殺し屋と詐欺師と暴力団 その4
「そうだ、まだ名乗っていなかったな。俺の名は凪利昌人だ、この鎌で敵を切り裂くから『薙ぎの凪利』と呼ばれているのさ」
凪利と名乗った男は自分の獲物である柴刈鎌のような刃物を取り出して軽く振り回した。
図体が大きくガサツそうな割には血の跡がキレイに消されている。
「そうですか、それはとても自信があるようで」
「伊達にそう何年もこの闇に入っていないんでな、貴様みたいな餓鬼に殺されることはねぇだろうよ」
「ほう、そうですか」
感心した振りをして首を振る。
「俺が自己紹介してやったんだからさぁ、お前も名乗れよ。少しは名が知れてるんだろ?」
「そうですね、私は…」
俺が答えようとした瞬間、
「さっさとやれよ!早く俺を殺しに来た不届き者をぶっ潰してしまえ!」
詐欺師の親玉が苛立って叫んだ。
そりゃまあ、雇った殺し屋が敵とずっと話していたら怒るわな。
「はーいはい、分かりましたよ」
それじゃあやりますか、と凪利は呟き鎌を構えた。
「では始めましょう」
俺は拳銃をしまい、右ポケットからナイフを取り出した。
彼もそこそこ手入れをしているって言ったが、俺の獲物は本物の三日月のように輝いていた。
基本的に一般人を殺す場合は使わないため、あまり酷く汚れることも無い。
俺はナイフを前に突き出した。
悠々と避ける彼は振り向きざま、鎌をこっちに下ろしてくる。
その動きは見え見えでやはり簡単に避けることが出来た。
しかし、下ろしてきたその鎌を使って彼は追撃してくる。
右へ左へ。
ブンブンと空を切る音が伝わる。
「その武器はこの狭い部屋の中では不利なんじゃないですか?」
俺はわざと相手を挑発してみた。
「うるせぇ、これが俺のスタイルなんだ」
当たらないのに苛立って、動きも大振りになってきた。
それでも俺は、壁の方にどんどん追い詰められていく。
彼が右へ鎌を振った瞬間。
俺は再び拳銃を取り出し、刹那と呼べるような速さで引き金を引く。
撃ち出した弾は宙を逸れたが、凪利を止まらせるには充分だった。
不意をついてナイフを一直線に突き出す。
彼の顔を見ると.
不敵な笑みが表れていた。
何か恐ろしいものを感じ1歩退く。
その時だった。
凪利は左手に持った獲物をこっちに突き出す。
手に持っていたのは俺より一回り小さい拳銃だった。
「あばよ」
彼は一言呟き、引き金を引いた。
俺の顔を向けて弾は出る。
やばい。
…と思ったのも一瞬だった。
直ぐに反応して頭を下げる。
驚愕する彼の顔をすっと見ながら俺は床に彼の体を倒した。
馬乗りになり、相手の首にナイフを構える。
既に彼の両手からは鎌も銃も離れていた。
「…誰ですか、鎌使いと言った人は」
「敵を信じるのがおかしいんだよ普通」
ニヒルに笑いながら彼は呟いた。
「そうだ、自己紹介をすっかり忘れていましたね」
俺はナイフを上げて凪利を見下ろして言った。
「私はライト、私の仕事をする顔を見て生きている人が居ないことから『死神』なんて呼ばれているのです」
冥土の土産にでもしてください。
彼の頚動脈にナイフを入れる。
動かなくなったのを返り血を浴びながら確認して降りた。
さよなら、殺し屋さん。




