第16話
不意に降り注ぐ言葉に思わず一同は息を飲み、反射的に一同は声の主へと視線をずらす。
そこには金髪の如何にも軽そうな男と、そんな男に連れられきょとんと首を傾げる幼い男の子の姿。
「……は? 誰だよオマエ? …あ、ってかちびソルマじゃねーか、オマエこんな所にいたのかよ」
「……っ、え、うん…」
あれ、と首を傾げながら予想外の再会に目を丸くするユトナ。
そんな彼女の視線の先には、金髪の男にしがみつくような形でおずおずと顔を上げる幼いソルマ。
…と、そんなソルマの頭をポンポン、と優しく撫でると、
「…お? 何だお前ら、ソルの知り合いか?」
「んー…知り合いっつーか何つーか…ってか、オマエこそ誰だよ? なぁおい、キーゼの知り合いか?」
ユトナはどう説明するべきか考えあぐねているようで──というより考えるのが面倒臭くなったようでさっさと思考を放棄した、という言うべきか──頭をわしわし掻きながら目の前の金髪の男──シグニスを見遣る。
次いで傍らにいるキーゼへと視線をずらしたのだが、キーゼと言えば彼女と視線が合うなり一瞬身体を硬直させた。
「え、おれ? いやいや、別に?」
どことなくぎくしゃくした態度で手をぶんぶん振りながら否定するキーゼ。
だが、ユトナは彼の違和感にまるで気づいておらず、それ以上追及はしなかった。
「オレたちゃ聖女サマと馬鹿王子に頼まれてこの街の異変の真相を追ってんだよ。そしたら此処に辿り着いたってワケだ」
「へぇ~、聖女ちゃんと面識あんのか。なら怪しいヤツじゃねぇって事だな。…あぁ、オレも怪しいヤツじゃねぇぜ? 何せテンプルナイトだし……っと、お喋りは此処までにして」
ユトナの説明で漸く合点がいったようで、2人に対して密かに警戒心を解けば、シグニスの眼差しは宝玉を持った人物へと向けられた。
「オレが用事あんのはそっちのオジサンだよ。まぁオレ的には女の子に用がある方が嬉しいんだけどねぇ。…アンタ、悪い事は言わねぇ…その宝玉寄越しな。もうアンタにゃ用のねぇもんだ」
シグニスの確信めいた双眸に引き込まれるように、シグニスへと眼差しを向ける球体を手にした人物。
当然シグニスの言葉を只の戯言と判断したようで、まるで聞く耳を持たない。
「何を知った風な口を…! 渡す訳が無いだろう!」
「…まぁ、そうだろうな。あくまでオレの推測だけど…首謀はそっち。アンタはあくまで協力者って所か? んでもって、協力の見返りは…その宝玉に宿された力を少し使わせろ、って所だと踏んでるんだが…間違ってるか?」
淡々と推測を口に追い詰めていくシグニスに対し、その人物は焦燥感を孕んだ眼差しでただただシグニスを睨み付けるばかり。
そんな視線を知ってか知らずか、シグニスはひたすら言葉を紡ぎ続ける。
「さしずめアンタは実行犯って所か? アンタが街の人達から生命エネルギーを奪い取ったんだろ?」
「……! オマエがやったのかよ!? 何のために!?」
2人の会話を黙って聞いているばかりのユトナであったが、雲行きが怪しくなってきたのに気づいて思わず会話に乱入し怒鳴り込む。
「ああそうだ、それがどうした」
「ふざけんな! オマエの身勝手な行動のせいでどれだけの人間が迷惑被ったと思ってんだ!」
「…そんなもの、私の息子の苦労に比べれば…」
「は? 何の話…」
「息子さん…ルアンの事か? 成程、そういう事かよ。こんなきな臭い事に手を貸してたのは、息子さんの病気を治す為か」
「そうだ」
「何だよそれ…じゃあ、自分の息子の為なら他の人達は犠牲にしてもいいってのかよ!?」
「それの何が悪い? 息子は生まれながらに辛い思いばかり強いられて…普通の人のように生きる事さえままならない。何故、ルアンばかりこんな目に遭わなければならないのだ!? あいつには普通の人と同じような“普通”を手に入れられなかった…それなら普通の人から“普通”を奪って何が悪い!? のうのうと生きている者達から少しずつ生命エネルギーを奪っただけだ! それに、奪ったと言っても殺す訳ではない。少しの間だけ、体調を崩すくらいルアンを助ける為なら取るに足らない事であろう」
今まで淡々と努めて感情を押し殺して言葉を発していた宝玉を持つ人物──ルアンの父親であったが、ユトナの非難が彼の琴線に触れたのか、カッと目を見開き過剰なまでにムキになって反論する。




