうございました」
林檎はそう言って輪廻に頭を下げた。
輪廻はそんな林檎を見て、驚いた。林檎がこのまま、ここでお別れをしましょう、とでも言い出すのかと思ったからだ。
「そんな、別にいいよ。お礼なんて。私も『すごく楽しかった』んだからさ」と輪廻は言った。
そう言ってから、輪廻は、あ、そうか。私はやっぱり、林檎といると楽しいんだ。林檎といるとちゃんと笑えるんだ。とそんなことを一人、思った。
それから林檎は、今日の二人の制服デートのコースが、(全部というわけではないのだけど)昔、林檎が家族みんなでお出かけをした、二木家の家族の楽しい思い出がたくさん詰まっている場所であることを、その場で輪廻に教えてくれた。
その話を聞いて、輪廻は「家族の思い出がある林檎が羨ましい」と言葉にして、寂しそうな顔で、林檎に言った。
「あんなに立派なお家がある輪廻はすごいよ。正直なところ、羨ましい」とそんな輪廻に林檎は言った。
それから二人は、お互いの顔を見て、笑いあった。
(そして、輪廻はすごく安心した。どうやら、林檎が輪廻にありがとうと言ったのは、この場所でさよならをするつもりだったからではないようだった)
「次はどうする?」
水族館を出たところで輪廻は言った。
「お腹すいた」
林檎は言った。
「よし。じゃあ、なにか美味しいものでも食べに行こう!!」とはしゃいだ声で輪廻は言った。(それはすごく珍しいことだった)
「おー」と林檎は言った。
それから二人は輪廻の家があるところの駅まで電車に乗って移動して、その駅の近くにある焼肉屋さんで、お肉を食べた。そのあまりにも美味しいお肉を食べて、林檎は輪廻の前で、「美味しい! なにこれ!」と言って、泣きながら、感動した。(比喩ではなくて、本当に林檎はちょっとだけ泣いていた)




