旅立ち
じいさん達は、すぐに冬が来るんだからしばらく村に留まればどうかと言ってくれたが、結局パルゴの村には3日だけ滞在してすぐに東へ出発した。
紛争地帯へ行って傭兵を雇うかは未定だが、奴隷二人には出来るだけ早く奴隷紋を入れて、裏切れない状態にしておきたいからだ。でないと毎晩、妙なまねをしないように縄で縛る必要がある。
それから、ニルさんからの頼まれ事の件もある。どうやらニルさんは、じいさん二人よりも常識があるらしく、このあいだパルゴの村に来た騎士を、問答無用で追い返したのはやりすぎたと思っているらしい。
騎士は下級とはいえ貴族であり、負けたまま引き下がる訳がない。村人に負けたなどという噂が立てば貴族社会での信用を失うのは間違いなく、噂をもみ消すために必ず報復に来る。しかも今度は準備を整えて、人数を増やしてくるはずだ。
とはいえ、ニルさんはすぐに攻めては来ないだろうとも言っていた。たかが5人の兵士しか連れていなかったのだから、やはりその程度の貴族なのだ。親戚筋やらに応援を頼むにしても時間はかかるし、数を揃えるなら村人を動員するだろうが、麦の収穫が終わらなければそれもできない。
まともな軍勢が来るとすれば、早くても来年の夏。それまでにパルゴの村でも、戦える人数と武器を揃えたいのだという。
そんな事情もあって、次の夏がくる頃には村に戻ることにしている。肝心の頼みごとだが、要は村に相応しい訳あり者を見つけたら、防衛戦力として連れてくるようにってことだな。
俺達5人はパルゴの村を出て南東へ半日進み、東西を結ぶ街道に到着した。
まずはここで一稼ぎだ。