湖
昨日の夜も更新しています
今日は朝食後にフレデリックと一緒に湖に出かけることになっている。
楽しみすぎてあまり良く眠れず、思ったより早く起きてしまった。
部屋の窓を開けると、爽やかな空気がルシャーナを包み込むように入ってきた。
朝食が運ばれてくるまでベッドでゴロゴロしようかなとも思ったが、ドレスに着替えて髪を整える事にした。
ドレスは昨夜から何を着ようかずっと迷っていたが、水色のシフォンドレスに決めた。
レース等はあまり使用していなが、袖口とスカートがふんわりしていて、とても可愛いドレスだ。
髪飾りは水色のドレスに合うものを選んだ。
(フレデリック様も可愛いって思ってくれるかしら)
ドレスに着替えて、鏡の前にくるりと回って念入りに全身をチェックする。
少しでもフレデリックに良く見られたくて一生懸命になってしまう。
ルシャーナは鏡に映る自分の顔をみて、恋してる顔だと思った。
(私は幸せ者だわ、素敵な婚約者に出会えて)
ドレスのリボンの絞りを調整したり、髪飾りの位置を変えたりしている内に時間が過ぎていて、気が付いたら公爵家のメイドが朝食を運んできた。
ドレスを汚さないよう慎重に朝食を食べ、フレデリックが迎えに来るのを待った。
暫くするとドアがノックされ、ドアの向こうからフレデリックの声がした。
「ルシャーナ、おはよう。出発しようか。」
「はいっ。フレデリック様。」
フレデリックのお迎えを待ち焦がれていたルシャーナはドアに駆け寄った。
湖までは別荘の裏手から出て歩いても行けるが、少し遠いので馬車で行くことになった。
湖に到着するとボートの準備が出来ていて、フレデリックと一緒にボートに乗り込んだ。
執事が漕ぐボートに揺られながら、湖面を見ると太陽の光で輝いていてとても綺麗だった。
ボートの向かい側に座るフレデリックを見ると、にこやかな笑顔をルシャーナに向けていた。
「湖面がキラキラしていて綺麗だね。ルシャーナ。」
「えぇ、フレデリック様。本当に綺麗ですね。」
フレデリックの笑顔を見ながら、自分と同じことを思っていた事に嬉しくなった。
笑顔をずっと見ていたいのに胸がドキドキして落ち着かないので、視線をフレデリックから湖に移し小さく深呼吸をする。
「ルシャーナ。」
フレデリックに名前を呼ばれ顔を上げると、ルシャーナに手を差し伸べて囁いた。
執事に聞こえないように配慮しているのだろうか。
「ルシャーナ、こちらへおいで。」
「フレデリック様…。」
フレデリックを見ていると、先ほどより胸が激しく鼓動する。
昨日からずっと心臓を酷使していて、大丈夫なのかと心配になる。
震える手でフレデリックの手を取り、ボートが揺れないように注意しながら静かに立ち上がった。
「ルシャーナ、気を付けて。危ないよ。」
「はい。」
ルシャーナが一歩踏み出した瞬間、急にボートがぐらりと大きく揺れた。
不安定になった体勢を整える事も出来ず、身体がふわっと浮いた感覚になったと思ったら空が見えた。
気が付くとルシャーナは湖に落ちていた。
「フ…フレデリック…様。た、助けて。」
足が付かない深さのため、溺れないよう必死にもがきながら助けを求めるが、フレデリックはルシャーナから顔を逸らした。
顔を逸らした瞬間、フレデリックがニヤリと笑った気がした。
読んでくださってありがとうございます。
コメント、評価、ブックマーク、ありがとうございます。
とても嬉しく思っています。感謝です。
これからも頑張ります。