第四話
何処までも続く青い海、それはやがて広い広い空と出会い、その縁にはただ白い雲があるだけだ。
太陽がさんさんと振り注ぎ、俺の肌を気持ちよく焼く。
「いや〜、平和だねぇ。」
俺は気持ちよくカクテルをあおった。
クライブ王国から獣族連合王国まではざっと2日ほどの船旅でたどり着ける。
昨日は少し海が荒れたが今日は反対によく晴れた。
俺たちの船旅ももう終盤だ。
昨日の船の揺れでダウンしたフィビーは船室から出てこなくなってしまったが、到着まで後数時間もあれば回復するだろう。
そんなことを考えていると不意に船の先の方が騒がしくなっていることに気づいた。
何やらクルーたちが集まって海面を見下ろし何か喋っている。
乗客たちも遠巻きにそれを見ていた。
「何だ、何だ?」
「獣人の小舟がこの船につけてるらしい。」
「王国には立ち入れないとか、なんとか聞こえたぞ?」
「ふざけんじゃねえぞ!
俺は母さんに金借りてここまで商売に来たってのに!」
(獣王国に入れない?
事前情報の中にそんなものはなかった。
つまりここ数日の間に国境を閉じるような大事が起こったと?)
「こんな事してる場合じゃねぇな。」
俺は船室へ急いだ。
今俺たちが調べようとしている振魔石の件と、何ら関係がないとしてもこれは興味深い事態だ。
今すぐあいつに知らせてやらねば。
「フィビー、もう起きたか!」
「ふぇ、きゅ、急に開けないでよ!」
勢いよく扉を空けた。
そこには真っ白な肌をさらした幼なじみが立っている。
頬には対照的に鮮烈何赤みが差していた。
勢いよく扉を閉めた。
「す、すまん!
まさか着替え中とは!」
「船酔いで、汗かいちゃったから。
私も、二人用の船室で、不用意だった。
だから許す。」
少し上ずってはいたがいつもの調子の声だった。
「そっか。」
船室の扉を背におれは胸を撫で下ろす。
小さい頃は風呂なんかで互いの裸体を見ることもあったが、もうお互い17である。
(思いの外…いや、もうよそう。)
あられもない考えを、頭を振って消し飛ばす。
やがて入室を許可する声が聞こえた。
「で、どうしたの?
そんなに慌てて。」
部屋に入るとすぐに聞かれた。
「ああ、乗客たちが騒いでててな。
どうやら獣人の小舟がこの船に近づいてきて、今獣王国に入れないと言っているらしいんだ。」
「つまり、この数日の間に何かが起こった、ってことなのかな。」
「そうだろうな。
話が早くて助かる。
で、どうするよ?」
「振魔石の調査があるから、諦めるなんてありえない。
だから、これを使う。」
俺の問いかけに、フィビーは不敵に笑って何やら丸いものを取り出した。
吸い込み口のようなものがついた黒い玉である。
「それは?」
「これは、私が発明した、水中呼吸魔道具のスイチューコキュー君。
魔力が続く限り水中で呼吸ができる。
これを使って獣王国の沿岸まで近づいて入国しよう。」
素晴らしい魔道具だ。
《《ある欠点》》に目を瞑れば。
「それはすごい道具だな、でもお前さ
泳げないじゃん。」
「あっ。」
船室の床にスイチューコキュー君が落ちる音が何処か大きく響いた。
フィビーは暫くフリーズしていたがやがて戻ってくる。
「私に名案がある!」
今度は元気な声が大きく響いた。




