人形のランクアップと今のステータス
おかしい、僕の人形はこんなに良い見た目では無かったはずだ。
木で出来たような骨組みに白色の粘土みたいな物をくっつけただけの見ためだったはずだ。
だからきっとこの人形は僕のじゃ無いはず。
きっと誰かと僕を勘違いしてこう言っているだけだ。
「あ、あの人形が持ってる短剣って俺がナオにあげた短剣じゃん」
「人形、良く一人で帰って来れたな!」
あ、本当だ。
あの短剣は人形に持たせたやつじゃん。
ということはあの人形は僕の人形か。
いや、あんなの無くても初めから自分の人形だって気付いていたけどね。
「ハイ、ランクアップして強くなったので簡単でした」
「だから言葉も聞きやすくなったのか……でもどうやってランクアップしたんだ?」
「あのボスの魔石を食べたらランクアップしました」
ちゃっかり食べていたのか。
というか魔石を食べていたらランクアップ出来るのか。
僕も食べてみたいけど爆発物にしないと駄目なんだよな……小さくしないと呑み込めないし。
でも、食べ続ければ、いずれ魔王クラスの化け物になれるのか?
いや……食べ過ぎると腹を壊しそうだな。
魔王に聞いてみるか?
僕は魔王の方を見た。
そしたら魔王は人形の方を見て口をあんぐりと開けていた。
凄く間抜けな表情だった。
もしもスマホを持っていたら思わず写真を取ってしまいたくなるくらい間抜けな表情をしていた。
「どうしたんだ魔王? そんな馬鹿みたいな顔して」
「いやいや……だって魔石だぞ……あのエネルギーの塊で出来ている魔石だぞ」
「食ったらやばいのか?」
「やばいなんてものじゃねーよ……食べたら体の中をエネルギーがぐるぐる暴れまくる。確かに大丈夫だったら普通に強くなるが、下手したら死ぬ物なんだよ。しかも死ぬ可能性が尋常じゃないくらい高い。九十九パーセント以上ある」
そんなにやばい物だったのか、魔石って。
だから僕が食べたら爆発したのか……。(※違う)
いやでも、そしたらおかしくないか?
「人形は魔石を食べまくってたぞ、五十個以上は確実に食ってた」
「な、何だって! そんな馬鹿な! じゃあ、この人形は少なくても五十回以上は強くなったってことなのか!?」
せっかくの魔王の美貌がかなり歪んでいた。
気を緩めたら吹き出してしまいそうな顔だ。
まさかここまで取り乱すとは……人形って凄い存在だったのか。
「どうなんだろう? 人形、今まで何回強くなったと思う?」
「一回目ですね。今までのランクがCでした。そして、一定量のエネルギーを得たのでランクBにランクアップしました。ちなみに人形は一定量のエネルギーを得る度にランクアップします。もともと命なんて存在しないので死ぬ可能性もありません」
「へー、そうなんだ。聞いてた、魔王?」
魔王の顔を見たら凄い顔になってた。
歪み過ぎて何に対してどう思っているのか全く分からない顔だ。
人形が何か凄い事を言ってた気がするが、魔王の顔が面白すぎて忘れた気がする。
これは、ツッコミを入れた方がいいのか?
「魔王、大丈夫? ――おい魔王!?」
「はっ! スマン。あまりにもこの人形のシステムが凄すぎて放心していた」
「ふーん、そんなに凄いのか?」
「ああ、凄いなんてものじゃない。このランクアップのシステムだったら直ぐに最高ランクまで行く事が出来るだろう。魔石を食べてるだけでランクアップするんだしな」
自分の事では無いって事は分かっているが、何か嬉しいな。
自分の人形が褒められるって事は。
この人形も今から出て来る人形も大事に育てていこう。
そう言えば僕もランクアップ出来るのか?
というか、まずあるのか?
ランクアップ出来たら楽に強くなれると思うんだけどな。
「なあ、魔王。モンスターにもランクって存在するのか?」
「ああ、もちろん。ランクもランクアップも存在する。ただ普通のモンスターだったら、ランクアップするのには条件が必要で面倒なんだけどな。まあ、その近道で名前を授ける方法があるんだけどな」
「へー……あれ、僕って魔王から名前貰ったよな、ランクアップしたっけ」
「してないな。って言うかさせて無い。初めから強大な力があったら使いこなせ無いだろ。こういうのはある程度強くなってからするもんなんだよ」
「そうなんだ」
そんな!
そしたら楽して強くなれないじゃん。
努力しないといけないのか?
努力って嫌いなんだよな。
ランクアップさせてくれる条件さえ簡単なものを提示してくれれば……。
「ち、ちなみにだ、魔王。どうすればランクアップさせてくれるんだ?」
「この練習用ダンジョンをクリアしたらな」
「本当?」
「ああ」
よっしゃあー! きたぞこれ!
あんな雑な作りだし楽にクリア出来るだろこんなダンジョン。
練習用だし、死んでも大丈夫だし、一日で五階層まで行けるレベルのダンジョンだし絶対楽に終わる!
「ちなみにこのダンジョン百階層まであるからな」
「へー、ソウナンダ……」
死ねーー!!
何で練習用なのに百階層まであるんだよ!
このダンジョン作った奴馬鹿なのか?
いや、絶対馬鹿だ。断言できる。
いくら魔王の友達だとしても会う機会があったら絶対一発以上は殴る。
「あと、百階層はボスだけなんだが、そのボスが俺の友達の魔王だ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、まあ安心しろ。あいつもお前を相手に本気は出さないだろ」
「良かったー」
絶対ぼこす。
良かった、会えそうな機会があって。
フフン、会ったら覚えとけよ。
絶対に完膚なきまでに叩きのめすから。
「そう言えばナオ」
「どうした?」
「レベルどこまで上がった?」
「ああ、しばらく確認して無かったな」
「確認しとけよ……普通は異世界から来た勇者っていうのは強くなっていくのが嬉しくて、何回もステータスを確認するもんなんだけどな」
「そういうものなのか?」
「そういうもんだ」
知らないな。
僕は普通の人とは違う。
いわゆる中二病という病気を患っているんだ。(※少し違う)
まあ、いいやステータスっと。
――――――――――
称号 よう、久し振りだな! ちゃんと見ようぜ! New
加護 ストロの加護
モンスター名 道化師
Lv;16 New
Hp;270/270 New
Mp;550/550 New
体力;180 New
筋力;100 New
物耐;100 New
敏捷;260 New
魔力;240 New
魔耐;240 New
スキル;翻訳 モンスター化解除 逃げ足 回避 爆破半減 New
思考誘導 プレゼントボックス サプライズボックス
ワープボックス びっくり箱 収納箱 爆発物創造
――――――――――
称号……これもう完璧に語りかけて来てんじゃん。
きっと寂しかったんだろうな。
知った事じゃないけどな。
こっちは称号が凄く毒舌だからステータスを開くのが嫌だったって言うのに。
まあいいや、スルーしておこう。
レベルが思ったより上がってないな。
やっぱり低層じゃ、そんなに上がらないのか。
まあとりあえず、ステータスは一通り大幅に上がったな。
Mpなんか五百代までいったのか、早いな。
でもそれとは逆に筋力と物耐が本当に低いな……これじゃあ、モンスターに近づくのは危ないだろうし、百階層にいるという魔王を殴ってもそんなに痛くなさそうだな。その時までにちゃんと筋力が上がればいいが……。
あ、何か爆破耐性から爆破半減にグレードアップしているな。
何で上がってんだ?
考えられる要素としては、何回も爆発に巻き込まれた事しか……。
何回も反復していると影響が出るのか?
「なあ、魔王。何回も殴ったりしていると、筋力が上がったりするのか?」
「殴る……? まあ確かに上がるな。だから、何回も魔法を使うと魔力が上がったり、Mpが上がったり、それに関係するスキルが強くなったりする」
「へー」
良い事聞いたな。
つまり出来るだけモンスターを殴る、蹴るで倒していけば、それに伴って筋力が上がっていくのか。
百階層にいくまでには筋力を五百超えはさせときたいな。
「で、結局、何レべまで上がったんだ?」
「ああ、16だよ」
「結構上がったな……で、一番良かったのは?」
「Mpだな。550まで上がってた」
「550! かなり凄いなそれは!」
「まあ、その代わりかどうかは分からないけど、筋力と物耐が共に100しかない」
「ああ、なるほどねー。でも、やっぱ550は凄いぞ」
へー、凄いのか……。
やっぱり、ステータスが凄かったら人に驚かれるのか。
嬉しいな、まあほら、僕って中二病だから。(※かなり違う)
あ、そうだ。
魔王ってあれ知ってるのか?
魔王だし少しは知っているよな……。
聞いてみるか。
「なあ、魔王。称号って何なの?」
「そう言えば言って無かったな。悪口だったり会話口調だったら特に何も無いが、普通だったら、ステータスにかなり良い効果が付く」
「変わったシステムだな。でも、良い効果か……どうやったら普通になってくれるんだ」
「かなり、難しいぞ。何せステータスには自我があるからな。まず、頻繁に開かないと機嫌を悪くするし、人を傷つけるのが好きだから、だいたい悪口だ」
「えっ、自我あるの?」
「ある」
ハイ?
ってまたこのパターンか、この世界って不思議な事が多すぎないか?
マジで何なの?
ファンタジーなのか?
ちなみに主人公が魔石を食べて(?)爆発したのは主人公が馬鹿だからです。
あと中二病の意味は調べたら書いてあります。




