第50話:バトルロイヤル幼馴染ズ
久々に五人が一堂に会せばまずはこれ、元々が要塞拠点だった"黒耀城"は軍事施設が城内にそのまま併設されている。
西部方面騎士団の中でも特に精強を誇るノワール侯爵直属の精鋭たちが武稽古を行う練武場もいくつもあり、その内の一つでは今小さな五つの影が飛んだり跳ねたりと忙しない。
「そこですわ!」
「ボクの炎は抜けないよ!」
ヴァネッサが手にしているのは後に短銃姉妹と名付けられる二丁の短銃、その前身モデル。
子供の手にはまだまだ少し大きいけれど、器用に時折くるんくるんとガンプレイで回しつつ、≪魔弾≫で単装銃にあるまじき[連射]を実現している。
対するはレオナード、まるで女の子のようにくりくりとした朱の瞳に情熱を燃やし≪龍炎≫が[炎壁]に渦を巻いてヴァネッサの≪魔弾≫を呑み込んでいる、抜けないとはいえ開幕からずっとヴァネッサの[連射]に固められて反撃ができない。
幸い近接系のクオンリィとジョシュアは互いにマッチアップして鋭い技の応酬を繰り返している、ジョシュアがアチャホチャうるさい。
「にっひっひー、足元がお留守ー」
≪魔弾≫への対処に集中していたレオナードの後方から、まるで地面を這う様な低さで跳び込み、その勢いのままスパンとレオナードの足を払う小さな影はノエル、足払いで鳴った足音で≪伽藍洞の足音≫の[空間転移]を開いて逃げるトリッキーさは反撃を許さない。
「くそ!卑怯だぞ!」
「よろしくてよノエル、よくできました」
足を払われ尻餅を着いてしまい、制御が乱れると≪龍炎≫を抜いてくる≪魔弾≫も出てくる。
当然ヴァネッサも手加減はしているので当たった所でちょっと痛い程度のぱすっぱすっと気の抜けた衝撃がレオナードの腕や体に当たるけれど、被弾し続けるわけにはいかない、レオナードはごろごろり身を転がして避ける。
そこへ。
「ホゥーーァチャアッ!!」
「――ッ!」
チャンスとクオンリィから離れたジョシュアが飛び込んで棍を突き込んで来る、レオナードは武稽古前に大人の西部方面軍騎士団の防性魔術士さんにかけてもらった[障壁]が割られて敗退する事を覚悟しながら、防御姿勢をとってぎゅっと目を閉じた。
けれども、ジョシュアの棍は落ちてこない。
「漁夫の利ですか?ジョッシュ?」
目を開けると眼帯をした稽古袴姿が見えた、踏み込んだ体勢で静かに納刀している、流石に稽古で本身は佩かず同じサイズの竹光だけれども彼女はそれでも十分『斬れる』。
突き込もうとしたところを横から斬りつけられたジョシュアは慌ててガードしたものの体勢を崩して倒れそうになるのを、器用に片手を床に突いて反動で飛びのいて見せた、咄嗟の防御が間に合わなければ敗退していただろう。
「た、たすかったよクオちゃ――」
「――疾ッ!」
「うあああ!?」
お礼を言って立ち上がろうとしたレオナードをクオンリィの立ち下段"抜刀術"が襲うけれど、膝立ちだったおかげで再び尻餅を着く事でレオナードは回避することができた、まさに間一髪、ちりと朱の前髪が数本散った。
「クオるん!そこは蹴るか踏みつけですわ!」
両手同時発射の≪魔弾≫は空中で絡み合い一つとなる、その行き先は納刀を終えたクオンリィのおでこ、すぱこーん!とクリーンヒットでぐあと仰け反るクオンリィの全身が一瞬発光してからぱーんと光が散って[障壁]が割れた。
バトルロイヤル幼馴染ズ本日最初の敗退者だ。
「大技!待ってたよー!」
「え!?ちょ、ノエるんいつの間に!狙うならレオナちゃんですわ!起きちゃう!」
いつの間にやら背後に回った忍装束が手にした忍者刀と苦無の二刀でドレスの背を素早く斬りつければ、ヴァネッサの全身も一瞬発光してからぱーんと光が散って[障壁]が割れた、二人目の敗退者である。
「もー!わたくしを狙ってはいけないルールも知りませんの!」
怪我は無いかと駆け寄る回復系防性魔術士にはひらと片手を振って無事を伝え、敗退したヴァネッサはぷりぷり怒りながら壁際に並ぶ騎士団員たちの列の中、一足先に敗退して隣に立つ師匠にお小言貰ったクオンリィの傍へ向かう。
「でもヴァニィちゃん様私達がサポートに徹して狙わなくても怒りますよね?」
「公平に競ってこその武稽古ですわ!」
「姫様も説教だ、ノエルちゃんが残ってる段階で両手撃ちなんかやったら、そりゃあ狙われますぜ?うちのを仕留めるなら片手で十分だったはずだ」
「むぅ……かっこいいからですわ、反省はしてましてよ?」
唇を尖らせるヴァネッサの頭をぽんぽんと"抜刀伯"が優しく叩く
そうこうしているうちに、起き上がったレオナードが挟み撃ちで飛び込んできたノエルとジョシュアを二人まとめて全方位火柱[龍巻]で迎撃して二つの[障壁]が割れた、相変わらずえぐい対空、裏回りもめくりも見てから落とせる。
「だからレオナちゃんを起き攻めで固めろって言いましたのに」
「二人してバッタみたいに跳ぶから悪いんですよ?間合い詰めて差し合いで余裕ですよ?」
万が一に備えていた回復系防性魔術士達がダウンした二人に駆け寄る。
一番消耗しているのは開幕からずっとヴァネッサに撃たれ続け、魔力をゴリゴリ削られた勝者のレオナード。
≪龍炎≫を解いてその場にへたり込んで肩で息をしている。
五人が同時に集まったならやっぱりこれだ、なんだかんだ言ってヴァネッサも手加減無しで稽古は真剣に行う、文句は言うけれどそれは口だけの事。
ヴァネッサがぺふっと指鳴りを鳴らせば侍女たちが椅子やらテーブルやらを運び込んで来る、ティータイムだ。
「あちち、レオ、強くなったね」
道着の煤を払いながらジョシュアも戻ってくる、ノエルはへたり込んだレオナードの頭をぽこんぽこんと何度も叩いているけれど別に追い打ちを仕掛けているわけではない。
[魔力譲渡]をしているのだけれどレオナードの容量が大きくて一回では足らないのだ。
たま~にズルい対空にやられた腹いせに普通に叩いてるけどそれはご愛敬。
「ジョッシュはうるさくなりましたね?」
「はは、手数でクオンを翻弄できたかな?クオンの一閃は痛いからね」
「いえ、声が」
「声だけ!?」
「ふふっ、でも華麗な繋ぎ技でしたわ、流石ジョッシュですの。お二人もいらっしゃいな、お茶にしましょう!」
休憩を挟んだらもう一戦、もう二戦、ランダムチーム戦に個人戦、幼馴染ズは久しぶりの全員集合を思い切り楽しむのだった。
格闘ゲームのノリで




