表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/336

覗く片鱗(五十三)

 事務所の二階では友香里と早苗が遊んでいる。

 と言っても、まだ『見学』の域を脱してはいないだろう。

 それでもお目付け役の社長と、雄大がいないのを良いことに好き放題だ。コーラ片手に歩き回るなんて、保護者には見せられない。


「お行儀が悪い」

 早速怒られたが、安田の言うことなんて聞かない二人だ。

 確かに安田だけがソファーに座り、お行儀良くコーラを嗜んでおられる。しかし、一番大きなゲップをしたではないか。


『ゲフゥゥ。ア゛ァァッ。オォォッ』

 まただ。顔もだらしなく大あくび。すっかりリラックスしている。

 友香里と早苗は顔を見合わせて笑う。そして肩を竦める。


「お下品」「ダメねぇ」「煩いなぁ」

 安田は飲み掛けの缶をテーブルに置いて、再びあくびだ。

 友香里も早苗も『女の子』には違いないが、妹みたいなもの。

 家でも似たようなのが『ピーチク』『パーチク』騒いでいる。怒ったって聞いちゃいないし、子供なんてそんなもんだ。

 標的にさえならなければ、『好きにしておれ』な心境である。


「これがね、キーボードって言うんだよ」「へー」

 置きっぱなしになっていた楽器の前に、二人は移動していた。

 安田はちらっと見て『壊すなよ』と思うだけ。まぁ、友香里が面倒を見ているのだから平気だろう。


 友香里が電気を入れると、上のほうにあるランプがチカチカと光り、直ぐに消えた。特に意味はなく、楽器の『演出』だろう。

 それでも『早苗の興味を引く』には十分効果的だったようで、不思議そうに眺めている。その後は再び友香里の方を見た。


「色んな音が出るんだよ。これトランペット」「へー」

 安田は眠くなっていた。片目でチラっと友香里を見る。

 キーボードについて『良く知っている風』であるが、持ち主である先輩から、先日同じように教わっていたのを思い出す。

 安田は再びあくびをして両目を閉じた。


「トランペットって知ってる?」「知ってる」

 低い声。余り興味は無さそう。いや『疑っている』だろうか。

 友香里はドレミファソと弾いて見せる。すると一音づつ『ファン』と、見た目とは明らかに異なる音が響く。 

 見本として『トランペット吹きの休日』でも、さっくりと弾ければ良かったのだろうか。

 残念。友香里が弾けるのは『猫踏んじゃった』だけである。


「変な音ぉ」「そう?」

 早苗の『素直な感想』によると、一曲弾く必要性は感じられない。

 友香里も笑った。そこに『トランペット』と書いてあるから説明したに過ぎない。オルガンの見た目から『違う音』が出るから楽しいだけである。とりあえず別のスイッチを押す。


「これバイオリン」「知ってるぅ」「お、詳しいねぇ」

 何を弾こうか迷ったが、やっぱり弾いたのはドレミファソだ。

 今度も早苗は冷めた目。あぁもしかして『G線上のアリア』なら、人差し指一本でも弾けたのかもしれない。友香里は負けを悟った。

 やはり見た目がオルガンなので『指を五本使った』のが敗因か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ