表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。  作者: 水鳥川倫理
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/37

第25話、宝石箱の海鮮丼、鉄の味の秋葉原。

観覧車を降りると、時刻は13時を回っていた。

「そろそろお腹が空いてきたので、ご飯食べに豊洲に行きましょうか!」

椎名の一言に、全員のお腹がグゥと鳴って賛同した。


「ああ! そろそろ行くか!」


再び京葉線に乗り、新木場駅へ。

そこから東京メトロ有楽町線に乗り換え、豊洲駅へ。

さらに「ゆりかもめ」に乗り換え、市場前駅で下車する。

移動時間はそれなりにあったが、車窓から見える湾岸エリアの景色が飽きさせなかった。


目当ての店は、市場直結の海鮮丼専門店だ。

少し並んだが、回転が早くすぐに席に通された。


「いらっしゃい! 何にする!?」

威勢のいい大将の声。


「「「「特選海鮮丼で!」」」」


迷いはなかった。全員、一番豪華なやつだ。

運ばれてきた丼は、宝石箱のようだった。

溢れんばかりのウニ、イクラ、マグロ、サーモン、エビ。


「うっひょー!」

「美しい……芸術品ね」

「……ん。……海、ありがとう」


無言で食べ始めた。

美味い。言葉が出ないほど美味い。

新鮮な魚介の甘みと、酢飯のバランスが絶妙だ。


「おい、碧。そっちのホタテ、一個ちょうだい」

「やだよ。お前のイクラと交換ならいいぞ」

「交渉成立!」


俺と七瀬が交換していると、椎名が呆れながら自分のウニを俺の丼に乗せた。

「……仕方ないわね。私のウニ、少し分けてあげるわ」

「えっ、いいのか? 椎名、ウニ好きだろ?」

「今日は十分堪能したからいいのよ。それに……碧、最近痩せたんじゃない?」


「……碧。エビ、あげる」

美波も俺の丼に甘エビを乗せる。


「お前らなぁ……俺を太らせる気か?」

文句を言いながらも、俺はその優しさを噛み締めて食べた。


会計時、大将が俺たちを見て豪快に笑った。

「あんた達、仲いいね! 兄妹か?」

「いや、幼馴染です」

「へぇー! 幼馴染でそんなに揃って仲が良いのは珍しいな。大切にするんだよー!」


「……はい!」

俺は力強く頷いて、店を出た。

背後で3人が少し照れくさそうにしているのが気配でわかった。


満腹になった俺たちは、最後の目的地、秋葉原へと向かった。

ゆりかもめで新橋へ出て、そこから山手線で秋葉原へ。

電気街口を出た瞬間、空気感が変わる。

電子音、メイドカフェの呼び込み、アニメソング。

混沌と熱気が入り混じる街。


「さあ、ここからが本番よ……」

椎名の目が、スナイパーのように鋭くなった。

「うん……! 七瀬、負けない!」

「……美波も、本気出す」


「いや、何と戦うんだよ」


俺たちは大手PCパーツショップのゲーミングデバイスコーナーへ向かった。

煌びやかなRGBライティングが光る店内。

無数のマウス、キーボード、ヘッドセットが展示されている。


俺は特に欲しいものはなかったが、3人の目の色が違った。


七瀬はマウスコーナーで、ひたすらマウスを握っては振り、握っては振りを繰り返している。

「うーん、この軽さはいいけど、クリック感がちょっと重いかな……。あ、こっちはセンサーの位置が……」

独り言が完全にガチ勢のそれだ。


椎名はキーボードコーナーで、展示機を高速でタイピングしていた。

「……銀軸の反応速度、悪くないわね。でも、打鍵音は静音赤軸の方が配信に乗りにくいかしら……。アクチュエーションポイントを変更できるこのモデルは……」

専門用語が止まらない。


美波はモニターコーナーで、残像低減機能のデモ映像を食い入るように見つめていた。

「……240Hzじゃ、もう足りない。……360Hz……黒挿入……。敵の輪郭、もっとくっきり見たい」

動体視力の限界に挑もうとしている。


30分経っても、彼女たちは迷い続けていた。

買おうか、どうしようか。値段を見ては唸り、スペックを見ては悩み。


俺は痺れを切らして、3人の間に割って入った。


「おい、お前ら」


3人がビクリとして振り返る。


「本当に欲しいものなら、今買うべきだよ! 今度いつ来れるかわからないから! 迷ってる時間が勿体無いぞ。良いデバイスは、良いプレイを生む。そうだろ?」


俺の言葉は、ただの幼馴染のアドバイスとして響いたはずだ。

だが、彼女たちの中の「ストリーマー魂」には、火に油を注ぐ結果となった。


「……そうね。碧の言う通りだわ。妥協は、敗北を生む」

「うん! 七瀬、強くなりたい! 買う!」

「……ん。……未来への、投資」


「よし、行ってこい!」


俺は店の外で待つことにした。

秋葉原の雑踏を眺めながら、缶コーヒーを飲む。

あいつら、何を買うんだろうな。ま、精々マウス一つか二つだろう。


15分後。

自動ドアが開き、3人が出てきた。


「お待たせー!」


俺は吹き出しそうになった。


「……えっ?」


七瀬は、巨大な紙袋を両手に抱えていた。中にはハイエンドマウスの箱が3つ、マウスパッド、そしてマイクアーム。 椎名は、キーボードの箱を2つ、オーディオインターフェース、さらに高級ヘッドセット。 美波に至っては、360Hzモニターの巨大な箱を抱え、背中にはリュックいっぱいのケーブル類を詰め込んでいた。


総額、いくらだこれ。数十万いってるんじゃないか?


「……お前ら、随分ほしいものがたくさんあったんだね……」


俺が少し引き気味で言うと、椎名は眼鏡をクイッと押し上げ(今日はコンタクトだが)、キリッと言い放った。


「仕方ないわ。これも将来の投資として買ったんだから、後悔はない!」

「そ、そうか。……ならいいけど」


彼女たちの荷物があまりにも重そうだったので、俺も半分ほど持つことになった。

美波のモニターの箱が一番重かった。


「……これで、勝てる」

美波がボソッと呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。

一体何に勝つつもりなんだ、こいつらは。


「アニメイトとか、行く?」

俺が尋ねると、3人は首を横に振った。


「ううん! 今日はもう満足!」

「ええ、早く帰って……その、設置設定をしなければなりませんから」

「……ん。早く、試したい」


アニメグッズよりも、新しいデバイスへの渇望が勝ったようだ。

俺たちは、戦利品を抱えた兵士のように、秋葉原駅へと向かった。

面白かったら作品フォロー、⭐︎⭐︎⭐︎評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ