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キルユー キルミー!  作者: 星崎咲也
殺し屋と7人の同業者
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不死鳥とメイドの話 その2

 これは私がまだ普通のメイドだった頃の話。

 私の勤め先はとある政治家の屋敷だった。

 一流の家といえば、一流とはいえない。

 屋敷はそこまで大きくないし、他のメイドも居らず、私一人で一家の世話をしていたのである。

 しかし、そこで働く事に対し不満はなかった。

 給料は悪くなかったし、困難な内容もなく、程よく遣り甲斐を感じられるものだった。

 何より、国会議員である旦那様を始め家族の方々は私にとても優しく接してくれた。

 どうしても、住み込みの現場が多い仕事上、ご主人様との関係は非常に大事だ。

 奥様は他の政治家の奥様たちとよく女子会を行っているが、私に彼女たちの愚痴を溢すことも多く、一番コミュニケーションをとっていただろう。

 坊っちゃまがた、長男の方は旦那様の跡を継ぐと考えているので、随分と勉強を熱心にしていた。

 あまり話すこともなかったけど、私にはその背中が格好良く見えた。

 勿論、ひかるくんほどじゃないけどね。

 次男の方はどうやら遊びまくっているらしく、家にいない方が多かったけど、旦那様は放任主義らしく、いつかは真面目に働くだろうとあまり気にしてはいなかった。

 根はいい子だと思う(多分)ので、旦那様の思う通りいつかはしっかり働いてご両親を安心させて欲しいと願っていた。

 まあ、これといって特徴的なことはあまりない、普通の家庭だった。

 私は上流階級の人間では勿論なかったし、そんなご主人様方を羨ましく思ったことはあったが、こんないい職場で働けることはそうそうなかったしなにも文句は無かった。

 ご主人様方の為になら何でもできる、とさえもあった。


 ただ、少しだけ不安があった。

 旦那様に少し良からぬ噂が聞こえたのだ。

 他の国会議員、それも国務大臣ととある企業との賄賂に一枚噛んでいる、という話だった。

 仲介人として二人を結びつけたという噂だが、私にはよくわからない。

 政治の世界の話については全くの門外漢と言っていいほど考えたことがなかった。

 一般常識としての知識は勿論メイドとして持ってはいるが、それ以上に深く関わったことはなかった。

 家では他の政治家の方々や企業の方など様々なお客様が訪問したが、その人達について深く詮索するのはプライバシーや仕事上の秘密などに関わる為タブーとなっていた。

 なので、それが真実か嘘かは分からないが、もしご主人様が何か危険に晒されるとしたら私は身を挺して守るつもりだった。

 この家のメイドとして、そんな覚悟はあった。

 あるはずだった。


 それは、ある日の夜だった。

 夕食の片付けをして、洗濯をかけようとしていた時だった。

 珍しく、次男の坊っちゃまが早い時間に帰ってきた。

 玄関に向かい、靴を脱いだ坊っちゃまに挨拶をする。

「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」

「ただいま、親父は居る?」

 気怠げそうに彼は答えながら、旦那様の所在について問う。

「旦那様はお帰りになっております、今はご自身の部屋で仕事をしているかと」

「そうか、ちょっと話があるんだ」

 ついに、働く気になったのだろうか。

「そうですか、もし宜しければ私もついて行ってもよろしいですか?」

 坊っちゃまの成長の瞬間を見たくてついそう言ってしまった。

「ああ、別に構わないよ」

「ありがとうございます」

 そういうと、坊っちゃまはそのままの足で旦那様の部屋へと向かった。

「親父?ちょっといい?」

 ドアを3回ノックして尋ねるが、返事はない。

 もう一度どノックして聞いてみるも全く声は聞こえない。

「どうしたんだろう」

「珍しいですね、何処か出かけているのでしょうか?」

 お手洗いかも知れません、と言いながら私はドアノブに手をかけた。

 するとドアはなんの抵抗もなしに開いてしまった。

 普段なら少し席を外す時でさえも旦那様は鍵をかけるはずだと、私は不審に思った。

「すみません、失礼します」

 私は少し躊躇ったのち、部屋に入っていった。

 そこで私は見てしまった。


 机に突っ伏して血を流している旦那様の姿を。

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