第10話 怖〜いお姉さん
結局話が飛んでる気がする…
何時からだろう?それは私自身覚えていない。
気がつけば女の身で剣を取り、戦いに興じていたわ。私は戦うことが何よりも好きだったから。生と死の駆け引き、それが堪らなく興奮するの。
相手を斬れば快感が走り、逆に斬られれば心踊る。
”戦闘狂”と言う奴なのだろうね。
だから私は冒険者になった。コレはとてもいい仕事、相手が何であれ殺し合いで多額の資金を貰えるもの。私にとっては天職。
毎日毎日依頼を受けては魔物を、盗賊を、時には魔族だって斬った。
時には戦争に参加する事すらあったわ。
その為、冒険者ランクなんて言うどうでもいい物は直ぐに上がったわ。お陰で鬱陶しい軍への勧誘が始まってしまったけど、ちなみに勧誘は全て蹴ったわ、お堅い作法なんて嫌いだもの。
そんなことをしていると、いつの間にか「首斬り」何ていう二つ名も付いた。
だから私にとって停戦はあまり喜ばしくはなかったのよ、楽しみが一つ減ったんだもの、退屈になるわ。
魔族、亜人と死合う事もめっきりと無くなって、数年が過ぎる。
あぁ、暇ね。
高ランクの魔物など早々現れないし…やっぱり戦争が終わると暇。
魔族だろうが、亜人だろうが、私にとってはどうでもいいの。ただ殺し合いが出来ればそれでいい。
その事に関して人間は脆弱だわ。
魔の族などと亜人を罵る割には魔力も筋力も亜人より下。非常につまらない。
しかも私が相手にするとなるれば盗賊やゴロツキ、これが何処かの将軍や騎士長なら違うだろうけど、盗賊やゴロツキでは大した事はないし。
いっそ罪を犯して私を捉えに来た兵士でも斬ろうか?そうすればいずれ強い者とも戦える筈。だけだ普通に生活出来ないのはとても面倒、さて、どうしたものかなぁ…
そう考えていると、私の耳にある情報が入った。
亜人の冒険団がある。
と言う物だ、それは面白い非常に面白いわね。私はかなり興味を惹かれた。
だって今のイーシャ大陸で生き残った亜人となれば、そこそこ強者の筈だもの。もし彼等と戦えるなら、そう思って私はその冒険団がある港街、エインドへと向かった。
エインドに近づけば近づく程その冒険団の話は多くなる。するとこれまた面白い情報があった。
冒険団の団長は人間である。
本当に面白いわね、その人間はどうしてこのイーシャ大陸で亜人を庇おうと思ったのかしら?どうやって周りからの迫害を退けたのかしら?
なんにせよ只者ではない。
もしその人間と死合えるなら、それはとても楽しそう。
どうすれば死合えるかしら?
いや、まだ会っていないのだらか余り期待はしないでおきましょ。そうだ、もし強そうな人間なら、その冒険団に入ってチャンスを伺えばいいんだわ。
そうね、そうしましょう!
----------------
あれから一ヶ月で俺らフリー団は冒険団ランクDと異例のスピードで出世した。
冒険団ランクはAまでしか無いも同然だから、上から4番目だ。まだまだ有名どこの冒険団には敵わないが、アホな低ランク冒険者がちょっかい出してくる事は完全になくなったよ。
まぁ、娯楽施設も亜人はやらせて貰えないからな、依頼くらいしかやること無いんだわ。
皆んなも一ヶ月前に比べて大分ランクが上がった。嫌がらせが少なくなったのは、多分ギルマスのお陰だろう。
ダンキF→C
ツァイF→D
エティアG→D
大体みんな3は上がってるな。一番低い奴でもEはある、冒険者ってのはCありゃ強者、Eありゃ並だ。順調順調!
なんだけどコレはどう言う訳だろうか。
「え?今なんと?」
「私をこの冒険団に入れてはくれないだろうか?と言ったのよ」
引きつった顔の俺。
その前には微笑みを浮かべた絶世の美女。
そして間のテーブルにあるギルドカード。
ギルドカードがあると言う事はこの人が冒険者だと言うことだ、だが可笑しい。
先ず、この人は人間だ。
人間は亜人を毛嫌いしているから、普通こんなドキドキ♡亜人だらけの冒険団!になんて近づこうとすら思わない筈なんだが…この人は普通にここの食堂で飯食った後、団長(俺)探して開幕コレだ。
なんなん?
それともう一つ、机に置かれたギルドカードにはこう書かれている。
名前 リュシィ
ランク…
所で話は変わるけど〜、Sランクってなんなんだろうね?なんでAからSに行くん?意味分からんし、スーパー?スペシャル?まぁこの世界でもそんな意味不Sランクはあるんだけど、ここに入る人って大体がヤバイ人なんだよね。
ぶっちゃけCランクありゃ生活に困ることは先ずないし、Aなんてありゃ好き放題出来るくらいの収入は見込める。
そんなAより上のSランクにはどんな人が入るかって言うと。
うん、戦闘狂。
戦うのが楽しくて楽しくてしょうがない変態さんだ。
いや〜、そんな変態さんには会いたくないなぁ!あっはははは!
さて、ここでもう一度このお姉さんのギルドカードを見てみよう。
名前 リュシィ
ランク S
ハハッ、ワロス。
殺客かなぁ?亜人率いてる俺殺しに来たのかなぁ?もう笑うしかねぇ‼︎
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!どうしよう…
不意打ちならわからんけど、真正面からでイけるか?
否!無理であるッ‼︎
俺の技は対人戦用だけど、そんなに人と戦ってねぇし!魔物ばっかだし!この状態でSとかなんの拷問だよ!
とりあえずなんでこの冒険団に入りたいのか聞いてみよう。
「えっと…何故?」
「あら、理由が必要なの?だったら私はこの冒険団に入りたいから入るわ、それだけの理由よ」
いやぁぁぁあ‼︎完璧な理由つけられたぁぁぁああ‼︎会社の面接じゃねぇんだから「態度が悪いんでダメです」なんて言えねぇしぃぃぃ‼︎
ど、どうにか拒否る理由を考えなければ!
会議だ会議!
俺は近場にいるエティアと、フリー団最少年のリース君(狼人間14歳男)を掴み、自分の元へ引っ張ると身を寄せ合う用にして会議を開始する!
「ど・う・し・よ・う!」
するとまぁコイツらも近場にいたから聞いてたんだろう、何がどうしようなのか質問する事なく答えてくれた。
「どうしようと言われてもな、団長の好きにすればいいだろう」
冷たっ⁉︎エティアさん冷たいよ貴女⁉︎この人で無しッ‼︎あ、エルフだ。いやエルフも亜人だ、亜”人”だ!きっとツンデレなんだ‼︎何か打開策があるはず‼︎
「あの〜…」
そんな事を考えてるとリース君が何か発言しようとしている!何かね?発言を許可しよう。
「なんだ!なんかいい案でもあるのか⁉︎」
「いや、そうじゃないですけど」
「ないのかいッ!」
くそう!灰色の髪に灰色の耳、灰色の尻尾。整った顔で子供なんてショタコン受けしそうな姿しやがって!獣人でまさかの魔法使いなんだからいい案だしてよぉ〜(涙)
「あの人…【首切りリュシィ】ですよね?」
「何その物騒な名前?異名とか二つ名ってやつ?」
「はい、彼女が受けた依頼は相手が何に関わらず首ちょんぱにされているそうです」
「ゑ?マァジデェ?」
いやそんな手刀で首スパッとやる動作いらないから、説明だけで十分だからぁぁ‼︎俺の恐怖心を煽らないでぇぇえ‼︎
お、俺も首ちょんぱにされてまうんかッ⁉︎
「ど・う・し・よ・う!」
「まぁ落ち着くんだ団長殿、貴方があの人を殺客ではないかと怯えているのはよ〜く分かる。しかしだな、まだアレが敵だとは限らんだろう、大体にして殺しに来た相手がこうも普通に現れるか?」
「いや現れてるから可笑しいんだろ⁉︎あの人、人間だぞ⁉︎亜人大嫌いな筈だぞ⁉︎」
「いや、ブルーさんも人間じゃないですか…」
「俺は変わり者なの‼︎」
「自分で言ってしまうのか…兎にも角にも、こうして来てしまった以上、正式な理由がなければ入団を拒否する事は出来んぞ」
冒険団は初心冒険者育成の為にギルドの提案が元に作られた物だ、つまり冒険団は新人を受け入れ、育てないといけない。
んでもって新人以外で冒険団に入る奴なんていないし、入る者を拒まない的なアレで「入団希望を無下に断ってはならない」ってなってる。
じゃぁなんで亜人は冒険団に入らなかったかと言うと、イジメにあうのが目に見えてたからとしか言いようがない。と言うかこのシステムを教えてもらっていなかっただろう。
なんて今はどうでもいい。
詰んだ。
俺は白目をむいている。
「まぁなんだ。団長殿、今まで世話になった」
「おい馬鹿ヤメロ。縁起でもない」
「いやでも、まだ希望はありますよ、だってあのお姉さんは冒険者ランクSなんでしょう?ブルーさんを殺そうにも、そんな強い人をいきなり雇いますかねぇ?と言うより、雇えますかねぇ?Sランクがお金で釣れるとは思いませんし」
なぬっ⁉︎そうか、そうだな!あのお姉さんはSランク、Sランクは変人の戦闘狂しかいないし、国でも早々うごかせない。そんなドSが入団希望なんて言うのは可笑しいもんな!あっはっはっ!な〜んだどうってことないじゃないかぁ…
じゃぁなんで入団希望してんだよッ‼︎‼︎
国だかギルドが護衛にくれたってか?それならそうと言うだろうし。何より今更遅ぇ。
マジで分からんぞ!
一体…なんのつもりなんだッ‼︎
「アレじゃないですか?こう…わざと自分を追い込む的な…すみません伝達力がなくて、上手く言えません…」
「自分を追い込む?あ〜…。アレか、苦境に自ら入りそれを楽しむと」
「あ、はい。それです」
「なるほど、確かに迫害を受けている我々亜人の元へ飛び込めば周りからもいい目では見られんだろうな」
「つまり彼女は戦い大好き戦闘狂のドSじゃなくて、苦しいの大好きドMの方だと」
「ええ〜、そこまでは言ってませんけど、まぁそんな感じかと」
確かにそうだ、戦闘狂って言っても2パターンある。
ボコるの大好きな戦闘狂とボコられるのが大好きな戦闘狂。
両方変態戦闘狂だけど、方や殺すの大好きな変態、方や死闘が好きで戦闘に興じる変態。
後者ならあの人が入団希望してきたのも分からん事もない。
うん。
そうだな。
これだと随分納得できる。
そうだ!
きっとそうだ!
うん大丈夫だ!
俺は2人を解放してリュシィさんに向き直る。
「話し合いはおわったの?」
「アッハイ終わりました」
「で?私はどうなるのかしら」
「うん、入団OKですよ」
「あらそう、それは
…とっても嬉しいわぁ… 」
と物凄く凶暴な笑みを浮かべるリュシィさん。
俺は…選択を間違ったかもしれない。
冒険者のランクは”〜ランク”でも”ランク〜”でもいいようになってます。




