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無能な僕と嫌われ者の少女 (仮)  作者: 小雪
第1章.転入編
9/11

7話.保健室

 僕は気づけば吹雪の中、一人静かに平原を歩いていた。

 ここはどこだ?

 僕はここで何をしようとしていたんだ?

 思い出せることは神々の運命(ラグナロク)を放ったところ。

 そこまでしか思い出せない……

 僕の神々の運命(ラグナロク)で世界が終わっちゃったか?

 まぁ、人間がいないということは女性もいない。

 それはとても平和なことで喜ばしいことだ。

 だが…だとしたら……

喜菜香きなこ…きなこ……どこにいるんだ!」

 仮に本当に世界が終わってしまったのなら、僕はこの能力で喜菜香きなこを殺してしまったことになる。

 そんな…そんなことって……

「嘘だよな……だれか………嘘だと言ってくれよ!」

 僕の口から獣のように鋭い絶叫が噴き出す。

 その瞬間、僕の視界が白く染まり一つの部屋の中に変わる。

 ここは…どこだ……

「ここは保健室だよ」

 保健室…じゃあ僕は死んだのか………

 僕の隣には保健室の女性の先生がいた。

 顔はとてもニコニコしていて優しそう……だが、この人危ない。

 こ、この人はきょ、巨乳だ!襲われる!早く逃げるんだ!と僕の本能が告げている。

「確か坂本広輝さかもとひろきくんだったよね。君がしたことは覚えてる?」

「僕は集団を相手に神々の運命(ラグナロク)を放ちましたね」

 僕は起き上がりながら軽く言う。

 僕は相手(保健室の先生)

「ええ、その通り。その後は?」

「その後ですか?」

「ええ、その後」

「気絶ですか?」

 保健室の先生はため息を一つすると僕に言った。

「やはり意識がないようね……」

 やはり、とはどういうことだ?

「やはりってどういうことですか?」

「あなたの固有技能ユニークスキル神々の運命(ラグナロク)固有技能ユニークスキルの中で破格の威力を持っていることは知っているよね」

 ああ、それは検査後に聞いた。

 あまりに強力過ぎるため、代償がある可能性があるから乱発は政府から禁止された。

「魔力残量に関係なく、その人の()()()()を対価として発動する。君以外の能力でも時に固有技能ユニークスキルによっては能力者自身の身を滅ぼす」

「それで先生、やはりとはどういうことなんですか?」

 先生は紙にメモを取り終わると静かに言った。

「君は授業中に神々の運命(ラグナロク)を放った後、篠山ささやまくんの狙撃によって心臓を貫かれたんだよ」

 あ、やっぱりそれで死んだのか……

 まぁ、異端者の末路には素晴らしいだろう。

「まぁ、能力者でも一般人でも人間であれば心臓を破壊されれば死んでしまう」

 それは現実でも小説でも同じこと。

 それが人間という生命においての当たり前のことだ。

 それで死なないのはただの化物だ。

「だけど君は死ななかった」

「えっ……僕死ななかったんですか?」

 マジかー

 ついに僕は人間という概念から離脱してしまったようだ。

 これで僕も化物の仲間入り…したくねぇ……

「そ、それでどうなったんですか?」

神々の運命(ラグナロク)は君の心臓が破壊された時に停止して自然消滅した。だが君は活動停止しなかったらしいよ」

 僕ヤバイじゃん。

 もう人間の領域を超えるほどの力を手にしてしまったということか!

「君はその後、自身の武装を顕現させて、敵を滅多斬りにして都市エリアで血の海を作ったらしいよ。その姿とオーラは狂気と殺気に満ち溢れていてなんらしいよ」

 そんなことないだろ〜

 だって僕はまだ武装を顕現出来ないし、狂気と殺気に満ち溢れるほどストレスも溜まってないと思うし……

 これは保健室の先生の作り話だろう。

 きっとそうだろう。

「先生はご冗談がお上手ですね」

「いや、実際に君は女子を辱めたり男子を斬り殺したりしてたからね」

「いやいや〜そんなこと僕しませんよ〜」

「けどこれが現実なんだよ坂本さかもとくん」

 保健室の先生が真面目そうな顔をして言う。

「いやいやいや、一応僕は女性恐怖症なんですよ!そんな女子を辱めたりしませんよ」

「あら、女性恐怖症だったんだ……じゃあ私は結構怖い?」

「ええ……かなり……」

 特に巨乳が……

「まぁ、信じなさい。君は実際に都市一つを血の海にしたんだから」

「信じたくねぇ……」

 だって僕は魔獣から人を救いたいのに都市一つを丸々血の海に変えちゃダメでしょ。

「まぁ、とりあえず今日は帰りのホームルームに出て大人しく寮に帰りなさい。安静にしてね」

「はい」

「絶対に、安静ね」

「は、はい…」

「何が起きても、安静ね」

「わかりました」

 こ、この先生……念を押し過ぎでしょ。

 そんな僕が体育会系に見えるかね。

 よし、これで部活勧誘に誘われることもないけど誘われた時の口実が出来た。

 これで部屋で小説が読めるぞ〜

「それじゃあ僕はこれで失礼します」

 僕は保健室の出入り口の方に向かって歩く。

「あ、そういえば廊下でずっと誰かを待っている女の子がいたよ。君の彼女?」

「先生、あくまで僕は女性恐怖症なんですよ。そんな彼女がいるわけないじゃないですか」

「そう、けど花束を持ってずっと待ってたけど……確かタツナミソウを主に使った花束でとても綺麗だったよ」

 タツナミソウって何だ?

 植物だろうけどなんでそんなあまり聞かない品種の花を持っている女の子が廊下でずっと待ってるんだよ。

「ちなみにタツナミソウの花言葉は私の命を捧げます、だよ。たまにこの花を使って告白する人がいるんだよ。うちの学校よく生えてるから」

「そ、そうですか……」

 だから彼女なのか聞かれたのか?

 というか私の命を捧げますって重過ぎだろ!

 いつの時代だよ……

 まぁその相手が僕のはずがあるわけないよね。

 僕は保健室の扉を開く。

広輝ひろきくん!」

 保健室の扉の奥には花束を持った星野ほしのさんがいた。

 ま、まさか……

 いやそんなことがあるわけない。

 人間に愛想を振りまかない僕が好まれることなんて……

「ほ、星野ほしのさん……なんで保健室に来たんですか?」

「え、えっとね。広輝ひろきくんが心配で帰りのホームルームが終わったから来てみたんだけど…大丈夫?」

 星野ほしのさんは少し…照れながら言う。

 なぜ照れてる?

「大丈夫です。それより星野ほしのさんは大丈夫ですか?」

「え、何が?」

「えっと…身体です。あの時、思いっきり投げちゃったので何処か打ってないか心配でした」

「あ、そんなこともあったね〜」

 そんなこと?

 なに……星野ほしのさんの性格なら………

「そうですよ、坂本さかもとくんが私のこと投げるから怪我しちゃったじゃないですか!」

 って言ってきそうなんだけど言ってこない……

星野ほしのさん」

「どうかしたの、広輝ひろきくん?」

「頭……打ちましたか?」

「ん?頭がどうかしたの?」

星野ほしのさん、さっきの授業で頭を強く打ちましたか?」

「打ってないよ。私は今、健康そのものだよ!」

 これは重症だ。

星野ほしのさん、保健室行きましょう」

「うん、ここ保健室だよ。広輝ひろきくんこそ頭強く打っちゃった?」

 星野ほしのさんはどうしてしまったのだろうか?

「とりあえず教室にカバンを取りに行って帰ろ!」

「は、はい……」

 星野ほしのさんが先方する。

 絶対何かがおかしい。

 星野ほしのさんの身体の大きさから仕草まであまり変化していないのに性格が大きく変貌している。

 もしかして保健室の先生が女の子を辱めたりとかって……意識のない時に星野ほしのさんを辱めて…………

 いやいや、まさかな。

 そんなことあるわけないだろう。

 だって僕は女性恐怖症。

 二次元か妹と同じくらいの女の子としか接せない男子高校生。

 そんな僕が同じクラスの女子高校生を辱める。

「ないな……」

「何がないの、広輝ひろきくん?」

 星野ほしのさんが僕の隣に再び歩きよってくる。

「いえ、その……」

 そういえば星野ほしのさんって僕のこと坂本さかもとくんって呼んでなかったっけ?

「それより星野ほしのさん」

「ん?」

「いつから僕のことを広輝ひろきくんって呼んでましたっけ?」

「え、だってさっき「我が冷徹なる王の名をその心に刻むがいい。我が名は広輝ひろき…氷王なり」って言ってたからてっきりそう呼んだ方がいいのかと………」

「それ誰が言ったの?」

広輝ひろきくん」

 うおーーーーー

 僕なんてこと言ってんの!

「ちょっと待って……それ誰に向かって言ったの?」

広輝ひろきくん討伐部隊の残党」

 うわーー明日から学校行けない。

 外にすら出れない。

 恥ずかしらすぎて人と顔すら合わせられないじゃん。

広輝ひろきくん!」

「な、何ですか?」

「わ、私は広輝ひろきくんがどんな人でも好きだからね!はい、お花」

 そういうと星野ほしのさんはタツミナソウの花束を僕に渡す。

 それは意味を理解して渡しているのか……

 いや、ピンポイントでこんな花選んでるからそうなのではないだろうか………

星野ほしのさん、その花のチョイスはどうやって選んだんですか?」

「このお花?綺麗でしょ!草むらにたくさん生えてたから摘んできたの!」

 花言葉があなたに命を捧げますだっけ?

 そんなものを摘んで渡すってどんなわけ……

星野ほしのさんは僕に命を捧げるんですか?」

「どういうこと?」

「その花の花言葉…あなたに命を捧げますっていう花言葉らしいですよ」

「へぇ〜そうなんだ。あ、命を捧げますで思い出したんだけどね!」

 命を捧げますでどんなことを思い出すんだよ!

広輝ひろきくん、もうチームメンバーは決まってる?」

 え、チームメンバーって何?

星野ほしのさん、チームメンバーって何のメンバーですか?‬」

 僕は隣を歩く星野ほしのさんに聞く。

広輝ひろきくん、また先生の話聞いてなかったんですか?‬帰りのホームルームで言ってたじゃないですか!」

「いや、まず僕は教室じゃなくて保健室にいましたから……」

「あ…そうだった。じゃあ最初から説明するよ」

 僕がいなかったら星野ほしのさんは何のために保健室に来たんだよ……

「お願いします」

「夏休み前の期末テストが終わった後に二週間まだ学校があるんだよ。その期間はテストは終了したけど魔導士としての技能を測るために対人戦の大会があるんだよ」

「全校生徒で?‬」

「うん、全校生徒で」

 え、マジか〜

 なんかめんどくさいな。

「それって二、三年生と戦闘することもあるの?‬」

「それはもちろん!相手は誰になるかわからないって言ってたよ」

 ということは一回戦目で二、三年生と戦闘になることもあるのか。

「それで大会は個人戦と団体戦の二つがあって、個人戦は一人で出場。団体戦は五人以下一グループで出場だって」

 あ、僕は団体戦に多分でないな。

 だってぼっちだもん。

 クラスでも生粋きっすいのぼっちだもん。

「そ、それでね。広輝ひろきくん…も、もし良かったら何だけどね」

「もし良かったら?」

 この台詞セリフは!

 小説的な展開ならチームメンバーに誘われるタイプの展開……

 だけど星野ほしのさんはクラスの女子の中でもかなりの人気があるっぽい。

 男子からも女子からも……

 星野ほしのさんの人気ならすぐにでも誘われて、星野ほしのさんはそれを快く了解するだろう。

「うん、もし良かったら私とチームメンバーにならない?」

 星野ほしのさんは顔を赤くしてもじもじしながら言う。

 その展開は少し予想できていたけど、なんでそんな顔を赤くして言う。

 なに、なんか僕したっけ?

「それは正気ですか、星野ほしのさん?僕と組んだら……」

「え、いたって正気だよ!」

 星野ほしのさんは正気であっても天然である。

 まぁ、その天然のところが星野ほしのさんのチャームポイントでもあるのだろう。

「というか星野ほしのさんなら誰かに誘われなかったんですか?」

「誘われたよ」

「じゃあ何で組まなかったんですか?」

「それは広輝ひろきくんと組みたいから!」

 そんなに僕と組みたい理由……戦力的にか?

 先の戦闘でもなんか僕すごいことしてたらしいし、その理由が大きいだろう。

 まぁ、確かに一般的に強い人と組んだ方が上位に勝ち残れるから妥当な判断だろう。

 だけどたかだか学校の大会でそんなに勝ちに行く必要はあるのだろうか?

「その組みたい理由は何ですか、星野ほしのさん?」

「理由?理由は広輝ひろき君の優しいところが好きだから」

 優しい………?

 僕のあの態度が優しい……

 どこに優しい要素があるのだろうか?

 やはり戦力を優先とした発言なのであろうか。

 けど星野ほしのさんはそんな人ではなさそうだ。

 なら一体どうしてそんな発言をしたのか?

星野ほしのさん、僕は星野ほしのさんが思っているほど優しくありませんよ」

「そんな事ないよ。広輝ひろきくんはすごく優しいと思うよ!」

 星野ほしのさんは真面目そうな顔をしていた。

 その顔はさっきまで天然の星野ほしのさんの顔とは少し違った。

 何か確信を持っているような顔だった。

 どうしよう……

 断るなら今ここですぐに断ることが、僕にとっても星野ほしのさんにも最良である。

 けど組んでもらえるなら組みたい。

 だが考えろ。

 常識的に女子は群がる存在。

 つまり星野ほしのさんが僕と組めば女子が入ってくる可能性がある。

 どうしよう?

 自分への害の少なさを優先するか、チームメイトを作るか……

 どうしたら良いんだよ!

広輝ひろきくん、教室に着いたよ。私と組んでもらえる?」

 ヤバイ……なんか考えてたら教室ついちゃったし。

 どうしよう……どうしたら良いんだ!

「と、とりあえずその件は保留……一晩考えさせて頂いても良いですか?」

「うん!じゃあ明日教えてね」

「はい……」

一晩考えることにしちゃったけど……

ど、どうしよう………

期末が終わったから投稿再スタート!

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