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第18話 魔王の親友

ストックが切れるぅぅぅう‼︎

我には1人だけ、心から親友と呼べる人間がいる。名を

クライ・ベルガンド。

彼の者、前世の記憶を持ち、優れた頭脳と武勇を有する、黒髪黒眼の男。

その知恵、一つ使えば病を癒し、二つ使えば技術を発展させる。時を飛ばす程賢く、さも当たり前の様に平凡。

その刀、一つ振るえば全てを斬り、二つ振るえば全てを断つ。見えぬ程速く、分からぬ程自然に。

もしヤツが本気になれば、街の一つや二つは平然と落とす。そう断言出来る程の力を持っている。

我とクライの馴れ初めは一風変わったものだった。落とした都市で捕虜とした、それが出会い。

別ヤツの力が欲しかった訳でも、その力を利用しようとした訳でもない。何しろ、初めてクライと会った時、ヤツは子供だったのだからな。

最初は「面白い餓鬼」程度にしか思わなんだ。

クライは崩壊した都市の中、勇敢にも我等の前に立ち塞がり、立ち向かうでも、逃げるでも無く、言葉を重ねた。

『前世の記憶を引き継いだままこの世界に生まれ落ちた』

本当に面白い餓鬼だった、流暢な言葉遣いで、恐れず、屈せず、淡々と話すその姿は到底子供とは思えぬ。

捕虜として連れて帰れば牢の中で体を鍛え、我には前世の出来事とやらを散々語って見せた。

足捌きの鍛錬では足裏の皮が剃り向けても止めることは無く、時には牢の床を血に染めて見せた。

前世の出来事は酷く現実的で、まるで本当に見てきたかの様な夢物語。

狂ってると思っておった。

頭のおかしい餓鬼だと思っておった。

しかし、それがそうでは無いと気づいたの何時頃からだっただろうか?

気づけばクライのいる牢へと足を向ける我がいた。

体を鍛える事で着いた傷を癒し、共に牢の中腰掛け、語り合う。時に雑談を、時に政治を、時に相談を。

きっと、その頃にはもう、友だったのだろう。少なくとも、友人のいなかった我にはそう思えた。

何度も逃がそうと思った。戦争の勝利を目前とした当時、捕虜などタダ飯食らい以外何者でも無い、このままではクライを殺さねばならぬ。それは嫌だった。

しかし、クライは逃げなかった。脱走には十分過ぎる力をその時点で持っていた筈なのにだ。檻を開け放とうとも、見張りの数を減らそうとも、我が見に行けば何時もそこにいる。

まるで楽しむかの様に笑い、そこに居る。

限界が来たのは我の方だったろう、友を檻に閉じ込めるなど我慢ならなかった。

そこで我が考えたのは人間との停戦、そして友好条約。

コレには様々な打算があった。流石にクライ1人の為に長年の戦争を終わらせるなど馬鹿げた事はせん。

圧倒的優位な今、この停戦を持ちかければ先ず断れんだろう。当然「敵意あり」とみなされる可能性もある訳だ、友好条約を断る事も出来ぬだろうな。

そうなればやりようは幾らでもある。再戦をチラつかせ、言う事を聞かせるようと、物資を送りつけ、恩を押し売ろうと、兎に角やりようはある。が、他にもある考えがあった。

それは、クライの様に我々と分かり合える者がいるのでは無いか?と言うものだ。

今まで多くの人間を殺して来た、我が生まれる前から繰り返されて来たこの戦争、疑問を持つ事も無かった。しかし”殺す”と言う行為をなんとも思わ無い訳では無かったのだ。そこにクライが後押しとなり、こんな事を思い付いたのだろう。それに気づいた時は自分も変わった物だと、笑いが込み上げた物だ。

しかし、友好条約などを結ぶのなら、侵略してしまう方が楽なのは事実。示談より奪う方が簡単なのだ。更に言えば亜人達も人間を恨んでいる、王とは言え、我一人の独断でそんな事を出来る筈もない。会議は荒れ、我が乱心したと言い出す者までいる始末。

困り果てた我は、我をここまで変えて見せたあの人間、クライを頼る事にした。


結論から言えば、叱られた。


自分の事くらい自分で考えろと。最終的に決断を下すのは自分なのだから人に左右されるなと。

初めての出来事だ、今までなんとか言いながらも答えをくれたヤツがそんな回答を寄越したのは。

だが、なんとも言い難いが、認められた様で妙に嬉しかったのを良く覚えている。

我人生の中で一番の難題、その解答欄を書き込むのは我だ。誰に左右されるものか、答えはもう決まっておる。クライは戦争がなくなる事は無いと言った、なら無くして見せよう。平和な世界を作って見せよう。それが、我の出した幼稚な夢物語の様な回答。そして絶対に成し遂げると決めた目標だ。

それからと言うもの、王宮にクライの部屋を用意し、共に暮らす事とした。

娘のディアナは直ぐに懐き、またクライも良く面倒を見てくれる。食事を共にし、妻のレインネルを混ぜての談笑。クライの武器を作ってやったり、娘の婚約者にしてやったり。楽しく、幸せな日々だった。

あの日までは。

全ては我が原因だったのだろう。反対を無視し、平和条約に乗り出したのが間違いだったのかも知れない。

将軍以下4名の反逆。

それは兆しでしか無かったが、確実となる物、避けようが無かった。

奴等にはラシュフォンド指折の軍師がついており、気づいた頃には反乱軍は殆ど完成し、戦火を今か今かと待っている。

いつもそうだ!

我は気づくのが遅すぎる!

だから

だから…

友人一人すら出来んのだ…

クライしかおらんかった。この反乱軍、我等が反感を受けずに消すには、将軍以下4名を暗殺するしかない。

腐っても武勇に長けた戦士、強いのは当たり前だ。ましてや今回は暗殺せねばならん、そんな事を可能と出来るのは、考えつく限りクライしかおらんかった。

平和な世界を作る?己が周りすら平和に出来ない馬鹿が笑わせる…

我は嘆く事しか出来ん。

後悔する事しか出来ん…

何が王か!

我は無力だ!

幾らクライが常軌を逸した訓練をしているからと言って、暗殺が成功する確実はゼロに等しい。何しろその4名は人間で言うSランク冒険者に匹敵する力を有しているのだぞ。

我は地位と友を天秤にかけ、投げ捨てたに過ぎん!

この外道は正に魔王だろう!

これ程自分の身を呪った事は無い、王家になど生まれて来なければ良かったとすら思った。

そんな魔王に、クライは言う。

『また会おう』

本人は何気なく言ったのかもしれん。だが、その言葉に、どれだけ救われた事か。

こんなどうしようもない魔王に、また会ってくれると言うのだ。そして笑い話をしようと言ってくれるのだ。最期かも知れないと言うのに、それをもたらした相手だと言うのに、それでも友でいてくれると言うのだ。もう泣くしかあるまい。

『また会おう』

そう約束してクライを送り出す。

翌日、将軍以下4名が死体となって発見された時は心の底から安堵が漏れた。

クライは無事イーシャ大陸へと渡り、今も手紙でのやり取りをしている。

いつかまた会うその日まで。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふぅ…」


我ことラーナー大陸亜人国家ラシュフォンド王国国王ヴァリエンテ・ラシュフォンドは最後に一文つけ加えた後、筆を置く。

したためたのは我が友へ送る手紙。

ふはは、後はコレに我からのプレゼント兼ドッキリをつければ完成だ。むふふふふ…クライのヤツ、驚くだろうなぁ?ふふ、ふふふ…楽しくなってきたぞ。驚く顔を拝めんのが残念だ。

はっはっはっ!

ラシュフォンド王、それは変な王様…コイツも当初はこんなキャラじゃなかったんどすえwww

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